介護事務は業界の中でも人気が高い仕事です。
介護事務が気になっていて、その業務内容について知りたいと考えている方は多いでしょう。
この記事では介護事務の業務内容や主な勤務場所、介護事務として働くためにあると有利なスキル等について紹介していきます。
目次
介護事務とは
介護事務とは、介護サービス提供する施設や事業所で事務業務を担当する人のことです。
介護保険制度がスタートした2000年からニーズが生まれるようになりました。
一般事務との大きな違いは、介護保険制度や介護報酬請求等の専門知識を必要とする業務があることです。
また施設によって担当業務の範囲が異なり、場合によっては現場で介護職のサポートを行うことも。
施設全体が円滑に運営できるよう幅広くサポート業務を担っているのが介護事務の特徴です。
介護事務の主な勤務場所
介護事務員の勤務場所は介護サービスを提供する施設や事業所です。
主な勤務場所の例を紹介しますので確認していきましょう。
大きく分けると、施設に入所する利用者にサービスを提供するスタイルと、在宅の利用者に介護サービスを提供するスタイルがありますよ。
施設介護サービス
利用者が入所して介護サービスを受ける施設には、下記のようなものがあります。
- デイサービス
- 特別養護老人ホーム
- 介護付き有料老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 療養型医療機関
等
居宅介護サービス
在宅の利用者に介護サービスを届ける提供元には下記のようなものがあります。
- 在宅介護支援センター
- 福祉用具レンタル会社
- 訪問介護事業所
等
介護事務の仕事内容
介護事務の仕事内容について詳しく紹介していきます。
一般事務とは違った専門的な業務がある点や、業務範囲の幅広さに注目して目を通してみてください。
施設の事情や方針によっては業務範囲は異なることがあります。
電話対応・来客対応
介護事務は、新規利用者の受付や、利用者家族の訪問、電話問い合わせ等にも対応します。
総合的な窓口業務を担当することから、介護事務はいわば施設の顔です。
他施設や保健所との連携が必要な際も、連絡業務を担当しますよ。
スタッフの勤怠管理
スタッフの給与計算も介護事務の仕事のうちです。
そのためにはスタッフひとりひとりの怠管理業務が必要ですね。
また新人さんの労働条件通知書の作成、社会保険の加入手続きといった労務系の事務作業も担当することがありますよ。
備品の在庫管理
消耗品の在庫管理や備品の発注、それに伴う伝票の作成も介護事務の仕事です。
もちろん経費の支払いなどの会計処理全般も担当します。
この点に関しては一般的な事務の業務と共通していますね。
施設の整備
施設の設備が破損した場合などに、業者に連絡を取り修繕計画について相談することもあります。
使用できる予算を考慮しつつ、必要な対策を取り入れます。
介護報酬請求業務(レセプト作成)
介護報酬請求業務というのは、施設や事業所が介護サービスを提供した際に受け取れる報酬を請求する業務です。
介護報酬は原則として利用者から1割~3割、残りを国民健康保険団体連合会(国保連)が負担し、総額はサービスの種類や利用者の要介護度など、様々な条件を考慮して決定されます。
この国保連宛の請求をする際に介護給付費請求書を作成する必要があり、これをレセプトというのですね。
レセプト作成には、「介護保険制度」「介護報酬請求」に関する知識が欠かせません。
専門知識が必要な、介護事務ならではの業務の一つです。
毎月10日の期限に間に合わなければ介護報酬の受け取りが遅れ、施設の運営に影響が出てしまうため責任重大な業務ですよ。
介護報酬請求業務の流れ
介護報酬請求業務の流れは下記の通りです。
- 利用者の基本情報・サービスの利用回数・加算の確認
- 介護報酬と利用者負担分の計算
- 利用者への請求書作成
- 利用者への請求書を送付、口座引き落としデータの作成と送信
- 国民健康保険団体連合(国保連)への請求データ作成、送信
- 入金金額に間違いがないか確認
このように介護報酬請求では利用者と国保連の2ヵ所分の請求を行う必要があります。
規模の大きな施設だと入所人数やサービス利用者数も多くなるため業務量も増えることになりますね。
月ごとに都度請求する必要があり、国保連への請求が毎月10日までであることから、月初から10日にかけては介護事務にとって繁忙期となります。
利用者への請求書作成
すでに紹介していましたが、国保連だけでなく利用者からも介護保険サービスの利用料も請求する必要があります(1~3割)。
その請求書の作成も介護事務の仕事です。
利用者への請求を間違えると施設の信用にかかわってきますので、期限を守りつつも正確な作業が求められます。
ケアマネジャーの補助業務
ケアマネジャーとは、介護を必要とする人がサービスを受けられるよう、利用者と事業者の間に入り調整する人のことです。
主な業務には介護給付費の管理、要介護認定に必要な書類の作成、ケアプランの作成などがあります。
介護保険の専門知識を持った介護事務は、上記のようなケアマネジャーの業務を一部補助する場合があるのですね。
ケアマネジャーのサポートが業務に含まれるかは施設の方針や人手の状況等によっても異なります。
介護職の補助業務
施設によっては介護事務でも現場に出て、利用者のサポートをすることがあります。
業務範囲は施設によって異なりますが、例えばレクリエーション準備・片付けや、送迎時の利用者の誘導などですね。
場合によっては食事作りや配膳、洗濯などの生活援助も行うこともあります。
基本的には事務業務専門のポジションではありますが、常に人手不足の業界ということもあり、「現場を手伝ってほしい」とお願いされることもあるのですね。
そういった業界の事情もあり、介護事務が介護職を兼務することは珍しくありません。
介護事務のつらいところは?辞めたいと思う人が多い理由や体験談を紹介
介護事務の1日のスケジュール
介護事務の1日の業務スケジュールを紹介していきます。
下記は、入所型の施設に勤務する介護事務の1日のスケジュールの例です。
- 9:00 ミーティング
他のスタッフと連絡事項や予定の共有を行います。 - 9:00~12:00 事務業務
メールチェックから始まり、事務業務の間に来客や電話等があれば対応します。
利用者の家族が訪問することも多く、施設の顔としての受付業務も担当します。 - 12:00~13:00 昼休憩
- 13:00~15:00 スタッフの勤怠整理、シフト作成
- 15:00~16:00 施設清掃、レクリエーションの片付け
介護職を兼務する場合、日によってレクの片付け、洗濯掃除、調理補助等の作業が入ってきます。 - 16:00~18:00 事務業務
消耗品の納品確認や備品の発注、それに伴う伝票の作成なども行います。 - 18:00 退勤
人手が足りない施設や介護職を兼任する場合、事務作業に避ける時間が削られるため残業になってしまうことも。
時期によっても内容は変わり、特に毎月月初から10日にかけては介護事務にとって繁忙期です。
介護報酬請求業務(レセプト作成)の締め切りが毎月の10日となっているためですね。
下記は繁忙期でない日のモデルですが、月初から10日にかけてはほぼ介護報酬請求業務にほとんどの時間を割くことになるでしょう。
計画的にスケジュールを組んで作業を進めないと、月初は残業が多くなってしまいます。
介護事務の平均給与
厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、月給制の介護事務の平均給与は下記のようになります。
介護事務(常勤) | 31万1,120円 |
---|---|
介護事務(非常勤) | 20万1,730円 |
また月給制の介護職の平均給与は下記の通りです。
介護職(常勤) | 31万5,850円 |
---|---|
介護職(非常勤) | 19万6,630円 |
介護職と介護事務の給与水準はほぼ変わらないことが分かります。
年収を上げたい場合には、介護関連の資格などを取得すると手当てがつくことが多いですよ。
介護事務に資格は必要?
介護事務をするために資格は必須ではありません。
ただし、紹介していたように介護報酬請求の業務には専門知識が必要不可欠です。
資格はなくとも、介護関連の知識は身につけなければ介護事務として勤めるのは難しいでしょう。
業務を始めてから勉強も両立していくという方法もありますが、日々の業務をこなしながらの勉強は純粋に大変ですし、採用時にも不利です。
できれば「介護保険制度」「介護報酬請求」についての基礎知識程度はあらかじめ勉強してからの方が、採用時はもちろん採用後もスムーズに業務に慣れることができるでしょう。
介護事務の関連のおすすめ資格
介護事務関連の資格はいくつかあり、どれを取ればいいのか悩んでしまう方もいるかと思います。
介護事務の資格の中でも比較的知名度が高く、採用時や実務で有利になりやすいものをピックアップしましたので参考にしてみてください。
- 介護事務管理士(JSMA技能認定振興協会)
- ケアクラーク(一般財団法人 日本医療教育財団)
- 介護事務実務士(特定非営利活動法人 医療福祉情報実務能力協会)
- 介護報酬請求事務技能検定(日本医療事務協会)
介護事務の資格は全て民間資格です。
国家資格ほど試験難易度は高くないのと、受験資格がないものも多いので挑戦しやすいかと思います。
介護事務として働くために有利なスキル
介護事務として働く上であると有利なスキルについて紹介します。
officeソフトの基本操作
介護事務に関わらず、事務職全般の業務に欠かせないのがPCの操作スキルです。
特にExcelやWordといったofficeソフトはまず間違いなく使うことになります。
介護や福祉に関する知識がなかったとしても、PCの扱いになれている人であれば一般事務的な業務をマスターするのに苦労が少ないでしょう。
介護事務業務を覚える余裕をつくるためにも、Officeソフトの基本操作程度は、就業前に身につけておくのがおすすめです。
スケジュール管理能力
紹介していたように、介護報酬請求業務には締め切りがあります。
国保連への請求が間に合わないと次の申請は来月となり、介護報酬の受け取り時期が大幅に遅れてしまうことに。
介護報酬は施設の主な収入源となっているため、施設の運営にも影響が出てしまいかねません。
月初は請求業務に集中できるよう、それ以外の業務を月の中旬~下旬で終わらせておく。
忙しくなる月初にシフトを多めにする等の工夫や計画性、スケジュール管理能力が非常に重要です。
コミュニケーションスキル
事務といってもデスクワークだけではなく、介護事務は人とコミュニケーションをとる機会も多いのが特徴です。
利用者や利用者の家族とお話をすることもあれば、医療機関や保健所の職員と連絡を取り合うことも。
事務作業は個人で黙々と進めていくものというイメージがありますが、積極的なコミュニケーションを取りながら周囲と連携していく力も、介護事務には求められるのですね。
また、介護の話題というのは多くの場合、利用者や利用者家族にとって繊細な問題です。
配慮の感じられないフランクな話し方などは、場合によっては相手を傷つけたり施設の信用に影響してしまいます。
最低限のビジネスマナーとして、失礼のない丁寧な言葉遣いができることも大切ですよ。
介護事務には専門性の高い業務も多い
介護事務の仕事内容と主な勤務場所、介護事務として働くためにあると有利なスキル等について紹介しました。
介護事務は、介護業界ならではの専門知識を必要とする業務が多いのが特徴です。
介護事務の業務範囲は多岐にわたり、施設によっては事務職でありながら現場に出て介護職のサポートをしたり、ケアマネジャーの業務を補助することもあります。
一般的な事務職のイメージとは異なる部分もたくさんありますから、あらかじめ業務内容について把握していないと、終業後に大きなギャップを抱えることになるでしょう。
就業前に最適な対策をするため、そして終業後少しでも早く業務になれるためにも、介護事務の特徴や仕事内容をあらかじめ理解しておくことが大切なのですね。