国家公務員から地方公務員へ転職するというと、簡単に転職できそうな気もしますが、実際にはそんな簡単なことではありません。
国と自治体は全く異なる組織なので、明確な理由、そして人材としての魅力がなければ、元国家公務員でも地方公務員へ転職することはできません。
そこで今回は国家公務員から地方公務員へ転職するコツや、転職するメリット・デメリットを解説していきます。
目次
国家公務員と地方公務員の違いとは?
国家公務員とは、中央省庁や各行政機関など、国が運営する国家機関に所属する公務員です。
政策立案や予算の考案、また行政の執行など国の安定と運営に直結する仕事を行います。
国家公務員になるためには、国家公務員試験を受けなければならず、大きく分けて「総合職」と「一般職」に分けられます。
一方地方公務員は、各自治体が行う地方公務員試験を受けなければならず、「上級(大卒相当)」「中級(短大卒相当)」「初級(高卒程度)」の3種類に分けられています。
地方公務員の場合、専門職ではない限り、様々な部署を経験しながら適正に合わせた職場で働くことになります。
国家公務員と比べて、直接住民と関わったり、生活に直接的に関わる仕事が多くなります。
【国家公務員の主な職種一覧】
- 国家公務員総合職
- 国家公務員一般職(大卒・高卒)
- 各省専門職員
- 労働基準監督官
- 参議院事務局
- 衆議院事務局
- 航空管制官など
地方公務員の主な職種一覧
- 地方上級公務員
- 地方中級公務員
- 地方初級公務員
- 市区町村職員
- 技術系公務員
- 日本郵政公社職員など
国家公務員から地方公務員への転職は難しい?
国家公務員だからといって、転職したいといえば誰でも地方公務員へ転職できるわけではありません。
近年では国家公務員(特に一般職)から地方公務員へ転職する人が増えており、倍率も高くなっています。
そのため地方公務員へ転職して何をしたいのか、なぜ国家公務員ではダメなのか、きちんとアピールしなければいけません。
「もっと住民の生活に関わる仕事がしたい」など、ふんわりとした理由では採用されるのは難しいでしょう。
国家公務員時代にはこんな仕事をしてきた、今後はその経験を活かしてこんな役割を果たしたい、とできるだけ具体的に転職理由を説明することが大切です。
国家公務員からの転職なら筆記試験・面接試験で有利になる?
国家公務員からの転職の場合、筆記試験や面接試験で有利になるケースは多いです。
民間企業から転職する人と比べ、公務員という仕事への理解も深く、信用も得やすいからです。
しかし先ほども説明したように、待遇の良い自治体には国家公務員からの転職希望者が多く集まります。
そうなると、ただ国家公務員というだけでは、採用されるのは難しいでしょう。
出産や結婚を機に地元の町役場に帰りたい、という人なら比較的転職は簡単です。
国家公務員から地方公務員へ転職するメリット
- 国家公務員と比べて仕事の負担が減る
- 国家公務員(一般職)と比べて昇進しやすい
- 地方への転勤がない
- 田舎の自治体なら比較的生活が楽になる
国家公務員と比べて仕事の負担が減る
国家公務員と比べると、地方公務員の方が仕事の負担は減ります。
国家公務員の場合、基本的に残業は当たり前で、キャリア・ノンキャリア関係なく仕事は多忙です。
毎日目前の仕事に追われるのが嫌で、国家公務員から転職する人はかなり多いです。
地方公務員でも都庁や県庁であればそれなりに仕事量も多いですが、市区町村レベルの自治体であれば、比較的仕事の負担は軽くなります。
毎日多忙でワークライフバランスが全く取れていないという方は、地方公務員への転職を検討してもいいでしょう。
国家公務員(一般職)と比べて昇進しやすい
国家公務員の一般職の場合、課長クラスまで昇格できる人は稀です。
ノンキャリアでは、昇進する望みは殆どないと覚悟しなければいけません。
一方、地方公務員であれば、同じ大卒であっても、順調にキャリアを積んでいけば課長クラスまで昇進することができます。
昇進試験など明確に基準が設けられているので、努力した分だけ報われる環境といえます。
地方への転勤がない
国家公務員の場合、地方への転勤を命じられることがあります。
雇用主は国となるので、国全体が職場の候補になってしまうのです。
しかし地方自治体であれば、雇用先の自治体が職場となるので、原則的に転勤はありません。
そのため結婚や出産、またマイホームの購入を機に、地方自治体へと転職する方は多いです。
田舎の自治体なら比較的生活が楽になる
地方公務員の場合、自治体によって支給される給料・手当はバラバラです。
そのため一概にはいえませんが、地方の自治体であれば、都内で働く国家公務員(一般職)よりも、生活水準は楽になるケースが多いです。
国家公務員の一般職は、仕事量に比べて、貰える給料は低いです。
生活の安定を考えるのであれば、地方公務員への転職を検討してもいいでしょう。
国家公務員から地方自治体へ転職するデメリット
- 自治体によっては収入が下がるかもしれない
- 社会的ステータスが落ちるかもしれない
- 住民とのコミュニケーションスキルが必要
自治体によっては収入が下がるかもしれない
経済的に苦しい自治体であれば、転職をしても給与が下がる可能性はあります。
地方であれば物価や賃料も下がるため、給与が下がっても生活水準が上がる可能性もありますが、自治体によっては苦しい生活を強いられるかもしれません。
勤続年数が長くなれば、自動的に昇給していくのが公務員のいいところですが、最初のうちは苦しい時期が続くかもしれません。
社会的ステータスが落ちるかもしれない
国家公務員から地方公務員へ転職する場合、社会的ステータスが落ちたと感じる人もいるかもしれません。
自分の職業を教えるときにも、国家公務員と地方公務員では、人に与える印象は結構変わるものです。
また同じ公務員であっても、金融機関によってはローンの通りやすさに差が出る可能性もあります。
しかし公務員という時点で、会社員と比べてローンの審査は圧倒的に有利となるので、そこまで気にする必要はないでしょう。
住民とのコミュニケーションスキルが必要
地方公務員の場合、仕事上、住民とコミュニケーションを取らなければならない場面が多いです。
そのため人とのコミュニケーションが苦手な方は、辛い仕事が増えるかもしれません。
特に生活相談窓口などでは、住民からのクレームなどにも対応しなければならず、精神的に疲弊してしまう人も少なくありません。
これまで職場内の人としか話さなくていい仕事をしていた方は、地方公務員の仕事が酷に感じる部分も多いでしょう。
転職活動開始から終了までの流れ
国家公務員から転職をする際の、転職活動開始から終了までの流れについて見ていきましょう。
一連の流れは下記のようになります。
⒈ 転職活動を始める
⒉ 転職先から内定をもらう
⒊ 直属の上司や総務などに転職の意思を伝える
⒋ 再就職情報の届出を提出する
⒌ 辞職願の提出
⒍ 退職届・退職手当金受給に関する申出書を共済組合へ提出
⒎ 転職に向けた準備(部屋探しや有休消化等)
あくまで一例ですので、上長に転職の意思を伝えるタイミングなどは職場の状況によって前倒しになることもあるでしょう。
出たそれ以外に関しては、上記のような手順を踏むことになるため、就職活動を計画的に進めるための参考にしていただけたらと思います。
転職活動を始める~内定をもらう
転職活動の期間は人それぞれです。
短期集中で取り組みたい方もいれば、無理のないペースで進めていきたいという方もいることでしょう。
できればですが、退職に向けて有休も少しずつ使えると良いですね。
職場の環境によっては、最後にまとめて有休を消化できるかわからない(有給は権利なので使えなくてはいけないが、職場の空気感的に使いにくい)というケースもあるでしょう。
少しずつ有休を使えれば、筆記試験や面接準備など、転職活動の時間を確保することもできます。
何より、最後に消化しきれずたくさんの有休が残ってしまってはもったいないですからね。
直属の上司や総務などに転職の意思を伝える
納得のいく転職先にいつ内定をもらえるかわからないこともあり、上長に転職の意思を伝えるタイミングに悩む方は多いでしょう。
内定が出ないうちに伝えても良いですが、引き留めに合ったり、それ以降の業務で居心地が悪くなったりしてしまう可能性もあります。
「どうせ辞めてしまう、必要以上に気を遣う必要のない人」と認識されて、周囲の態度が変わらないとも限りません。
もちろん、突然退職を伝えて職場に迷惑がかからないようにと配慮したい気持ちもわかります。
ただ、お伝えしたようなリスクのことも考慮して、内定が決まってから伝えるという方法もあるということを知っておくと良いでしょう。
再就職情報の届出を提出する
内定が決まり退職の意思を伝えた後は、いくつかの手続きを行う必要があります。
手続きの詳細についてはこの後の「国家公務員を辞める際に必要な手続き」の項目で解説していますのでここでは簡単に触れておきます。
再就職情報の届出とは、国家公務員の再就職の透明性を確保するために必要なものです。
この届出の提出は義務ですので、しっかりと記入し提出しましょう。
辞職願の提出
公務員の場合は退職願ではなく辞職願を提出します。
一般的な会社員の場合は退職願や辞職願を出さないこともありますが、この場合は必ず出すようにしましょう。
辞職願を誰に提出するかについては、総務や人事の方に相談すると良いでしょう。
退職届・退職手当金受給に関する申出書を共済組合へ提出
人事が用意してくれる必要書類を記入し、手続きを進めていきます。
中には転職先の配属が決まらないと記入できない項目などもあり、提出が遅れる書類が出てくる可能性があります。
しかしながらこちらの手続きは退職金を受けとる時期にも影響してきますので、可能なら早めに提出したほうが安心です。
転職に向けた準備(部屋探しや有休消化等)
以上の手続きを踏むことで、後は転職に備える時間とすることができます。
とはいえ有休が使えるかは実質状況次第ということもあるでしょうし、慌ただしく時間が過ぎていくかもしれません。
しかし、最後と思ってやり切ることで、きっと次の仕事も勢いづけていけることでしょう。
国家公務員を辞める際に必要な手続き
国家公務員を辞める際に必要な手続きには、下記のようなものがあります。
- 再就職情報の届出の提出
- 辞職願の提出
- 退職届・退職手当金受給に関する申出書を共済組合へ提出
中でも「再就職情報の届出の提出」は国家公務員ならではという印象がありますね。
「再就職情報の届出」の届出事項は下記のようになっています。
⒈ 氏名 ⒉ 生年月日 ⒊ 官職 ⒋ 約束前の求職開始日 ⒌ 再就職した日 ⒍ 約束前の求職開始日以降の職員としての財関状況及び職務内容 ⒎ 離職予定日 ⒏ 再就職予定日 ⒐ 再就職先の名称及び連絡先 ⒑ 再就職先の業務内容 ⒒ 再就職先における地位 ⒓ 求職の承認の有無 ⒔ 官民人材交流センターによる離職後の就職の支援の有無 ⒕ 官民人材交流センターの援助以外の離職後の就職の援助を行った者の氏名又は名称及び援助の内容 |
最後の「官民人材交流センターの援助以外の離職後の就職の援助を行った者の氏名又は名称及び援助の内容」以外の項目はすべて公表事項となります。
また、再就職の約束をした後、1週間以内にこの「再就職情報の届出」を任命権者に届ける必要がありますので覚えておきましょう。
コツや強みを活用して有利に転職活動しよう
国家公務員から地方公務員へ転職するコツや、転職するメリット・デメリットについて紹介しました。
国家公務員から地方公務員への転職は難しいというイメージもある一方、民間企業から転職する人と比べて有利な点もあります。
今回紹介したポイントを押さえ、理想の職場とのご縁につなげていただけたらと思います。