在宅ワークで労災は適用されるのでしょうか。
家で仕事中に負傷や災害が発生した場合は、労働者災害補償保険法に適用するのか気になりますよね。
業務の内容によっては怪我の恐れがあるため、在宅ワークで働いている人はチェックしましょう。
在宅ワークで労働災害補償保険法が適用される事例と、利用方法についてまとめました。
目次
在宅ワークで労災が適用できる要因は?
在宅ワークで労働災害が認められるのはどのような場合かくわしく紹介します。
まずは労災の基本的な要件から確認しましょう。
労災とは
労災とは会社に雇用されている労働者が仕事や通勤中のアクシデントによって、病気にかかったりケガをしたり、障害を負ったり死亡したりすることです。
仕事中の労災は業務災害といい、通勤中の労災は通勤災害といいます。
労災が起きた場合は労働基準監督署による認定を受けることで、労災保険から補償の支払いを受けられます。
在宅ワークでの労災適用は業務遂行性・業務起因性がある場合
在宅ワークに関わらず、労災が認められるためには以下の2の要因を満たさなくてはなりません。
- 業務遂行性
- 業務起因性
在宅ワークの労災適用における業務遂行性
業務遂行性は事業者と労働者の労働契約のもと、労働者が事業者の指揮命令下にある状態をいいます。
業務遂行性は、労災が発生したときに労働者が事業主の管理で業務にあたっていたか、ということがポイントです。
在宅ワークの労災適用における業務起因性
業務起因性は、業務と労災の間に相当の因果関係があることをいいます。
事業主の支配下で業務に当たっている場合は、特別な事情がない限り業務起因性の要件を満たすでしょう。
ただし、業務とは無関係な私的行為や第三者からの暴行などで発生した災害は、業務起因性はないと考えられます。
在宅ワークで労災が適用できる例
在宅ワークも業務遂行性業務起因性の要件を満たす場合は労災にあたりますが、どのような場面で労災認定がおりるのでしょうか。
在宅ワーク中に労災が適用できる具体例をチェックしましょう。
在宅ワーク中にトイレへ行って転んでケガをした
在宅ワークの就業時間中であれば、事業者の支配下にある状態です。
したがって業務遂行性の要件は、クリアします。
トイレは生理行為となるため、業務に付随する行動として扱われるでしょう。
業務起因性の要件も同時に満たすため、労災に当たる可能性は高いです。
在宅ワーク中に子どもの投げた物でケガをした
在宅ワークであっても、就業時間中は事業主の支配下にいる状態です。
基本的に業務遂行性の要件は満たします。
社員の家庭に子供がいるという状況が想定できるので、業務中に子供の行動によって負傷する危険性を企業は理解しているでしょう。
この場合は業務起因性も認められるため、労災に当たると考えられます。
在宅ワークでオフィスへの移動中にけがをした
在宅ワーク中の社員がオフィスへ移動するときの労災については、通勤災害に該当するかがポイントです。
以下の3点を、確認しましょう。
- 住居と勤務場所との間の往復で起きた
- 勤務場所から他の就業場所への移動中
- 住居と勤務場所の間に先行し、あたは後続する住居間の移動
通常の経路での移動中に交通事故にあった場合は、通勤災害と判断され労災適用の可能性があります。
日用品の買い物のために寄り道をした場合も、通常の経路に戻ってからの災害は、やむを得ないものと認定されれば労災にあたります。
在宅ワークの出張中にけがをした
在宅ワーク中に出張をした場合は、事業主の支配下と考えられます。
出張期間は食事や宿泊といった私的行為を行いますが、積極的なプライベートの場面を除いて、出張に伴う行動として業務遂行性が認められるでしょう。
出張中は業務を果たすために通常の勤務場所を離れているため、労災と判断される可能性は高いです。
出張で宿泊したホテルの浴室で転倒し、怪我を負った場合も労災適用が考えられます。
在宅ワークで労災が適用されにくい例
在宅ワークで労災が適用されにくい例をまとめました。
実際にトラブルが起きてしまった場合は、業務遂行性や業務起因性によって判断されるので、あくまで例として受け取ってください。
在宅ワークでひどい腰痛を患った
結論から言うと、在宅ワークで腰痛が発生しても、労災として認められる可能性は低いでしょう。
在宅勤務は、無理な姿勢で作業した結果腰痛が発生することがあります。
しかし、厚生労働省が定めている腰痛の労災認定事項を満たさなければ、労災と認定されません。
災害性の原因による腰痛
- 腰の負傷、または負傷の原因となった急激な力の作用が、業務中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること
- 腰に作用した力が腰痛の発症の原因になった、または腰痛の既往症や基礎疾患を著しく悪化させたことが医学的に認められる
災害性の原因によらない腰痛の事項
- 約20kg以上の重量物や重要のことある物品を繰り返し中腰の姿勢で取り扱う仕事
- 毎日数時間程度、腰にとって極めて不自然な姿勢を保持して行う業務
- 長時間立ち上がることができず同じ姿勢を持続して行う業務
- 腰に著しく大きな振動を受ける作業を継続して行う業務
以上の要件を満たす場合は労災と認定されます。
在宅勤務で腰痛が発生してもパソコン作業が中心となり、災害性や災害性の原因によらない腰痛とは判断されにくいでしょう。
休憩時間中にコンビニに行ったら交通事故にあった
休憩中に仕事から離れているときのケガは、事業主の支配下や管理下にはあたりません。
仕事を続けるために昼食の買い物に行って事故にあっても、労災認定は難しい可能性があります。
在宅ワーク中に子どもの面倒を見てケガをした
仕事を離れて育児をしている時に負ったケガのため、業務の遂行や業務の起因にかかわる事実は認められません。
急に子供が泣き出したり騒いだりしても、在宅ワーク中の仕事には関係ないため労災とは判断できないでしょう。
在宅ワークの就業時間外に業務をしてケガを負った
事業主に申請していない時間の業務は就業時間外になるため、怪我と業務との関係を証明することが難しいです。
在宅ワークの就業時間が終わった後に自己判断で仕事を続けても、怪我をした場合は労災とは認定されにくいでしょう。
在宅ワークの労災認定にかかわる3つの注意点
ここからは在宅ワークの労災認定に関わる3つの注意点を解説します。
以下の3点は、在宅ワークならではのポイントなのでチェックしましょう。
- 在宅ワーク中とプライベートの時間の区別が重要
- 在宅ワーク中の労災認定は勤怠の記録が大切
- 在宅ワーク中の労災認定は就業場所に気を付けよう
オフィスで働く際に怪我をした場合と比較すると、とくに注意したいことがあります。
1.在宅ワーク中とプライベートの時間の区別が重要
在宅ワーク中は、プライベートとの切り離しが難しい人もいるのではないでしょうか。
労災認定には以下の2点が重視されます。
- 労働者が事業主の指揮命令下に置かれていたか
- 負傷が業務に起因するものか
厳格に判断されるため、以上の2つを満たしていなければ労災認定がされにくいでしょう。
ほかにも、在宅ワーク中のケガは、業務遂行性業務起因性を証明するための根拠や十分な説明がなければ労災とは認められないことがあります。
2.在宅ワーク中の労災認定は勤怠の記録が大切
在宅ワークは、労働者は事業主の物理的な管理下にあるとはいえません。
労災が起きた場合の「事業主の支配下にあったか」については実際の就労状況を判断されます。
労災認定を受けるためには業務報告の記録や、勤怠管理システムメールの送受信記録などが重要です。
在宅ワーク中の負傷で労災の認定を受けるために、記憶を保管しておきましょう。
3.在宅ワーク中の労災認定は就業場所に気を付けよう
在宅ワークを行う場所を、会社から指定されることがあります。
もし指定場所以外で勤務していた場合は、会社の指揮命令下にあったことが判断されにくく、労災の認定でマイナスに働いてしまう可能性があるでしょう。
例として「在宅ワークの場所は自宅とする」といった指示に関わらず、自分の判断でカフェで作業をすることは危険です。
就業指定場所以外での勤務は労災認定の際に、マイナスの印象を与える可能性があるため注意してください。
在宅ワークで労災を利用する方法
在宅ワークで労災を利用する方法は、基本的に労働者が個人で行うことはありません。
在宅ワーク中の事故で負傷し、労災保険を受けるためのポイントをまとめました。
労災保険の申請は会社に相談しよう
労働者が労災保険の申請をする場合は、会社の上司に相談しましょう。
総務や人事などの担当部署が対応するので、労働者が申告書を記入したり提出することは基本的にはありません。
ただし、労働基準監督署によって労災の調査が行われるため、協力を求められたときは積極的に対応してください。
健康保険ではなく労災保険を治療に利用する
労災の治療には、健康保険ではなく労災保険を利用しましょう。
火災保険は健康保険に比べると、以下のように補償内容が手厚いです。
- 医療費が全額補償される
- 休業期間の補償が受けられる
- 障害や後遺症が残ってしまったときの補償が受けられる
- 死亡した時は遺族への補償や葬儀費用などが補償される
健康保険を使用することにより、保証が受けられなくなる危険性があります。
誤って健康保険を使用した場合は、労災保険への切り替え手続きが必要になります。
受診した医療機関に労災対象にも関わらず健康保険を使用したことを伝えて、切り替えの指示をあおいでください。
在宅ワークで労災を利用するために勤怠記録をつけよう
在宅ワークで労災を利用するためには勤怠記録が重要です。
労災認定のためには、業務遂行性と業務起因性の要件を満たす必要があります。
労働基準監督署による認定を受けることで、労災保険から各種補償の支払いがあります。