派遣社員として働こうと思っている人のなかには、「派遣社員も社会保険に加入できるの?」「夫の扶養を外れることになるの?」と疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
一方で、「給料が減るから社会保険に加入したくない!」と考えている人も多いことでしょう。
そこで今回は、社会保険とは何なのか、加入するにはどんな条件があるのかを詳しく紹介し、社会保険の大切さを伝えていきたいと思います。
目次
派遣社員は社会保険に加入できる?
社会保険は、私たちが安全に暮らしていく上で大切な社会制度のひとつです。
仕事をしている人であれば、派遣社員であっても一定の条件を満たすと誰でも社会保険に加入できます。
保険料は毎月の給料から引かれ、事業主が負担してくれるものもあります。
社会保険の種類とそれぞれの役割
社会保険には5つの種類があり、それぞれ内容が異なります
各種保険ごとの特徴を見ていきましょう。
健康保険
社会保険のなかでも、健康保険は非常に身近な存在です。
病気やケガをしたときに、クリニックや病院で提示する保険証は、健康保険に加入することでもらえます。
病院の診療などでかかった治療費は基本的に3割負担となっており、安い金額で平等な医療が受けられるのは、健康保険という制度のおかげです。
病気などの他にも、出産時に一時金としてもらえる42万円や、高額な医療費がかかった際の払い戻しが受けられます。
保険料
派遣社員と派遣元で折半して払うことになります。
料金は給与や保険料率によって変動します。
平成31年に、派遣社員を対象とした「人材派遣健康保険組合」が解散したことにより、現在は都道府県ごとに設置されている全国健康保険協会に加入する仕組みになっています。
加入の条件
基本的に無期雇用の正社員が対象となりますが、派遣社員やパートでも、以下の条件に当てはまっていると社会保険の加入対象者となります。
- 1ヶ月間の所定労働日数が、正社員の3/4以上
- 1週間の所定労働時間が、正社員の3/4以上
- 2ヶ月以上の雇用が見込まれる
従業員が501人以上の事業所の場合は、以下の条件を満たせば保険加入対象者です。
- 月収8万8,000円以上
- 1年以上の雇用が見込まれる
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
ただし、どちらも学生は対象になりませんので注意しましょう。
厚生年金保険
老後の年金として、また障害や死亡により収入がなくなった場合に給付される保険です。
条件を満たしている派遣社員の場合は、65歳以降には老齢基礎年金に上乗せされ、厚生年金を受け取ることが可能です。
また加入者が障害をおって働けなくなった場合には、障害厚生年金という形で保険が受け取れます。
万が一、加入者が死亡した場合には、残された家族が遺族厚生年金を受け取れる「将来を守ってくれる保険」となっています。
保険料
派遣社員と派遣元で折半して払うことになります。保険料は給与によって異なるため、気になる方は以下の算出方法で計算してみましょう。
標準報酬月額(原則4月~6月の報酬の平均額)×保険料率(現在は18.3%)×50%
例えば平均給与が25万円の場合には、25万×18.3%×50%=自己負担22,875円
となります。
加入の条件
70歳未満の従業員が対象となり、健康保険と同じ条件になっています。
雇用保険
雇用保険とは、失業したときや仕事ができないときの生活を支えてくれる保険です。
雇用保険は政府が扱う強制保険で、従業員が1人以上いる事業主は、加入が義務付けられています。
育児休業で会社を休んでいる間に支払われる「育児休業給付金」や、介護による「介護休業給付金」も、雇用保険に該当します。
保険料
派遣社員と派遣元が負担することになりますが、加入者(派遣社員)の方が、負担が軽くなるよう設定されています。
加入の条件
他の社会保険よりも条件が低く、雇用形態に関係なく、以下に該当する人は加入が必須です。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 1ヶ月以上の雇用が見込まれる
ただし学生と65歳以上の従業員は、加入できないルールになっています。
労働者災害補償保険
労働者災害補償保険とは、いわゆる「労災保険」のことで、仕事中や通勤中の病気やケガに対応した保険です。
治療費や生活補償の役目があり、雇用形態に関係なく、すべての労働者が保険給付対象となります。
保険料
他の社会保険とは異なり、全額を事業主(派遣元)が負担します。
加入の条件
こちらも他の社会保険と異なり、労働時間や期間に関係なく、すべての労働者が対象となっています。
介護保険
介護が必要な人に対し、介護費用を給付してくれる保険です。
2000年に創設されたばかりの新しい保険で、介護による離職率の増加を受け、国が介護をする家族支援のために作りました。
保険料
派遣社員と派遣元の折半になり、健康保険と一緒に徴収されることになります。
加入の条件
40歳以上で、健康保険に加入している人は全員が対象となります。
派遣社員が社会保険に加入する3つのメリット
ここまでで、社会保険が私たちの生活において重要な保険であることが理解できたと思います。
次に、社会保険に加入するメリットを紹介していきます。
保険料の一部を派遣会社が負担してくれる
国民健康保険や国民年金は、基本的に全額が加入者負担です。
しかし社会保険に加入することで、半分を事業主(派遣元)が支払ってくれるため、加入者は少ない負担ですみます。
将来もらえる年金が増える
前述したとおり、厚生年金保険に加入することで、65歳を過ぎたときに多くの年金が支払われることになります。
現在、年金制度は3段階になっており、国民の義務である「国民年金」、会社員が加入できる「厚生年金」、企業や個人で加入できる「企業年金(DC)・iDeCo」があります。
厚生労働省が発表している「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の平均額は5万5,000円、厚生年金は14万7,000円と大きく開きがあります。
人生100年時代と言われていますので、厚生年金は長い老後の生活を支えてくれる資金源になってくれるでしょう。
参考:厚生労働省(厚生年金保険・国民年金事業の概況)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000106808_1.html
国民健康保険よりも手厚い保障
社会保険には、病気やケガで会社を休んだ場合や、妊娠や出産で会社を休んでしまっても、手当金が支給される仕組みです。
また保険料に関しても、社会保険の方が割安になっており、会社員を退職した翌年の国民保険料は大きな負担となっています。
扶養家族が増えた場合でも、社会保険料が増えることはありません。
ただし出産育児一時金に関しては、両者とも一律で42万円の給付が受け取れます。
夫(妻)の扶養内で働きたい人の社会保険はどうなる?
夫(妻)の扶養内で働きたいという人は、年収を106万円以下に抑える必要があります。
派遣社員の場合は、扶養内で働きたいことを伝えると、派遣会社がその条件にあった仕事を紹介してくれるはずです。
夫(妻)の社会保険に加入することで、社会保険の加入義務もなくなり、一定の収入であれば住民税の支払いも必要ありません。
「〇〇万円の壁」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、扶養内で働くコツは以下の通りです。
- 100万円の壁……住民税の納税が生じる
- 103万円の壁……所得税の納税が生じる
- 106万円の壁……社会保険への加入が必要となる
- 130万円の壁……社会保険料を支払う義務が生じる
- 201万円の壁……配偶者特別控除の適用外となる
以上を意識して、収入を調整しながら働くのがオススメです。
社会保険への加入・脱退手続きはどうする?
入社時の加入や、退職時の脱退手続きも、すべて派遣元(事業主)が行なってくれます。
しかし本人が用意しなくてはならない書類もありますので、退職する際は以下のものを受け取りましょう。
入社後の加入手続き
基本的に派遣元がすべて行なってくれます。
ただし、条件を満たしているのにも関わらず、社会保険加入の義務を放棄している会社もあるようですので、入社時には十分に注意しましょう。
これまで国民健康保険に加入していた場合のみ、ご自身での脱退手続きが必要です。
退職の際に派遣元から受け取るもの
- 年金手帳(会社で保管していた場合)
- 雇用保険被保険者証
退職してから働く予定がない人は、下記の書類も必要になります。
- 離職票
- 健康保険の資格損失証明書
退職の際に派遣元へ返却するもの
健康保険証
家族も派遣会社の社会保険に加入していた場合は、家族全員分の保険証が必要です。
保険証がない状態で病院を受診した場合、全額負担となり高額な請求が来ることになりますので、退職したばかりの人は気を付けてください。
まとめ
社会保険は一定の条件を満たせてさえいれば、派遣社員も加入することが可能です。
また加入や脱退の手続きも、基本的に派遣元が対応してくれるため、派遣社員が行う必要はありません。
ただし必要な書類の準備や、国民健康保険の脱退手続きは個人で行いましょう。
配偶者の扶養内で支出を抑えたい人は、派遣元に相談しながら派遣先を決める必要があります。
独身であれば、事故や病気で働けなくなったときの生活保障として、社会保険に加入する働き方がオススメです。