公務員薬剤師を目指す人へ、公務員になるための方法や仕事内容、活躍する職場を紹介しています。
「公務員の薬剤師って何をするんだろう?」
「公務員薬剤師になるためにはどうしたらいいの?」
「公務員薬剤師のメリットが知りたい」
そんな疑問にお応えしている記事です。
民間とは全く違った仕事内容になるため、大学を卒業してすぐ公務員になりたい人も、民間薬剤師として働きながら公務員を狙っている人も、事前のリサーチを怠らないようにしましょう。
公務員の薬剤師ってそもそも何?
公務員薬剤師の仕事は薬事行政や食品安全、検査業務など多岐に渡ります。
同じ公務員でも勤務先によって仕事内容が全く異なるので、それぞれの違いについて詳しく理解しておきましょう。
公務員薬剤師には大きく分けて、次の3つの働き方があります。
テレビでも見かける!麻薬取締官
テレビの特番などで実態を知ることができる麻薬取締官も、公務員薬剤師の仕事のひとつです。
麻薬取締官に限っては公務員試験がありませんが、厚生労働省の「麻薬取締部の採用試験」にパスしなくてはなりません。
この試験を受けるための資格は2通りです。
- 29歳以下の薬剤師、もしくは薬剤師国家試験合格見込の者であること
- 国家公務員試験一般職試験の「電気・電子・情報」または「行政」に合格していること
試験に合格したら初任者研修を経て、麻薬取締官として現場で活躍できます。
国家公務員薬剤師
国家公務員薬剤師は、厚生労働省に所属して薬事行政に関わるのが主な仕事です。
医薬品の立案や監査、薬事法の整備などを担当することになります。
具体的には、医薬品の品質や安全性の調査、医療費の見直し、薬剤師国家試験の問題作成などです。
薬の調合といった、民間の薬剤師のキャリアを積むことはできません。
しかし「医療を支える制度を作る」という国の重要な仕事に携わることができ、やりがいも抜群です。
地方公務員薬剤師
地方公務員薬剤師は、各都道府県の公務員試験を受け、本庁や出先機関に勤務することになります。
国家公務員とは全く違った仕事内容になっており、環境衛生や食品安全といった視点から住民を守るのが大きな使命です。
地方公務員の活躍の場は以下の通りさまざまで、3〜4年周期で異動し、幅広い経験を積んでいくことになります。
保健所
保健所には、「福祉保健所」「健康福祉センター」「保健福祉センター」などがあり、薬事のほか食品衛生や環境衛生といった部署に所属します。
それぞれの部署の役割はご覧の通りです。
- 薬事衛生…薬局やドラッグストアの開設許可や立入検査を行う
- 食品衛生…飲食店に対して開設許可や立入検査を行う
- 環境衛生…プールや上下水道などの公的機関、ホテルなどの宿泊機関、サービス業の環境衛生施設の開設許可や立入検査を行う
夏場にニュースになる学校や施設などの食中毒の調査も、大切な業務の一環です。
国公立の医療機関
民間の薬剤師に近い仕事で、国立や県立の医療機関にて、医師による処方に基づいた調剤や服薬指導を行います。
薬剤師としての多くの経験ができ、民間の薬剤師への転職もむずかしくありません。
県庁
製薬会社のような企業に対する監視が主な業務です。
そのほか化粧品や医薬部外品、医療機器の製造業や販売業の許可、医薬品の分析や研究、献血の推進などにも携わります。
県民の健康や安全を守るという、やりがいのある仕事です。
衛生研究所
衛生に関する管理や検査を行う保健所とは異なり、「衛生についての研究」を行う機関になります。
食中毒を起こすウイルスや細菌について研究し、結果を保健所に通知するのが主な仕事です。
衛生研究所の職種には、薬剤師・化学・事務・衛生監視員、臨床検査技師などがあります。
薬剤師で地方に転職ってあり?地方・Uターン転職のメリット・デメリット
公務員薬剤師を目指すなら公務員試験を受ける
薬剤師資格があっても試験は必須
薬剤師が公務員になる方法はいくつかありますが、正規社員を目指すなら年に一度の公務員試験を受けなくてはなりません。
「ようやく薬剤師になれたのにまた試験?」とテンションが下がってしまう人もいるでしょう。
実際に、公務員薬剤師の応募人数は減少傾向にあり、民間薬剤師の人気が高くなっています。
公務員試験以外だと非正規雇用になる
公務員試験を受けないで公務員を目指す場合は、非正規社員として採用されることになります。
非常勤から正規社員になれる可能性は低いので、正規社員になりたい人は試験を受けましょう。
中途採用は主に契約社員やパートが多い
基本的に新卒採用でないと正規社員になれないと覚えておきましょう。
転職する場合は契約社員として採用されることになりますが、人材が不足している僻地では、正規社員を募集していることもあるようです。
公務員薬剤師になる3つのメリット
薬剤師としてドラッグストアや調剤薬局で働くのか、公務員薬剤師になるのか、悩んでいる人も多いと思います。
公務員薬剤師になるメリットは、以下の3つです。
給与が安定しているためリストラの可能性が低い
薬剤師という職業事態が手に職のある仕事ですので、安定性は高いです。
しかし公務員薬剤師の安定性はさらにずば抜けています。
自治体が倒産することはありませんので、世の中がどんなに不景気になったとしても、職を失ってしまう心配はありません。
勤続年数を重ねれば重ねるほど給与が上がる
薬剤師は高収入と言われていますが、一つだけデメリットがあります。
それは昇給率の低さです。薬剤師の初任給は非常に高いのですが、その後の昇給率が他職種と比べて低いといわれています。
薬剤師以外の職業は、初任給と定年退職するときの差が約2倍に伸びますが、薬剤師は40歳くらいで頭打ちになり、60歳まで横ばいです。
しかし一方で、公務員薬剤師は勤続年数と比例して年収が上がっていきます。
唯一のネックは初任給が低いことですが、定期的な昇給もあるので、モチベーションも保たれるでしょう。
制度の整った福利厚生が受けられる
公務員ですので、住宅手当や扶養手当などの福利厚生が充実しています。
一般企業では、単身者には月に数万円の住宅手当が支給されることが多いと思いますが、公務員の場合は家族が増えると広い住宅に転居できるのもメリットです。
また公務員は退職金が高いことでも有名ですが、公務員薬剤師も同じく、高い退職金が期待できます。
薬剤師が公務員を目指すときの注意点
次に、公務員薬剤師のデメリットを紹介します。
公務員を目指す学生や民間の薬剤師さんは、これらの注意点をしっかりと把握して、薬剤師になるか公務員薬剤師を目指すか、どちらを選択するようにしましょう。
公務員試験は1年間に1回だけなのでチャンスが少ない
公務員になるためには公務員試験をパスすることが絶対条件です。
「薬剤師試験を合格したんだから公務員試験は簡単!」
と思っていると痛い目に合うかもしれません。試験内容は薬剤師の試験とは違うものが出題されるので、もう一度しっかりと勉強をして対策を立てましょう。
薬剤師公務員の職種は幅広く、「薬剤師」「衛生監視」「化学」などの名称で募集しています。
また自治体によって募集する職種が異なり、試験科目も変わってくるので注意して下さい。
新卒時以外で働くメリットが少ない
正規社員になるには新卒採用で応募することが重要です。
中途の場合はほとんどが非正規社員で、公務員としての恩恵を受けることができません。
深刻な人手不足に悩む過疎化の地域などでは、中途でも正規社員になれる可能性があります。
しかし前述した通り、公務員の初任給は低めです。転職した直後は収入が減ることを覚悟しておきましょう。
部署などの移動が多い
公務員になると3年に一度の割合で部署移動が行われます。
もちろん転勤も伴いますので、家族がいる場合の転職は事前に話し合っておくことが大切です。
地方公務員は転勤する範囲が限られますが、国家公務員は全国が対象になります。
環境の変化に柔軟でなければ大きなストレスとなって、仕事事態が辛くなってしまうかもしれません。
「住んでいる地域から離れたくない」
「結婚を考えているので転勤は避けたい」
「子どもを私立の学校に入れたい」
という人は、国家公務員を目指すのは避けるべきでしょう。
薬剤師として必要なスキルが身に付きにくい
公務員薬剤師が目指しているのは、医療業界のスペシャリストではなく、広範囲の知識や経験を持ったジェネラリストです。
公務員の異動は非常に多いので、さまざまな業務に携われるのがメリットですが、薬剤師としてのキャリアを積むことはむずかしくなります。
すると公務員から民間へ転職する際、公務員として働いた職歴が足かせになってしまう可能性も無視できません。
薬剤師としてのキャリアアップはむずかしい環境ということを理解した上で、公務員を目指すか検討する必要があります、
普通の薬剤師より給与が少ないことも
公務員薬剤師の年収は、一律20.8万円です。ここに地域手当が2万円弱、扶養手当や住宅手当がもらえる計算になります。
6年間も大学に通って難関な国家試験を突破した割には、決して多いとはいえません。
ドラックストア勤務の場合は、初任給で30万円をもらえる企業もあります。
いくら安定しているからとはいえ、給与に対しての魅力はゼロに等しいのではないでしょうか。
薬剤師の給料が安い職場はどこ?理由と年収をあげるためのポイントを解説します
給与が削減される恐れがある
公務員は安定して働けるというメリットがありますが、実は国公立病院の7割近くが赤字経営と言われているようです。
薬剤師を含む医療従事者の給与削減を考査している自治体もあるとか。
リストラのリスクは低いですが、経営悪化による病院閉鎖や給与削減の可能性も念頭に入れておきましょう。
公務員薬剤師について理解を深めて転職するか検討しよう
公務員薬剤師の仕事がいかに特殊であるか、理解できたでしょうか?
一般的な薬剤師と比べると働き方が大きく違うので、本当に公務員を目指すべきなのかどうかを、しっかり判断することが重要です。
民間の薬剤師として働いていて職場に不満がある人は、公務員の枠にとらわれず働き方を見直す必要があります。
今後どんなキャリアプランを描いていきたいかも含め、転職エージェントに相談してみるのもひとつの方法です。
公務員薬剤師になると、積めるキャリアやスキルが違ってきます。
薬剤師という資格を大切にして、将来をしっかりと吟味しましょう。