はじめまして、『薬剤師ときどき父(やくちち)』と申します。
大学を卒業して調剤薬局一筋。14年目の薬剤師です。
前半部分では『調剤薬局の仕事内容』、後半部分では『調剤薬局でのやりがい』について書きたいと思います。
目次
調剤薬局はどんな仕事?
今まで『調剤薬局で一度もお薬をもらったことがない』という人は少ないかと思います。
日本薬剤師会によると2018年度の医薬分業率は74%と言われており、調剤薬局にお世話になったことがある人の方が多いのではないでしょうか?
調剤薬局のイメージというと、病院や診療所などで発行された処方箋を持って行き、お薬を調剤してもらう場所だと思います。
確かに、調剤薬局で勤務していて一番多くの時間を費やしている業務は処方箋による調剤だと思います。
処方箋を受け付けて、処方内容のチェック、薬を取り揃え確認して、患者さんに説明を行う。
ただ、処方箋どおりに薬を調剤しているか?というと最近の調剤薬局は少し異なっています。
処方箋の内容が適切かチェックする
1つ目は処方箋の内容が適切か?のチェック機能です。
複数の病院を受診している患者さんの場合、お薬手帳で服用しているお薬の情報を、それぞれの処方医に伝えるのが一般的です。
しかしお薬手帳を忘れてしまったり、医療機関ごとにお薬手帳を作成していて、服用しているお薬を知らずに一緒に服用してはいけない薬、同じ薬を処方されてしまうケースがあります。
調剤薬局で服用している薬を把握している場合には、処方医に連絡し処方変更になることもあります。
また最近では大学病院や広域病院では処方箋に体重・身長・血液検査の検査値などが記載されていることがあります。
肝機能や腎機能によってお薬の用量を調整する必要があります。
実際に抗がん剤などを調剤する場合には処方箋に記載された身長と体重から体表面積を計算し、用量が正しいかチェックしたことがあります。
もちろん、医師が処方する段階で検査値を考慮して処方していますが、処方箋に検査値が記載されることで調剤薬局で処方された薬の用量が正しいか?をダブルチェックすることができます。
ジェネリック医薬品の検討
2つ目はジェネリック医薬品の検討です。
医療費を削減すべくジェネリック医薬品で調剤するように国も強く働きかけています。
調剤報酬の中にも『後発医薬品調剤体制加算』という加算があり後発医薬品をどれだけの割合調剤したか?という指標で評価されています。
後発医薬品の調剤割合が75%以上だと18点(180円)、80%以上だと22点(220円)、85%以上だと26点(260円)が処方箋1枚あたり算定できます。(2020年○月時点)
この加算が算定できるか出来ないかで、薬局の経営に大きな影響を与えるのです。
日本ジェネリック製薬協会によると、令和元年度第 1 四半期(4 月~6 月)のジェネリック医薬品の数量シェア分析結果(速報値)は75.8%とされています。
先発品の特許が切れると、大型製品の場合には20社以上のジェネリック医薬品が発売されます。
メーカーごとに製剤的な特徴・販売包装・納入価格が異なり、数多く発売されるジェネリックメーカーの中で勤務する薬局に最適な1社を検討するのも、年に2回の収載前には恒例となっています。
個人的に粉薬や口腔内崩壊錠(OD錠)の味見をして、ブログに書いていますが、同じ成分でもメーカーによって本当に味が異なります。
『A社であれば飲みやすいけれど、B社だと苦くてお子さんは嫌がるかもしれないな・・・』と感じることも数知れずです。
だからこそ、採用するジェネリックメーカーにも出来るだけ拘りたいと思っています。
在宅医療への取り組み
3つ目は在宅医療への取り組みです。
高齢化が進み患者さん自身で病院を受診できなくケースが発生します。
そうすると、医師が往診し処方箋を発行、調剤薬局がご自宅や施設まで訪問し、お薬の説明や管理などを行う在宅業務を行うことがあります。
調剤薬局が行う在宅は大きく分けると介護認定を受けている患者さんに行う『居宅療養管理指導』、介護認定を受けていない患者さんに行う『在宅患者訪問薬剤管理指導』の2つになります。
特に、高齢者の場合には飲み間違えたり飲み忘れてしまったりすることも多くなります。
飲み間違えないようにお薬を飲み方ごとに一包化する必要があるかもしれません。
また、錠剤が飲みづらくなっている場合には口の中で溶ける口腔内崩壊錠や粉薬を選んだり、場合によっては錠剤を粉砕することでお薬を飲み込めるようにする必要があります。
特に粉砕する場合には粉砕後の安定性や味・口腔粘膜への刺激性などを総合的に考慮して調剤を行います。
在宅だけではないですが、飲み忘れて残ってしまったお薬は次回以降の処方で日数調整することで、患者さんの自己負担金(お会計)を安くすることができますし、医療費削減にも貢献できます。
調剤薬局での仕事のやりがいとは?
後半では調剤薬局でのやり甲斐について触れたいと思います。
周囲と協力しながら患者さんの「困った」を解決する
薬剤師免許を使う仕事の中で一人の患者さんと長く付き合っていくのが調剤薬局の薬剤師だと思います。
慢性疾患を抱える患者さんとの付き合いは年単位に及びます。
付き合っていく期間が長くなるので先ほど触れたように、外来を受診をすることが難しくなり『在宅』に切り替わるかもしれません。
その患者さんのライフスタイル(健康な時の職業、食生活、生活リズム等)を知っているからこそできるアドバイスがあるかもしれません。
往診の患者さんの処方箋を受けると、色々な医療関係者さんと連携を取ることになります。
往診を行う医師、訪問看護師、ケアマネージャー、施設であれば施設の看護師・介護士など。
一人の患者さんを色々な視点から見ることができるので、本当に勉強になりますし、他の職種の方から薬に関する質問を受けた時にしっかりと答えられ、感謝されると嬉しいです。
また、患者さんの『困った』を解決できた時にもやり甲斐を感じます。
調剤薬局には毎日たくさんの患者さんが来局されます。
普段の会話から患者さんの「困った」を汲み取り解決する
口では言わないけれど、実はお薬を上手に使えていない患者さんは多いのです。
例えば、皮膚科で軟膏(ステロイド)が処方された患者さんが来局したとしましょう。
処方箋には製品名や成分名、1日に塗る回数・使用する部位なども書かれています。
さて、使用する部位が『背中』だとしたらどんな風に説明しますか?
薬剤師さんによって色々なアプローチの仕方があると思いますが、その中で1つ患者さんに聞いてみたくなるのが『ご自身でお薬塗れますか?』という質問です。
ご家族の有無、使用する部位、年齢などによって異なりますが、独居・高齢の患者さんで背中の中央部分が患部だと、ご自身ではでが届かずに塗れないですよね?
では、ご自身で塗れない場合にはどうしたらいいんだろう?と考えます。
今回のようなケースならば、孫の手タイプの塗り薬補助器具(セヌールなど)を提案するのも良いかと思います。
画像の青い部分に軟膏を塗っておいて、孫の手で背中を掻くように軟膏を塗布することができます。
価格も約400円とリーズナブルですし、勤務する薬局では商品のサンプルも手に取れる場所に置いてあり、実際に手にした患者さんは『これどうやって使うの?』とか『これ、欲しいと思ってた!』と仰る方が非常に多いです。
患者さんと会話をする中で、患者さんの『困った』を汲み取り、解決へと導く時もまた非常にやり甲斐を感じる瞬間だと思います。
調剤薬局は元MRの人も多く活躍している
実は調剤薬局で輝いて働いている人の中には元MRさんという方が少なくないのです。
実際に『僕、この商品を昔売っていたんです。こうやって処方されているのを見ると嬉しくなります』という薬剤師さんがいらっしゃいました。
MRさんは医師や薬剤師と話す機会が多く、人とコミュニケーションを取ったり、短い時間で大切な要件を話すことに慣れているので、患者さんの対応が上手が方が多いような気がします。
また、フットワークが軽い方が多く、何か問題が発生した時に、いきなり『出来ません』と言わずに『どうしたら出来るだろう?』と考えて対応している姿をよく見かけます。
慣れるまでは大変なこともありますが、地域に密着し患者さんに頼られる調剤薬局の薬剤師もやり甲斐のある仕事だと思っています。