日本における高齢化や人口減を見据え、年金受給年齢や定年再雇用制度の見直しがされています。
定年の廃止や70歳までの就業の延長に向けて改革が行われるなか、定年がない税理士の平均年齢はますます上がっており、50歳を過ぎてから税理士として活躍する方も多いようです。
ここでは、50代の税理士の転職事情や年収、転職を成功させるためのアピールポイントを紹介しています。
年齢を理由に転職をあきらめる必要はありませんので、最後までじっくり読んでみてください。
目次
50代の税理士は転職できるのか?
税理士の平均年齢はおよそ65歳です。65歳といえば一般的には定年の年齢ですが、なかには80歳を超えて活躍している税理士もいるため、50代での転職を遅いと感じることはありません。
税理士の仕事はこれまでの経験が重要視されるので、「今まで積み上げてきた経験をうちで活かしてほしい」と考えている事務所や企業は多く存在します。
50代の税理士の転職事情
税理士の求人では20代や30代の若手層に向けたものが多いのですが、50代以降を求める声も決して少なくありません。
経験値の高い50代の税理士を、積極的に採用していこうという法人は増加傾向です。
採用活動が活発な理由としては、人手不足が挙げられます。
士業のなかでも税理士業界はとくに不足しており、採用のハードルが下がってきているのも事実です。
ただし人手不足であっても専門性の高い職種なので、転職希望者の仕事に対する姿勢や人柄は厳しく判断されます。
50代に求めるものとは
近年では税理士事務所から事業会社の経理部門への転職も盛んです。
事業会社の経理部が50代の税理士に求めるものは、経理部門をまとめるリーダーとしての力と、専門的な知識で社長や上層部に進言できるバイタリティーです。
業績が右肩上がりの中小企業では、従業員の増員や売り上げの増加に伴い、税務の知識がある経験者は重宝されます。
経理部門の管理職を皮切りに、いずれは経営企画や管理部門長としてのキャリアアップが見込めるでしょう。
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50代の税理士が転職で有利になるポイント
50代の税理士が転職活動をする上で、若手と比較し有利になるポイントを紹介します。
即戦力
50代であれば多くのクライアントと関わり、これまでさまざまな案件に携わってきた経験があるでしょう。
そのため即戦力を募集している求人を狙うと、採用される確率が高いです。
とくに小さい事務所であれば、1人の職員がいなくなると残った職員の仕事量が膨大になり、キャパオーバーしてしまいます。
そんなときに役立つのは、経験値が低い若手よりも、これまでに豊富な経験を積んできたベテランの税理士です。
ダブルライセンス
税理士の資格のほかに、中小企業診断士や社会保険労務士などの資格を持っていると採用される確率がグッと上がります。
その資格があることで業務がどう改善されるか、どのように活かせるかを面接でアピールできると尚いいでしょう。
人脈
税理士という仕事柄、さまざまな相談をされることが多いと思います。例えば保険や不動産など、専門外の相談もあるでしょう。
そんなとき、これまでに他業種との関わりやつながりがあれば、一緒にクライアントの悩みを解決し業務をスムーズに進めることもできますよね。
採用側はあなたにどれほどの人脈があるのかも期待しています。
これは社会人としての長く勤めてきた経験がものをいいますので、幅広い人脈があれば転職で有利に働くポイントのひとつになるでしょう。
50代の税理士が転職で不利になるポイント
50代であれば、これまでの経験や人脈を活かし即戦力として働くこともできますが、なかには「50代で未経験」という新人税理士もいるでしょう。
そんな方が不利になるポイントを挙げていきます。
年齢
転職において「35歳の壁」という言葉がありますが、これは35歳を過ぎると応募できる求人が減ってしまうという意味です。
税理士は専門職のため、一般の営業や技術職と比べると年齢はあまり関係ありませんが、経験が裏目にでてしまうケースもあります。
既存の社員が指示や指導をするなら、50代よりも若い方がやりやすいというのも不利な点です。
希望年収額
2つ目は希望年収の高さです。年齢に見合った報酬となると、50代はやはり高い人件費がかかります。
経験値が低くても、安い給与で採用できる人材が優先されるのはデメリットといえるでしょう。
柔軟性
偏見と思われるかもしれませんが、50代での転職は柔軟性が懸念されがちです。
これまでの仕事のやり方が染み込んでいるため、新しい職場に馴染めるのだろうか、当社のルールを吸収できるだろうかが問われます。
50代の税理士が転職でアピールすべきポイント
50代の税理士が転職で不利になるポイントを踏まえた上で、今度はアピールすべきポイントを考えていきます。
実務経験のあるなしに関わらず、面接でアピールしてほしいのは「コミュニケーション能力の高さ」です。
謙虚な姿勢で面接に挑む
「いやいや、そんなことよりも経験値の高さが重要でしょう」という声が聞こえてきそうですが、50代での転職であれば、採用側の面接官が同年代もしくはそれ以下ということも考えられます。
そんななか「私にはこれだけの経験がある」と言うと、上から目線にとらわれてしまう可能性があります。
必要以上にへりくだることはありません。
あまりに腰が低いと、それはそれで「何か隠しているのでは?」と思われてしまいます。
一から学びたいという謙虚な気持ちで面接に挑みましょう。
転職に成功する50代税理士の特徴
50代の転職成功者は、これまでの経験を活かしながらも、上層部や若手ともうまく立ち回ることができる人材です。
双方のパイプ役としての役回りも果たしながら、経営層に対し専門的な目線からものを言える税理士が重宝されます。
面接ではコミュニケーション能力をしっかりとアピールし、どんな状況においても柔軟に対応できるスキルがあることを伝えましょう。
まずは上記で紹介したような、有利・不利なポイントを押さえて、採用側の不安を払拭することが大切です。
50代税理士の平均年収
2018年に発表された「賃金構造基本統計調査」では、税理士・会計士の平均年収は892万円となっています。
職業別年収ランキングでは「1位医師」「2位パイロット」「3位大学教授」に続き4位が公認会計士・税理士でした。
年齢 | 男性平均年収 | 女性平均年収 | 男女平均年収 |
---|---|---|---|
20〜29歳 | 630万円 | 451万円 | 540万円 |
30〜39歳 | 880万円 | 721万円 | 800万円 |
40〜49歳 | 1,057万円 | 904万円 | 980万円 |
50〜54歳 | 1,173万円 | 1,081万円 | 1,135万円 |
55〜59歳 | 783万円 | 723万円 | 759万円 |
60〜69歳 | 762万円 | 443万円 | 602万円 |
70歳〜 | 616万円 | – | – |
50代前半の平均年収は1千万円を超えており、高収入の職業であることは一目瞭然です。
ただ後半になると年収が一気に落ちているのが気になります。
開業する税理士のなかには、年収が300万円以下の税理士が31.4%もいることが分かっており、それが年収を下げる要因のひとつとして考えられます。
独立して2,000万、3,000万円と稼ぐ税理士もいるなか、経営状況が苦しい税理士も多く存在するのです。
50代税理士におすすめの転職先
50代の税理士におすすめの転職先は次の通りです。
- 税理士事務所
- コンサルティングファーム
- 一般事業会社の経理・財務部門
1. 税理士事務所
転職先を考える上で押さえておきたいのが、税理士事務所の高齢化問題です。
税理士の平均年齢が65歳というのはお伝えしましたが、社員税理士よりも事務所を率いる所長の年齢が高齢化しており、これから事業継承問題が発生すると予測されます。
そこで職員のマネジメントや経営を任せられる、50代のベテラン税理士を迎えたいという声が増えてくる可能性があります。
2. コンサルティングファーム
コンサルティングファームのクライアントは大規模な企業であるケースが多く、経営全般に関する知識やマーケティングなど、税務以外の知識と経験が必要になります。
またコンサルティングファームでなくとも、コンサルティング業務を行っている税理士は大勢いますので、自分がやりたいコンサルティングのイメージを明確にしておくことが大切です。
どんな顧客にどのようなサービスを提供していきたいのか、コンサルティングという言葉の響きに惑わされることなく就業先を選択しましょう。
一般事業会社の経理・財務部門
事業会社といっても、上場企業や外資系企業、金融機関など幅広い選択肢が広がっています。
募集している部門もさまざまですので、対顧客のポジションでアドバイザーとして活躍していきたいのか、バックフロントで会社を支えていきたいのかによっても変わってくるでしょう。
多くの大手企業ではジョブローテーションがありますので、さまざまな部署で色んな職種の社員と関わりを持ちながら働くことができます。
これは税理士法人にはない魅力ではないでしょうか。
外資系であれば、海外の部門とのやりとりや日本法人の決算対応、本国へのレポーティング業務などがメインになってくるでしょう。
ただし一定の英語力は必要になります。
まとめ
50代で税理士に転職される方へ、転職を成功させる秘訣やアピールするべきポイントを紹介しました。
税理士においては50代での転職も珍しくなく、資格がある限りは働き続けることが可能な職業です。
しかし転職後のミスマッチを出来るだけ避けるため、事前の情報収集は怠らないよう注意しましょう。
新しい職場において、これまでの経験を活かし、手腕を発揮できるよう応援しています。