ADHDの仕事は、どのようなことに気を付けて選べばいいのでしょうか。
特性ごとに向いている仕事と、その特徴をまとめました。
苦手なことに気を付けて仕事に就けば、長く働き続けられるでしょう。
仕事を選ぶときは業務の内容だけでなく、働く環境も重要です。
ADHDの人は、特性がトラブルになりにくく興味を活かせる仕事を探しましょう。
ADHDが仕事を選ぶときのポイント
ADHDの仕事選びには、気をつけたいポイントがあります。
特性や困りごとがあっても問題なく仕事ができる職種を選びましょう。
転職や就職の際は仕事内容だけでなく、働く環境もチェックしてください。
困りごとに注意
ADHDは多動性や衝動性、物事への不注意などを特徴とする脳の特性です。
- 行動や考えを制御する機能が低下している
- 脳の一時的な記憶領域の低下により臨機応変な対応やトラブル対処が難しい
以上の特性があるため、ケアレスミスが多く集中力が続かない傾向があります。
思いついたことをすぐ言ってしまったり、物事に優先順位がつけられなかったりする事もADHDの困りごとでしょう。
他の業務をしながら、違う仕事を担当するマルチタスクが難しいことにも注意が必要です。
ADHDの強みを生かす
ADHDの強みを生かす仕事につければ、才能が開花する可能性があります。
- 自分の意思を最後まで貫く
- 好奇心の範囲が広い
- 興味関心があることは没頭して行える
- フットワークが軽く行動力が高い
- 即決力がある
特性によってはマッチする職種があるでしょう。
しかし特性と業務で求められるスキルは別物です。
特性が活かせる仕事に就くためには、業務に関わる勉強と努力は必須です。
ADHD・発達障害におすすめの仕事10選
ここからはADHDの特性ごとに、向いている仕事をまとめました。
ただしあくまで向いていると判断できるだけであって、簡単な仕事ではありません。
必ずしも、就職できる・転職しやすい仕事ではないため注意しましょう。
営業職|行動力が活かせる
営業職は行動力やフットワークの軽さが活かせます。
スケジュール調整や顧客との約束の厳守、コミュニケーションに問題がなければ営業の仕事は可能でしょう。
未経験者応募可の求人も多数あるので、自分が向いている分野の営業職を探してください。
ADHDに悩む人には、ノルマが設定されている営業職よりも、歩合制の業種の方がおすすめです。
顧客との商談のためには、商品の説明や要望に対する答えが必要です。
自社の商品の勉強やニーズのリサーチを徹底しましょう。
WEBデザイナー/コーディング|仕事に没頭できる
Webデザイナーは、自分の興味がある業務に没頭できる仕事です。
とくに、コーディングの仕事は業務の幅が広いので、飽きやすい人にも向いているでしょう。
コーディングはHTMLやCSSなどのプログラミング言語を使って、実際にサイトを構築する仕事です。
未経験者を対象とした求人も多いため、基礎的なスキルがあれば転職のハードルは思っている以上に高くありません。
Webデザイナーと一口で言っても、ディレクターやデザイン設計など高い技術が求められる職種もあるので注意してください。
イラストレーター|興味関心が活かせる
イラストレーターは、美的センスや画力をもとに、クライアントの希望に沿ったイラストを作成する仕事です。
分野に深い好奇心とスキルがあれば、活躍できる可能性があります。
ただし、ADHDの特性と業務内容がマッチするか事前にチェックしましょう。
描きたい分野以外は得意ではない、締め切りを守れない、といった特性がある人は、活躍が難しいです。
技法やデザインツールの操作をどれだけ取得しているかだけでなく、今までの成果も重要になるので、実績を積みましょう。
まずはフリーランスのイラストレーターとして、クラウドソーシングサイトで案件を担当することをおすすめします。
ITエンジニア/プログラマー|未経験者も挑戦しやすい
ITエンジニアの中でもプログラマーは、基礎的なスキルがあれば未経験者も挑戦しやすい仕事です。
ただし、ADHDの人は、特性と業務内容が合うかよく考えてください。
プログラマーはエンジニアの指導で業務を行うので、コミュニケーション能力が試されます。
納期やスケジュールは厳守が求められるため、自己管理能力も必須でしょう。
パソコンでコードを打つだけの仕事ではなく、情報収集スキルや課題解決能力が求められます。
エンジニアやプログラマーの人材の需要が高まっているので、特性がマッチすれば転職で必要以上に高いハードルを感じることはありません。
YouTuber|得意分野が活かせる
YouTuberは、ADHDの人も自分のスタイルで業務にあたれます。
得意分野が活かせるジャンルで成功すれば、仕事として確立できるでしょう。
ただし成功率は非常に低く、必ずしも安定した収入が得られるとは限りません。
最新の流行や視聴者のニーズに沿った動画の作成が必須なため、業務が負担になるおそれも考えられます。
自分の好きな時間や働き方はYouTuberになるメリットですが、職業の不安定さも考えてください。
研究職|マルチタスクが避けられる
研究職は決められたジャンルの業務を担当するため、複数の仕事を同時進行で求められる可能性が低いでしょう。
マルチタスクが苦手なADHDの人も、仕事で活躍できることがあります。
研究対象に深い興味があれば、物事を追求する能力が活かせますね。
一方で、細かく正確な作業が求められ、データ分析などの能力も必要なことに注意してください。
研究職になるためには大学や専門学校で知識を身につけた後に、研究開発や製造職に就く方法が一般的です。
経営者|スピーディーな判断が求められる
経営者はADHDの人も多く活躍しており、即決力や好奇心といった特性が活かせる役職です。
経営戦略やトライアルアンドエラーを繰り返す能力があれば、仕事のやり方は覚えられるでしょう。
特性によるトラブルが起こりづらい環境を用意できれば、経営者として手腕が発揮できる可能性があります。
ただし、ADHDに限らず、経営者として成功できる確率は非常に低いです。
「ADHDは経営者に向いている」といった考えではなく「有名な経営者にはADHDの特性を持つ人もいる」という認識を持ってください。
自動車整備士|専門知識が活かせる
自動車整備士は専門知識が活かせる仕事です。
車の構造に関して深い知識がある人は、車の整備や車検整備の仕事で能力が発揮できます。
ADHDの作業を黙々と行えて、集中力が高い特性が活躍できる業務内容です。
自動車整備士資格の取得は入社時にサポートを行っている企業もあるので、転職の際はチェックしてください。
整備士のスキルは比較的身につけやすい能力なので、得意分野への興味があれば仕事の完遂も可能でしょう。
インストラクター|得意分野が活かせる
インストラクターはコミュニケーション能力や行動力が発揮できる仕事です。
体を動かす業務がほとんどのため、デスクに座って行う作業が苦手な人にもオススメです。
スポーツや筋トレ、フィットネスなど得意なことを仕事にできるので、自分の好きな分野で活躍できるでしょう。
マルチタスクもほぼ担当することがないので、スケジュール管理がきちんとできていれば仕事に大きな支障が出ることがありません。
人と接することが好きな人は、インストラクターとしてスポーツジムや教室に勤務できる可能性があります。
スタイリスト|好きなことが活かせる
スタイリストは、個人のセンスや技術が試される仕事です。
クライアントとの約束やスケジュールを遵守して、要望に応えられる能力があれば活躍が見込めるでしょう。
ADHDの人は臨機応変な対応に抵抗がなければ、スタイリストの仕事に就ける可能性があります。
美的センスが試される仕事のため、ファッションやメイク、流行っているもののチェックは必須と考えましょう。
好きなことが活かせるスタイリストは、ADHDの適性にマッチすれば長く働けることに期待できます。
ADHDにおすすめしない職種
ADHDの仕事におすすめしないものは、マルチタスクが多かったり、ミスができなかったりする職種です。
複数の業務を同時に並行するマルチタスクに苦手意識を感じることは、ADHDの特性といえます。
ここからは、ADHDの人が仕事を選ぶときに注意が必要な職種をまとめました。
単純な作業を担当する仕事
単純な作業を担当する仕事は一見簡単そうですが、長続きしない傾向です。
興味を持てる内容の仕事でなければ、ADHDの人が長い間働くことは難しいでしょう。
単純な作業を担当する仕事は以下があります。
- 工場などでのライン業務
- 製品の検品や仕分けなど
- 加工業務や組立作業
- 商品管理や梱包など
マルチタスク必須の仕事
業務の同時進行や複数の担当が求められるマルチタスクは、ADHDの特性にマッチしません。
集中力が続かなく優先順位がつけられない場合は、マルチタスク必須の仕事と相性が悪いです。
マルチタスクが求められる仕事は以下の通りです。
- 販売や接客業
- 人事や経理、総務
- ドライバー
- 金融関係
- コールセンター
- 窓口受付
ミスできない仕事
人の命や経営、子どもの成長に直結する仕事はミスが許されません。
仕事に就いても常に緊張感や集中力が求められるので、精神的な疲れがたまる危険性があります。
ミスできない仕事は高いスキルが求められ、チームワークやマルチタスクも必須です。
特性に合わない可能性が高いため、ミスが許されない仕事は避けましょう。
ミスできない仕事は以下の通りです。
- 医師
- 看護師
- 薬剤師
- 弁護士
- 秘書
- 保育士や教育関係
仕事は働きやすい環境とミス対策が重要
ADHDの人が仕事を選ぶときは、職場の働きやすさや業務に工夫が必要です。
自分の特性を理解し、仕事に悪影響がないように効率的な管理をしましょう。
ミスが不安な人は、ADHDについて職場や担当の上司に相談することも考えてください。
誰かに頼れる環境の職場を選ぶ
ADHDの特性に悩んでいる人は、誰かに頼れる環境の職場を選びましょう。
頼れる人がいない職場は、ミスが起きた場合も個人の問題に発展しやすく長期間の勤務が望めません。
フォロー体制が整っていたり、ダブルチェックが必須な業務だったり、働きやすい仕事かチェックしてください。
ただし、あくまで自分が不得意な仕事の補助を期待しましょう。
ほかの社員ができている作業の免除を求める場合は、給与や待遇ダウンが考えられるので注意してください。
自由度が高い勤務体系
フレックス勤務や裁量労働制を取り入れている職場は、働きやすい環境と言えます。
ADHDの人が仕事に就く際は、働き方にも着目してください。
ただし、分業がきちんとできていない小規模な職場は、オールマイティに活躍できる人材が求められます。
スケジュールやタスクも個人の管理が必要と考えられるので、ADHDの人には向いていません。
フリーランスとして活躍できれば自分の得意な分野の仕事が担当できるでしょう。
ただし、フリーランスは納期管理や物事の優先順位の決定が求められるので、特性に合っていない場合は注意が必要です。
整理整頓の時間を決める
業務時間内に整理整頓をする習慣をつけましょう。
午前と午後に1回ずつアラームを設定することで、合計2回の整理整頓の時間がつくれます。
デスクが散らかっても定期的に整理整頓をすれば、見苦しくなることはありません。
隣のデスクの人にも迷惑がかかりにくくなるので、整理する時間を設定してください。
毎日の習慣にすれば、片付けへの意識が変わるでしょう。
タスク管理表・チェックリストをつくる
タスク管理表やチェックリストを作りましょう。
やるべきことをリストアップして、目に留まるようにすれば失敗が防げます。
タスク管理表を上司に確認してもらうことで、優先順位の相談も可能ですね。
タスク管理表とチェックリストは自分が使いやすいようにまとめることが重要です。
紙に書く習慣がない人は、スマートフォンのアプリを利用しましょう。
用意は前日に完了する
提出書類や資料、持ち物などの用意は前日に完了してください。
出かける間際に準備を始めると慌ただしくなり、忘れ物の原因になります。
タスクが重なったりトラブルが発生したりすると、必要なものを持って行くこと自体を忘れてしまう可能性があるので注意しましょう。
前日のうちに必要な物をまとめておけば、当日の朝にそのまま持っていくだけで済みます。
職場や上司にADHDの特性を伝える
ADHDの特性を職場や上司に伝えることも考えましょう。
特性に対して必要な、業務のフォロー体制をとってもらえることがあります。
職場の理解が得られれば、働きやすい環境が期待できるでしょう。
トラブルが起きたときに備えて、ADHDを伝えておくことも視野に入れてください。
ただし打ち明けにくい職場もあるので、ケースバイケースに対応しましょう。
ADHDの人は自分に合った業種を探そう
ADHDの人が仕事を選ぶときは、自分の特性がトラブルのもとにならないか考えましょう。
興味が持てる範囲やスキルが発揮できる仕事であれば、活躍が期待できます。
フレックス勤務や裁量労働制といった自由度が高い職場も、働きやすい環境が望めるのでオススメです。