部下育成の中でも女性スタッフの育成は難しい。
現場をひっぱるプレイングマネージャーの方々から、そんな声をお聞きします。
しかも、いわゆる優秀で仕事ができる方や、トッププレイヤーからマネージャーになった方、マネジメント経験豊富な方、そういった人ほど、女性スタッフ育成に苦戦されていることが多いのです。
そんなに女性スタッフの育成は難しいものなのでしょうか?
いいえ、決して難しいことはありません。
ただ、女性スタッフの力を引き出し育成するには “ちょっとしたコツ” が必要なのです。
そのコツを知っているかいないかでマネジメントのしやすさは随分違います。
今日は、
「女性の人材育成って、正直ちょっと(かなり)めんどくさい。」
と思っておられる方に、ぜひ読んでいただきたい、女性スタッフ育成のコツについてお伝えしていきます。
目次
女性スタッフの育成を難しいと感じる理由
女性スタッフの育成に難しさを感じているマネージャーは「今までの部下育成はそれなりにうまくいっていたのに、何か様子が違う、手応えがない」といった戸惑いを口にされます。
自分としてはこれまで通りのことをしているのに、女性スタッフが相手となると予測したような展開、結果にならない。
なぜそのような反応になるのか?
どのように対応すればよいのか?
と頭の中が「?」でいっぱいになってしまいます。
これは多くの場合、ご自身が今まで経験してきた育成方法、経験値だけを頼りに女性スタッフを育てようとしていることが原因です。
相手のことを知らないまま今まで通りの部下育成をしようとするから、難しいと感じるのです。
この場合、答えは簡単です。
相手を知りさえすれば、自ずと対処方法は見つかります。
実は女性スタッフの育成には、決して高度なテクニックが必要なわけではありません。
相手についての理解を深め、その人に合った育成を行えばいいだけ、なのです。
女性スタッフの育成が上手い人の共通点
女性スタッフの育成が上手い人には共通点があります。
その共通点を2つ、お伝えしましょう。
1 相手を完璧に理解できる、と思っていない
女性スタッフの育成がうまいマネージャーはどんな人なのでしょうか?
- 女性の気持ちがよく分かる人
- きめ細やかなサポートができる人
- コミュニケーション能力が高い人
- リーダーシップがある人
このようなマネージャーである必要は、ありません。
もちろん、このような人であればベターではありますが、必ずしもマストではありません。
それよりももっと大切な、押さえるべきポイントがあります。
それは、そもそも女性スタッフは自分とは全く違う生き物だと知っている人です。
女性スタッフと自分は全く違う生き物
女性スタッフの育成がうまいマネージャーはこの事をよくよく理解していて、それを前提にいつも接しています。
たとえて言うなら、「自分は金星人で相手は火星人。それぐらい違う。」というくらいの認識を持っています。
金星人と火星人なのだから、言葉も文化も全く違って当たり前。
だからこそ、会話にせよ、行動にせよ、丁寧に相手に向き合い、分かり合う努力をします。
あなたの言動、自分はこう受け取った(受け取っている)けれど、あってますか?
私の言動、あなたはどう受け取った?教えてもらえる?といったように。
同時に金星人と火星人なのだから、全部を完璧に理解し合えなくても当然、というある意味割り切りも持っています。
女性スタッフの育成がうまいマネージャーは、完璧に理解し合うことよりも、共通の目的のためにお互い協力していい結果を出すにはどうすればいいのか?という部分に意識を集中させているのです。
2 女性スタッフを「育てよう」と意気込んでいない
上手に女性スタッフを育てているマネージャーは、そもそも、女性スタッフに対して育てるという意識を強く持っていません。
「育ててやる」ではなく「(目的に向かって)一緒にやろう」という意識で関わっています。
育てなくては、という気持ちが強すぎると、どうしても指導やアドバイスをしたくなります。
女性スタッフに対しての指導やアドバイスは、男性スタッフに対してのそれとはまた違うポイントがあります。
ポイントを外してしまうと指導やアドバイスは逆効果になりかねません。
女性スタッフの育成がうまいマネージャーは「目的に向かって、いかに女性スタッフに力を発揮してもらえるか」に力を注いでいます。
足りない部分を見つけ修正させる、新たな何かを身につけさせる、といったことよりも、本人が今すでに持っている力をどのように引き出すか、本人の強みをさらに活かすにはどのように関わればよいか、ということに力を注いでいるのです。
いかがでしょうか?
女性スタッフの育成を難しいと感じてしまう方は、もしかすると相手を完全に理解しなくては、しっかりと育てなくては、と肩に力が入ってしまっているか、もしくは力を入れるポイントがズレてしまっているのかもしれません。
女性スタッフ育成のコツ
ではマネージャーとして何に気をつけて、どのように行動すれば、女性スタッフが力を発揮してくれるのか?
ここではもう少し具体的な育成のコツを5つ、挙げておきましょう。
1 返事をする時は復唱から入る
女性スタッフの上司に対する一番の不満をご存知でしょうか?
一番多い不満は「うちの上司は私(私たち)のことを分かっていない」です。
女性は理解されている、分かってもらえている、という感覚があると成長スピードが上がります。
ですから「共感」が大切なのです。
大事なことと分かってはいても共感を女性スタッフに「示せている」マネージャーは意外と少ないものです。
共感を示す方法は簡単です。返事は復唱から入る。これだけです。
例えば「今日は雨、降りそうですね」「おお、そうだね、降りそうだね。」といった具合。
間違っても「いや、今日は降らないよ。降水確率○%だからね。」などと言わないように。
同じことを伝えるにも、
「おお、そうだね、雨降るかもしれないね。でも大丈夫じゃないかな?天気予報では降水確率◯%だったからね。」
と伝えると、彼女は共感してもらえた、と感じます。
2 話はとにかく最後まで聴く
女性は話が長く、広がりがちです。そのことに頭を悩ませているマネージャーも多いでしょう。
忙しさのあまり、話の途中で「その話はいいから、◯◯はどうなってるの?」「ああ、それは◯◯ということだったよね」と、ついつい結論を急ぎがちです。
「今してるその話はこの話(本題)には関係ないだろ」「で、この話の着地点はなんなの?」と思っても、そこはぐっと我慢。最後まで、話を聞いてみてください。
とは言え、仕事ですのでもちろん時間がない場合もあるでしょう。
そのような時は話の冒頭で「今は◯分くらいしか時間が取れないから、要点だけ教えてもらえるかな?詳しい話はまたゆっくり聞かせてもらうから」等と断って話を始めると、本人も端的に話をしようと頑張ってくれます。
3 周辺情報を提供する
女性スタッフは「ゴール・期限・手段(プロセス)」と言った必要最低限の項目だけ伝えても、動けない場合があります。なぜならいろいろなことが気にかかり、心配だから。
女性スタッフに動いて欲しい時は、周辺情報を多めに提供しましょう。
上司としては些細なことであっても、彼女にとっては最重要な情報だったりします。
その情報がなければ彼女は仕事にとりかかれない、行動が途中で止まってしまう、といったことが起こります。
人は安心すると行動スピードが上がります。ですから彼女の不安を極力取り除く必要があるのです。
何が彼女の知りたい周辺情報なのか分からない、という場合は「あと心配なことは?」「やってみるにあたって知っておきたいことある?」「あなたがそれを進めるのに気がかりになりそうなこと、ある?」等と本人に聞くのが手取り早いです。
4 任せて、見守る
任せなくては人は育ちません。かと言って任せすぎても仕事が順調に進まなかったり、本人がつぶれてしまうこともあります。
「任せる」と「見守る」のバランスが大切です。
任せるコツは、まずは小さなことからどんどん任せていくこと。
見守るコツは、相手が困った時にいつでもSOSを出しやすいようにしておくこと。
こちらが心配になった時にだけ「あれどうなってる?」「なぜそうした?」「◯◯はしてある?」と聞きがちです。
それよりもこまめに「どう?調子は?」と声をかけましょう。
相手が大丈夫そうでも、大丈夫でなさそうでも、しょっちゅう「声をかけること」がポイントです。
そうすることで彼女の方からSOSが出しやすくなり、「いつも気にかけてるよ」「見守っているよ」とのメッセージも伝わります。
5 自分の想いを言葉にする
実は女性スタッフ育成の一番のポイント、と言ってもいいでしょう。
同時に多くのマネージャーが苦手とすることでもあります。
人は理屈で動くのではありません。心が動いてはじめて本当の意味で動けます。
特に女性はその傾向が強いのです。
女性スタッフに自発的に、積極的に動いてもらいたい、と思うならば正論や根拠を示すことは思うほど効果的ではありません。
会社の方針だから、決まったことだから、お客様の為だから、あなた自身の成長の為だから、等と伝えることも行動を促す決め手としては欠けます。
一番は直属の上司、マネージャー自身の考えや想いを、言葉で伝えること。
その想いに共感、理解が得られれば女性スタッフは動いてくれます。
女性スタッフ育成経験はあなたの年収をアップさせる?!女性スタッフのマネジメントはこれからのマネジメントのスタンダード
今、女性スタッフの育成を任されているとしたら、それはあなた自身にとってチャンスです。
なぜならば、あなたのマネジメント力を確実にレベルアップさせてくれるからです。
キャリアを重ねる上で、ある時点に来るとマネジメント力の有無が大きな影響を持ってきます。
昇進するにしても、転職するにしても、起業するにしても、マネジメント力があるか否かは、確実にあなた自身のキャリアに影響を与えます。
もちろん、年収にも響いてくるでしょう。
また、今や、価値観・国籍・働き方・雇用形態等、様々な背景やキャリアを持つ人々が一つのチームで働く時代です。
これからも、ますますダイバーシティが進みます。
その中でマネージャーは多様性のあるチームを一つにまとめ、成果を出していく力を求められています。
多様性を持つチームの中で、女性スタッフという切り口はマネジメント対象としては序の口です。
言い換えれば、女性スタッフの育成やマネジメントに必要な力は、これから(もうすでに現時点でも)どんな部下に対しても必要になる力、と言えます。
これからの時代のマネージャーとして必要な基礎力を身に着けるのに、女性スタッフの育成経験はまたとない機会となるでしょう。
最後に
今日は業界・職種・職場環境・チーム編成を問わず、女性スタッフの育成についてまずは知っておいて頂きたい、基礎的なコツをお伝えしました。
女性スタッフの中にはまだ引き出されていない力が眠っています。
彼女が持っている力をさらに発揮できるようになれば、あなたのチームの大きな戦力にきっとなります。
彼女(達)との仕事の仕方を少し変えるだけで、彼女(達)はあなたの最高の相棒、サポーター、戦友になれることでしょう。
ぜひ、あなたの力で女性スタッフの潜在力を、引き出してあげて下さい。