ここ数年定着してきたブラック企業というワード、皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
結論、ブラック企業は明確な基準はありませんが、労働者の働きにくい環境・労働者のことを考慮しない扱い・離職者の多い企業を指すイメージが定着しています。
これから転職先を探している皆さんのほとんどが、「転職先でブラック企業を選んでしまったらどうしよう…」と不安を抱えているのではないでしょうか。
そこで今回は、ブラック企業によくある特徴から、ブラック企業を見分ける方法・注意点まで徹底的に解説していきます。
ブラック企業とは
実はブラック企業には明確に条件や定義はなく、「労働者に対して理不尽な働き方を強いる」企業をイメージさせる言葉として使用されています。
ただし厚生労働省としては、ブラック企業に当たる企業として、下記の通り述べています。
厚生労働省においては、「ブラック企業」について定義していませんが、一般的な特徴として、① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い、③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、などと言われています。
つまりブラック企業には下記の3つの傾向があるとされています。
- 賃金支払いがないなどコンプラ違反がみられる
- 長時間労働・キツいノルマ
- 労働者の退職を過度にコントロールしようとする
以下で詳しく解説していきます。
①賃金支払いがないなどコンプラ違反がみられる
ブラック企業の傾向として、賃金支払いがないなどのコンプライアンス違反がみられることが挙げられます。
労働基準法などで労働者の権利が定められているにもかかわらず、企業の利益を優先して事業運営を行っているケースが多いです。
企業側は労働者を守る義務も課せられている中で、法律を守らずに労働者を使い捨てかのように扱うこともあります。
②長時間労働・キツいノルマ
労働者に対して長時間労働を課したり、実現可能性の低いキツいノルマを課す企業もブラック企業として判断される可能性があります。
労働者の労働時間は下記の通り1日に8時間、1週間に40時間を超えてはならないという規定があります。
使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
引用:厚生労働省公式HP
また時間外労働・休日労働について36協定に基づいて行政に届け出を出していても、限度を超えて労働を課している企業もあります。
③労働者の退職を過度にコントロールしようとする
ブラック企業の中には労働者の退職を過度にコントロールしようとする傾向もあります。
たとえば労働者が就業規則や法令に基づいて、退職届を提出しているにも関わらず、受理せずそのまま雇用しようとするケースもあります。
また自主退職に追い込もうとするケースもあるようです。
ブラック企業によくある特徴15個
これから転職を検討している方の中には、「事前にブラック企業かどうかを判別しておきたい」という方も多いでしょう。
そこで以下では、ブラック企業によくある特徴を紹介していきます。
もちろん当てはまったからといって確実にブラック企業であると判断はできませんが、一つの指標として参考にしてみてください。
- 求人情報の掲載頻度が高い
- 異様に求人で提示されている条件が高い
- 長時間労働が当たりまえ
- 年間休日日数が極端に少ない
- 有給休暇の取得に制限がある
- 離職率が高い
- 採用人数が異様に多い
- 精神論が多い
- 賃金が最低賃金以下
- 個人に対するノルマが大きすぎる
- 仕事内容がイメージできない
- 選考で即日内定が出される
- 社内の人間関係が悪い
- 休日返上でのイベントがある
- セクハラ・パワハラへの取り締まりがない
以下で詳しく解説していきます。
求人情報の掲載頻度が高い
ブラック企業によくある特徴として、転職サイト等での求人情報の掲載頻度が高いことが挙げられます。
ブラック企業では社内環境の悪さから、社員が退職して人材の入れ替わりが多いケースがほとんどです。
しかし社員がいなければ業務が回りませんから、定期的に人材補充を行うために、求人を出しています。
定期的に転職サイトをみて、毎回同じ企業が求人を出している場合は、注意が必要です。
異様に求人で提示されている条件が高い
ブラック企業によくある特徴として、求人で掲載されている条件が異様に高いことが挙げられます。
特に未経験OK・経験不問等、スキルを問わないにも関わらず、相場よりも高い給与を提示されている場合は一度立ち止まって考えた方が良いでしょう。
一般的に企業側は、労働者のスキルや経歴を元に給与を決定します。
経験がない0スタートの状況であるにも関わらず、高額な給与を提示されている場合は、入社後に過酷な労働を強いられてしまう可能性もあります。
長時間労働が当たり前
ブラック企業によくある特徴として、長時間労働が常態化していることが挙げられます。
企業の月の残業時間をチェックしてみて、極端に残業時間が多い場合は注意が必要です。
もちろん月末などの締めに合わせて、仕事が一時的に忙しくなる場合はあります。
しかし常に残業をしなければ仕事が終わらない場合、一人当たりに課せられている仕事量が多い可能性があります。
労働者の許容範囲を超えた業務量を課されている場合、常に仕事に追われて心身の健康を損なってしまう可能性があるので注意が必要です。
年間休日日数が極端に少ない
年間休日日数が極端に少ない場合も、ブラック企業の可能性があります。
年間休日日数は求人票の下の方に記載されています。
一般的には年間休日日数が120日、つまりほぼカレンダー通りに休めることが多いです。
中には土日のみの休日として105日で設定されていることもありますが、これを極端に下回る場合はブラック企業である可能性があります。
有給休暇の取得に制限がある
本来有給休暇は労働者に与えられた権利であるのにも関わらず、取得に制限がかけられ、自由に取得できない場合もブラック企業である可能性があります。
有給休暇の取得率をチェックしてみて、付与されている日数よりも大幅に下回っているときは注意が必要です。
労働基準法には有給休暇を自由に取得できる旨が記載されていますし、年間で昇華すべき日数も決められています。
万が一企業側の都合で取得を断られた場合でも、代替日での取得は可能です。
取得率が低い、制限が設けられている場合は注意が必要です。
離職率が高い
ブラック企業によくある特徴として、離職率が高いことも挙げられます。
社内の労働環境が悪く、長期間働けないと判断した社員が続々と抜けていくことから、年間の退職者数が多くなってしまうのです。
企業の公式HPや求人票を確認して、ここ数年間の退職者数をチェックしてみましょう。
極端に離職率が高い場合は、企業内部で何らかの課題を抱えている可能性があるため、注意が必要です。
また離職率を後悔していない場合も警戒しておくといいでしょう。
採用人数が異様に多い
一回の求人募集に対して採用人数が異様に多い場合も、ブラック企業の可能性があります。
新規事業展開につき大量募集をかけている場合もありますが、新規の募集でないにも関わらず極端に人数の多い場合、離職を前提に採用を行っている可能性があります。
辞める前提で採用を行っている場合、入社後に極端なノルマを課せられる可能性もあります。
すべての企業で該当する訳ではありませんが、一つの指標として参考にしてみてください。
精神論が多い
ブラック企業では精神論で、物事をどうにかしようとする傾向もあります。
頑張ればなんとかなる、やればできる等、具体的な解決策ではなく本人の精神力にフォーカスしてくることが多いです。
精神力があれば長時間労働も苦にならないなど、より無理難題を任せる理由として使うこともあります。
もちろん精神論は大切ですが、何かと具体性を帯びないアドバイスや理念がある場合、ブラック企業を疑った方が良いかもしれません。
賃金が最低賃金以下
異様に賃金が高い一方で、賃金が最低賃金以下のところもあります。
各都道府県では各エリアでの最低賃金を設けており、それを下回る賃金は違反となります。
しかし中には最低賃金を守らずに支給しているところもあります。
ひどいところだと、賃金の額面は守っているものの、雑費と称して総額から差し引きしているところもあるのです。
もちろん本当に一部の企業のみではありますが、実際に行われていることもあるようです。
個人に対するノルマが大きすぎる
ブラック企業は労働環境の悪さから、常に人材不足の状況ですから個人に対するノルマが大きすぎるという特徴も存在します。
一人で複数人分の仕事を担当したり、売り上げのノルマを引き上げたりすることもあります。
いくら作業を効率化させても、一人で対応出来る件数には限界がありますから、段々と社員が疲弊していきます。
中には親族にも営業をかけるように依頼されることもあり、プライベートにまで仕事が食い込んでしまう可能性もあるのです。
仕事内容がイメージできない
ブラック企業に共通する特徴として、仕事の内容がイメージできないことが挙げられます。
求人票をみてみると、何となくカタカナの横文字が並んでいてそれっぽく記載されている場合、また曖昧な表現でどんな仕事をしているのかが判断できない場合が挙げられます。
実際に入社してみると、求人のイメージとは異なる仕事を任されることもあります。
もちろんすべての企業が当てはまるわけではありませんが、警戒は必要でしょう。
選考で即日内定が出される
ブラック企業によくある特徴として、選考で即日内定が出されることも挙げられます。
通常一般企業では面接官の印象や人事部の判断で、選考後に採用するかが決定されます。
しかしブラック企業では人手不足が深刻なため、選考で即日内定が出されることもあるのです。
即日内定は求職者側からしたら嬉しいものの、その裏に何があるかを考えてみましょう。
社内の人間関係が悪い
ブラック企業の中には、社内の人間関係が悪いところもあります。
利益重視や成績重視で行動していると、段々とお互いをライバル視したり、派閥ができたりします。
居心地の悪い労働環境の場合、段々と出社することが辛くなっていき、どんどん社員が辞めていく原因になります。
休日返上でのイベントがある
会社で休日返上でのイベントがある場合も、ブラック企業にである可能性があります。
土日に接待のために集まったり、上司のためにイベントを開いたりと、休日のプライベートな時間を使って参加しなければならないこともあります。
また休日に会社のミーティングがあったり、連絡が来て緊急対応しなければならない場合もあります。
折角休日返上で参観したとしても、時間外労働手当や休日手当や代休が支給されることはありません。
セクハラ・パワハラへの取り締まりがない
ブラック企業によくある特徴として、セクハラ・パワハラへの取り締まりないことが挙げられます。
企業内でトップダウン制が採用されていたり、各部署の上司の管理がしっかりと行き届いていないと、社員に対するコンプライアンスが守られないことがあります。
結果上司からのセクハラが放置されていたり、パワハラが横行していることが常態化している可能性があります。
外部からどんな状況かを判断するのは難しいですが、口コミなどを参考にしてみるといいでしょう。
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転職前にブラック企業を見つけるコツ
これから転職を検討している方からすると、転職前にブラック企業ではないかをチェックしておきたいですよね。
そこで以下では、転職前にブラック企業を見つけるコツを紹介していきます。
給与条件が複雑に書かれていないか
転職前にブラック企業を見つけるコツとして、給与条件が複雑に書かれていないかをチェックすることをおすすめします。
ホワイト企業の場合は、労働者とのミスマッチを無くすためにも、給与条件をわかりやすく記載する傾向にあります。
しかし基本給の記載だけではなく、「みなし・固定残業代」として通常よりも多く見せている場合もあります。
みなし・固定残業代の場合、給与の額面に一定時間分の残業代が含まれており、所定の時間を超えなければ追加の残業代は支払われないことになります。
あまりにも複雑に給与が記載されている場合は、警戒してみた方が良いでしょう。
社内の活気があるか
面接に行ったときに、実際に働いている社員の顔つきや雰囲気を見てみましょう。
ホワイト企業であれば社員も現状に満足してますから、働くときの雰囲気もおのずとよくなっていくものです。
しかし給与等悪条件下で働いているブラック企業の社員の場合、残業続きで疲れていたり、社内の雰囲気がどんよりしていることもあるのです。
転職活動では実際に面接のために企業に訪問することもありますから、一度雰囲気を体験して活気にあふれている職場かを確認しておきましょう。
求人以外にも就職四季報をチェック
実は求人掲載には掲載料や紹介料がかかりますから、掲載されている情報がクライアントである企業側にメリットのあるように、編集されている場合もあります。
しかし東洋経済新報社発行の就職四季報では、第三者の視点から企業の人事的なデータが掲載されています。
採用実績や勤続年数、離職率から残業時間まで細かく記載されています。
企業によっては公式サイトに離職率を掲載していないこともありますから、就職四季報を確認して第三者視点での情報収集に取り組んでみましょう。
ブラック企業大賞をチェックする
2012年から弁護士や教授等が運営するブラック企業大賞が始まり、例年パワハラやセクハラ、過重労働を行っている企業をノミネートしています。
様々な企業の情報を収集して、経営体制に問題のある企業や特に問題のあるブラック企業を選出しています。
これまでの結果を見てみると、ブラック企業大賞にノミネートされている企業の中には、大手企業や人気企業も紛れています。
ブラック企業大賞をチェックしてみて、転職先として検討している企業がないかを判断してみてください。
厚労省発表のブラック企業リストをチェックする
厚生労働省は、労働基準法法令違反をした事業所や企業をリストアップしてWeb上に掲載しています。
各都道府県に設置されている労働局が摘発して送検した企業名が掲載されており、企業名や発生日、違反事項についても細かく記載されています。
ただ、労働局が把握していない企業に関しては、もちろん掲載はされていません。
リストだけを信用しないようにしましょう。
企業の口コミもチェックする
ブラック企業かどうかを判断する為には、企業の口コミが集まる情報サイトを参考にするのも良いでしょう。
企業口コミ投稿サイトでは、実際にその企業で働いていた人が、職場環境等の口コミを自由に投稿できる場として利用されています。
実際の労働環境から、条件面など細かく現場の声として書かれているので、求人情報に書かれている内容が本当かを判断できるでしょう。
ただし内容を誇張して書いている場合や、ただの誹謗中傷になっている可能性もありますので、注意が必要です。
転職サイトの非公開求人を利用する
ブラック企業を徹底的に外したいのであれば、転職サイトの非公開求人を利用することも検討してみてください。
転職サイトの中には、公開求人と非公開求人の2パターンがあります。
公開求人はインターネット上から簡単にアクセスできる求人である一方、非公開求人は登録者のみあるいは条件にマッチしているひとのみに公開されるものです。
中にはコンサルタント経由でのみ求人が紹介されるケースもあります。
実は転職サイトやエージェント経由で人材を採用するときには、十万円単位の紹介料が発生します。
ブラック企業の場合、コスト削減のために求人掲載を渋る傾向にあります。
そのため非公開求人で求人を紹介してもらった方が、ブラック企業に当たる確率を減らせる場合もあります。
ブラック企業を見極めるときの注意点
人間だれしも過ごしやすい環境で働きたいと思うものですから、ブラック企業に転職しないように細心の注意を払うかもしれません。
しかしブラック企業を見極めようとするときには、下記の注意点も把握しておきましょう。
- 完全にホワイトな職場は一握り
- ネットの口コミは真偽不明
- 業界単位でもブラックかを判断する
- 転職で何を大事にしたいかで条件を取捨選択する
以下で詳しく解説していきます。
完全にホワイトな職場は一握り
転職先の企業探しでブラック企業を徹底的に排除したいと考える方も多いでしょうが、実際のところ完全にホワイトな職場は一握りといえるでしょう。
仕事も適正量、給与も満足、社内環境も良好な職場はレアです。
ブラック企業から逃れることに真剣になるあまり、転職の条件が自然と厳しくなり応募できる転職先がなくなってしまう可能性があります。
完全にホワイトな職場を見つけるのは至難の業ですので、転職先を探す時には注意が必要です。
ネットの口コミは真偽不明
ネットの口コミは真偽不明なこともほとんどです。
Googleビジネスの口コミで良い口コミが殺到していても、中には自演で口コミを投稿していることもあります。
また、口コミ投稿サイトに投稿されている口コミも、ただ悪い口コミだけを投稿していることもあります。
確実に真偽のほどが担保されているわけではないので、確実に正しい口コミに当たれるかはわからないのが正直なところです。
ブラック企業かを判断する為にネットの口コミを参考にするときは、完全に信用しすぎないことをおすすめします。
業界単位でもブラックかを判断する
ブラック企業かどうかは、業界でも判断ができます。
常に人材不足の業界や、休みの取りにくい業界の場合ブラックな労働を課せられる可能性があります。
一般的に接客業等お客さんのペースを重要視している業界の場合、ブラック企業が多い傾向にあるとも言われています。
業界の評判もチェックしたうえで、ブラック企業化の選別を行っていきましょう。
転職で何を大事にしたいかで条件を取捨選択する
転職で何を大事にしたいかで条件を取捨選択することも大切です。
根本的にスキルアップやキャリアアップを狙っているのであれば、多忙な環境に身を置いた方が良いでしょう。
逆にワークライフバランスを最優先したい場合には、定時退勤・仕事の量が少ない企業を選んだほうがいいでしょう。
転職で何を実現したいかを明確にしたうえで、どんな転職先にすべきかを判断する方が、納得出来る転職先が見つかる可能性が高いです。
自己分析を徹底して行って、条件に優先度をつけることをおすすめします。
ブラック企業の特徴・見分け方を理解して転職先を精査しよう
いかがでしたか?
ブラック企業に明確な基準はないものの、厚生労働省が傾向を提示しているように社会全体で働き方の改革が行われています。
しかし求人情報をひとめ見ただけで判別することは難しいですから、情報をしっかりと集めて徹底的に引っかからないように行動することが大切です。
今回紹介したブラック企業によくある特徴はあくまで、傾向として紹介したものですが、何件も当てはまる場合は本当に応募して良いか立ち止まって考えましょう。
ブラック企業に転職してしまうと、精神的に疲弊してしまうほか、体の調子を崩してしまうこともあります。
ブラック企業の特徴・見分け方を理解して、今見ている企業に転職して自分が本当に幸せになれるかを考えておきましょう。