「キャリアアップのために転職は考えているけれど、妻子がいる。もう30~40代、年齢的にも、転職で失敗はできない」「結婚を控えているので、転職で失敗したくない」等々……転職前には今抱えている仕事の悩みだけでなく、プライベートのもろもろを巻き込んだ大きなプレッシャーをも抱えている人が多いのではないでしょうか。
失敗のリスクを減らすためには、前もって失敗例から学ぶのも1つの方法です。
転職の失敗には「巡り合わせが悪かっただけ」のケースも多々あるのですが、「ここに気をつけていればあるいは事前に防げたかもしれない」と思えるものもあります。
転職に失敗したポイントや理由・失敗を事前に防ぐ解決策のほか、過去の失敗を活かして「転職を成功させる人」になるにはどうすればよいのかをまとめました。
キャリアアップ転職の失敗例あるあるから学ぶ!失敗する人の7つの「失敗ポイント」は?
①「なんとなく」転職している
「なぜ転職するのか・転職して何をしたいのか」「他は駄目でも納得するけれど、これだけはゆずれないということは何なのか」はっきりさせないまま転職してしまった場合、早い段階で、「転職で得られたこと」よりも「失敗」を強く感じてしまうことが多くなります。
転職後すぐは新しい会社のやり方に慣れていないので、うまくいかないのがむしろ当たり前。周囲の人間関係にもまだ十分なじんでおらず、孤独感の中で慣れない仕事の悩み・つらさにさらされます。
「転職した動機」「転職で得たいと思っていること」が自分の中ではっきりしていない場合、「前の職場の方が今より良かった」など、得たものより失ったものに焦点を当ててしまい、最初のスタートアップのつらさを「転職の失敗」と感じてしまうことになりがちです。
②「未経験の業種」に「準備なし」で飛び込んでいる
「労働時間や給与などの条件だけを見て未経験の異業種を選んだけれど、右も左もわからず、職場でできることがない。結果的には、もう一度転職しなければならなくなった」などのケースです。
仮に募集要項では「未経験可」と書いてあったとしても、中小企業などではどうしても人手が足りず、実際には現場で十分にOJT(職場で仕事をしながらの教育訓練)がなされる余裕がないこともあります。
短期間であわただしく引き継ぎをした後、教えてくれる人が誰もいなくなってしまったり、教えてくれるはずの人が忙しくて指導の手が回らず、雑用をしながらずっと待機状態のまま、ということも……。
「未経験の業種」に飛び込むのには、注意が必要です。
③自分の「適性」と合わない仕事を選んでいる
大抵の人には「この分野では何でも楽しく成果が上がり、努力すら苦にならないけれど、この分野は努力をしても努力が実りにくい」という得手不得手があります。
たとえば「実は人と接するのがとても苦手なのに、常に密接に人と関わらなくてはいけない仕事を選んでしまった」としたら……日々ストレスフルな状況に直面しなければならないですよね。
自分の適性を考慮に入れずに給与や待遇などの条件だけで苦手な業種を選んでしまうと、ストレスがたまるだけでなく、成果がなかなか上がらないので評価されにくく、会社にも居づらくなってしまいます。
ただし、自分で合わない仕事を「選んだ」わけではないけれど、最初は自分に合った仕事をしていたのに、部署の移動があったり、抱える仕事が増えたりした結果、苦手な仕事をしなくてはならなくなった……というケースもあります。
④働いてみたら「労働条件」が聞いたものと全く違っていた
事前に聴いていたのと少し方針が違う、というくらいなら実はよくあることなのですが、「給与が最初に明示された金額より少ない」「サービス残業が多く、労働時間が長い」「仕事内容が違う」など、労働条件が全く違っていることも。
⑤「やりがい」が感じられない仕事だった
「仕事量があまりにも少なく、楽ではあるけれど、時間を持て余してしまう」「仕事内容にやりがいを感じられない」などのケースです。次の職場に移る前に「自分は何にやりがいを感じるのか」「やりがいをその他の条件よりも優先するかどうか」などを明確にしておくことが必要です。
⑥「社風」が自分に合わない
「入社してみたら体育会系の社風で、家族的な濃い人間関係が形成されており、アフター5のつきあいが当たり前」「上下関係が厳しい」など、「社風が自分には合わなかった……」と感じるケースです。
逆に、社内の人間関係が薄く、「同僚や上司と接点がない」「仕事の相談がしたくても、コミュニケーションがとれない」ことに不満や寂しさを感じる人も。
同じ環境にいても居心地よくすごせる人もいれば、合わないと感じる人もいるので、会社との相性次第です。
⑦「人間関係」がうまくいかない
転職先で上司や同僚とうまくいかず、「適切に評価されない」「なじめない」ストレスで苦しみ、「前の職場の方が円満だった……」と後悔するケースです。
転職者の離職理由でも「人間関係のつらさ」は上位4位にランクインしています。
キャリアアップ転職で失敗しないためには? 事前にできる5つの対策
①実は6割の人が「していない」! 情報収集や準備活動を忘れない
「自分に合う環境かどうか」には、お互いの相性もあります。入社してみないとわからない部分はどうしてもありますが、入ってから後悔したくないですよね。
事前に徹底的な情報収集をしておきましょう。
実は、厚生労働省の平成27年度の調査によれば、転職前に情報収集や資格取得などの準備活動を行う人は31.2%。一方、「特に何もしていない」人が61.6%に上ります。
周到な準備をしておくことで避けられる失敗もあるので、少しでも転職の成功率を上げるために、事前の情報収集には時間を使っておきたいところです。
つてを頼って「同じ業種に勤めていた人」の話を聞いてみるだけでも、大まかな働き方の流れを知ることができたり、特有の価値観や雰囲気がつかめたりします。
また、「転職会議」など、ネット上の口コミサイトで退職者のコメントを参考に「社風」を知るという手も。面接時も社内の雰囲気を知るチャンスです。
②自己分析は徹底的に……「適職診断を受けた方がいい人」はどんな人?
忙しい中で時間や心の余裕もなく転職活動をしなければならない人も多く、そんな状況で意外とおろそかになりがちなのが「自己分析」です。
「自分のことは自分が一番わかっている」と思っていても、自分が「したいこと」と「できること」のギャップが明確になっていなかったり、自分の「適性」を見極められていなかったり、わかっていても「とりあえず仕事につかないと」という焦りから無視してしまったり……。
特に「自分の職歴を見返してみた時に、職種がバラバラである」「前職の仕事内容は、明らかに自分に向いていなかったと思う」「ずっと希望の職種に応募しているのだが、なかなか採用されない」という人は、一度は適性・適職に関する診断を受けてみることをおすすめします。
ハローワークにはパソコンを使った適職診断「キャリアインサイト」を導入しているところもあります。
また、ハローワークのイベントなどで「GATB」と呼ばれる職業適性検査が受けられることも。こちらは職業に必要とされる9つの能力を検査することで自分の「できること」を測り、どの職業に適性があるかを導き出すものです。
「興味がある・したいこと」「できると思ったこと」と「できること」が必ずしも一致していなかったり、意外なところに自分の「得意なこと」が発見できたりするので、自分の「できること」「向き不向き」を客観的に把握したい時におすすめの検査です。
(※ハローワークでの「キャリアインサイト」「GATB」導入は自治体によります。イベントなどは申し込みが必要なこともあるので、事前に問い合わせてみてください。)
ハローワーク所在地情報:https://www.hellowork.go.jp/info/location_list.html
③優先順位をはっきりさせる
「転職において大事にしたいこと」の優先順位がはっきり自分でつかめていない場合、自分の求めているものや必要なものが自分でもわかっていないので、「とりあえずの採用」を目指しているうちに、「自分の満足できる転職」から遠ざかってしまう……ということになってしまいがちです。
「やりがい」「人間関係」「お金」「ワークライフバランス」などなど、大事にしたいことはいくつもあり、そのどれも大切でないとはいえません。しかし、「すべてにおいて理想的な職場」はやはりなかなか望めないもの。
「新しい職場に求めるものの優先順位」がはっきりしていて、優先順位の高い条件のいくつかに満足ができていれば「失敗」とは感じずにすみますし、希望が明確であればあるほど、望み通りの転職が叶えやすくなります。
「どれも大事だから選べない」と思う場合、「最悪、これがなくても我慢する」と思う条件がどれかを考え、消去法で選ぶのもおすすめです。
④未経験の業種に飛び込む時は、周到な事前準備を
未経験の業種に飛び込むのには慎重に。でも、それがもしどうしても叶えたい夢のためならば、事前に周到な準備をしておくことをおすすめします。
未経験の業種に飛び込む前には、自分で関連資格を取得しておいたり、独学できる分野ならば、テキストなどを購入して勉強しておくのもいいかもしれません。
また、実際にその業種で働いている人に話を聞いて「仕事の流れ」をつかむ・ネットなどで情報を集めて「この仕事に就くことでどのように生活パターンが変化し、どのようなストレスや悩みを持つ可能性があるか」を事前にイメージできるようにしておくなど、できる限りの情報収集を。
その業種に就いた後のイメージを前もって持っておくと、「こんなはずじゃなかった」という入社後のギャップが少なくなります。
⑤「労働条件通知書」を交付してもらう
会社が労働者に「書面で労働条件を明示すること」は、労働基準法第15条により、義務として定められています。
もし提示されていたものと実際の労働条件が異なっている時は、労働者は、即時に労働契約を解除することができます。
「話が違う!」というトラブルは起こってほしくないものですが、いざ実際に起こった時に確認・証明できるように、事前に「労働条件通知書」を書面でもらって確認しておく必要があります。
労働者側から求めるまでもなく会社が書面で交付してくれることがほとんどですが、もし何もなかった場合は、きちんと交付をしてもらってください。
また、なかなか交付してもらえないなどのトラブルがあるなら、それを「入社すべきかどうか」の判断材料にした方がよいかもしれません。引き返せるうちに引き返した方が傷が浅くすむ場合もあります。
書面での交付が定められているのは次の6項目です。
「書面で交付することが定められている6つの労働条件」(※就労規則とは異なります)
- 契約期間
- 期間の定めのある契約について「更新があるかどうか」「更新の際の判断基準」
- 就労場所・仕事内容
- 労働時間・休日・休憩時間の詳細
- 賃金の計算と支払い方法・締め切りと支払い時期
- 退職についてのきまり
また、「経営不振だからと給料を合意なしに下げる」など、「労働条件を勝手に不利なものに変える」行為も許されていません。(労働契約法第9条)
ただ、黙っていると合意があったと見なされてしまうので、まずは会社に問い合わせをし、「総合労働相談コーナー」「労働基準監督署」などで相談を。
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
一度の失敗が「人生の終わり」ではない!
転職を失敗してしまうと、「人生の終わり」かのように感じてしまい、どうしようもなく落ち込んでしまう……ということもあるかもしれません。
でも、できる限りの情報収集をつくしていても、入社前にはわからない部分があります。会社との相性が悪かった、ということもあります。相性ならば、運が悪かっただけとも言えますよね。
もし「もう少し考えてから転職していれば……」と後悔しているとしても、その経験から学べることもあったはず。
“成功する人は、失敗から学び、別な方法でやり直す。”
という言葉があります。米国の実業家であるデール・カーネギーの名言ですが、同じ失敗を繰り返さないよう「失敗ポイントをしっかり振り返り、改善すべき点を行動に移せる人」こそが、転職の失敗を活かし、「成功する人」に変われる人だと言えるのではないでしょうか。
落ち込みも失敗も糧に変え、次の成功を勝ち取るための一歩を踏み出していきましょう。よい転職活動を!