ケアマネは「要介護者と介護サービスを結ぶ要」とも言われ、介護保険制度においても欠かせない存在です。
一方で近年ではケアマネ不要論というものが話題になり、不安を覚える介護従事者の方も多いのではないでしょうか。
この記事ではケアマネを取り巻く現状と将来性についてまとめています。
人材不足絵の対応や、AIがもたらす影響などから、今後ケアマネに求められることが語のように変わっていくのかを解説します。
ケアマネとは
ケアマネとはケアマネージャー(介護支援専門員)のことですね。
介護サービス必要とする人が最適なサービスを受けられるように、ケアプランの作成やサービス事業者との調整を行います。
中でも特徴的な業務がケアプランの作成です。
サービスを必要とする高齢者が抱える問題を把握し、自立した生活を送るための計画を組み立てるものですね。
ケアプランを作成するだけでなく、その実施状況と達成状況を適宜チェックし、サポートするのもケアマネの仕事です。
ケアマネの現状
業界におけるケアマネの重要性は高いものの、需要に対してケアマネが足りていない状態が続いています。
特に現代ではケアマネを目指す若い世代がかなり少なく、今後さらにケアマネージャーの確保が難しくなることが予想されているのですね。
なぜこのようにケアマネが少なくなっているのか、その理由を解説していきます。
給料が激務に見合わず目指す人が減っている
ケアマネのメイン業務はケアプランの作成です。
ケアプラン作成のためにはサービスに関わる各関係者と会議をする必要があり、様々な書類作成業務にも追われます。
また1人のケアマネは数十人の被介護者を担当するのが基本。
例えば施設で働く「施設ケアマネ」は、利用者さん100人に対して最低1人必要とされています。
施設全体の利用者さんを1人で担当することも珍しくないのです。
そのうえ勤務する施設によっては介護職と兼務することもある等、激務であることは否めません。
一方で国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査」によると、ケアマネの平均年収は398万8,100円。
日本の平均年収は433万ですので、日本の平均年収よりも低い水準ということになります。
激務に見合った給料がもらえないというイメージが定着してしまっていることもあり、目指す人が少なくなっているのです。
資格取得に膨大な時間と費用がかかる
ケアマネを受験するには、受験資格としてまず1.2のいずれかを満たしている必要があります。
- 特定の国家資格を保有している(看護師、理学療法士、社会福祉士、介護福祉等)
- 介護施設などで相談援助業務などに従事している(通算5年以上の従事期間又は900日以上の従事日数が必要)
受験手数料は7,800~14,400円。
独学で勉強するならテキスト代数千円程度ですが、スクールに通う場合には数万~10万円程度かかることもあります。
このように受験のハードルが高いこともあり、目指す人が減っているのです。
ケアマネの国家資格化が検討されている
ケアマネージャーはこれからますます需要が高まる重要なポジションであることから、国家資格化しようという動きが出ています。
しかしふたを開けてみると、現役のケアマネも国家試験を受験し合格しなければいけないとのこと。
また「ケアマネージャーは特定に国家資格を取得していることが受験資格であるのに、さらに国家資格化するなんて、そんなにハードルを上げることに意味はあるのか」
「国家資格にするなら給料アップや補助制度も一緒に検討するべき」
「ケアマネになるまでがハードすぎて目指したい人がさらに減るだろう」
介護の現場からはこのような厳しい意見が聞かれています。
ケアマネが不足した時期に試験資格を緩和し、今度はケアマネの質を上げるために国家資格にして受験のハードルを上げようとしているというのは、なんだか自分の首を絞めているだけのように感じられますね。
主任ケアマネージャーの確保が難しい
主任ケアマネージャーとは、ケアマネージャーがさらに特別な研修を受けることでなれる上位資格のことです。
主任ケアマネージャーになれば、他のケアマネージャーのサポートや育成を担うようになります。
一般のケアマネを束ねるまとめ役ということですね。
また、介護、医療、福祉等の様々なサービスを適切に提供するためのネットワークの構築や、地域包括ケアシステムの取り組みに貢献することも重要な業務です。
居宅介護支援事業所の管理者は主任ケアマネージャーに
2021年3月に改訂された介護保険法では、「居宅介護支援事業所の管理者は主任ケアマネージャーでなければならない」とされました。
このことからも主任ケアマネージャーの需要はますます高まっており、実際主任ケアマネージャーの数を増やすことが急務となっています。
ただ主任ケアマネージャーになるための研修費用は自己負担で2万~6万程度平均で必要なうえ、苦労して資格を取っても必ず給料が上がる保証はありません。
ケアマネージャーになるだけでも大変なところ、主任ケアマネージャーを目指す人はさらい少ないのが現実です。
主任ケアマネを配置できない事業所は廃業に追い込まれる
お伝えしたように、介護保険法改正によって、居宅介護支援事業所は管理者に主任ケアマネージャーを置かなければいけなくなりました。
現状主任ケアマネージャーがいない事業所は、猶予期間である2027年(令和9年)までに主任ケアマネージャーを配置しなければ廃業に追い込まれてしまいます。
そのことからも主任ケアマネージャーの確保は急務となっており、需要は大きくなっていると言えますね。
ケアマネは不要という意見も
介護関連施設の関係者の中には、ケアマネージャーに頼らなくても自分たちでケアプランを作成できると考えている人もいます。
一部の介護現場では、被介護者について良く把握しないままケアプランの作成を行うケアマネもいることから、ケアマネージャーの必要性に疑問を持つ声が上がっているのですね。
今でこそケアマネージャーになるには5年以上の実務実績が必要ですが、以前はケアマネージャーになるハードルはずっと低いものでした。
その時代にケアマネージャーになった世代が今現役で働いている、という背景も要因の一つでしょう。
問題は働いている人ではなく、制度の方にあります。
今はケアマネの質を確保しようと資格取得のハードルを上げる動きが見えていますが、それも根本的な解決にはなりません。
それどころか、若い世代がケアマネを目指す上での障害にもなりかねませんよね。
ケアマネは介護業界において必要不可欠な存在ですが、「ケアマネ不要論」などが取りざたされている原因の一つは、現場を理解しないままつくられた制度のせいでもあるのです。
ケアマネに変わるサービスは普及してきている
また最近では民間事業所による「ケアプラン作成代行サービス」や、AIの普及も注目を集めています。
それらによってケアマネージャーの仕事が奪われていることも、「ケアマネは不要」という意見を生んでいる1つの要因です。
ケアマネの仕事はAIに代替される?
近代、AI技術の発展は目覚ましく、AI技術に発展によって人の手が必要なくなる職業も出てくると考えられています。
しかし結論から言えば、AIの進化によってケアマネの需要がなくなったり、ケアマネの業務が完全に代替されることはないでしょう。
AIの普及によって業務負担は軽くなる
実際介護業界でも、AIを活用したケアプラン作成の技術開発が行われています。
ケアマネの業務の一つである大量の書類作成などをAIがこなしてくれれば、ケアマネの作業負担はぐっと軽くなります。
その分ケアマネの人数を減らす事業所も出てくることは十分考えられますが、現状はケアマネ不足の方が深刻です。
むしろ一刻も早くAI技術を導入し人材不足を解消させる方が望ましいように思われます。
またAIがどんなに発展しても、それを扱うのは結局人です。
そのことからも、ケアマネが完全に要らなくなるというのは考えにくいですね。
ケアマネは「人だからこそ」できる業務に専念できる
AI技術の普及によって煩わしい業務から解放されれば、ケアマネは「人だからこそ」できる業務に専念することができます。
介護サービスを必要とする方とそのご家族に寄り添い、それぞれのニーズを組んだベストなケアプランの作成に取り組めるようになるでしょう。
利用者の相談にのったり、対人でコミュニケーションを取るために時間を確保できるというのが大きいですね。
ケアマネは今後どうなる?
結論から言えば、ケアマネの資格が廃止されたりケアマネの需要がなくなるということはないでしょう。
むしろ高齢化が進む現代において、ケアマネージャーの重要性は一層高まっていきます。
ただし、ケアマネを取り巻く状況が大きな変化の時を迎えているのは事実であり、そこに順応していけるかどうかが非常に重要になってきます。
ここまでの内容を踏まえて、ケアマネが今後どうなっていくのか、求められることがどう変化していくのかを見ていきましょう。
対人ならではのきめ細やかなサービス提供が求められる
AI技術の普及はケアマネの人材不足や業務負担の軽減に貢献してくれると期待されています。
しかし業務負担が減る分、より質の高いサービスの提供を求められることになるでしょう。
数字データの管理や事務的な作業はAIにまかせ、ケアマネには人対人でしかわからない部分をくみ取ってケアプランに反映させるきめ細やかな仕事が求められます。
より専門性を高め、スキルアップするための努力が必要
優れたAIを導入するほど、それを扱う側にも専門性が求められます。
またAIがケアマネの業務をどこまでサポートできるかはまだまだ未知数です。
今は問題なくても、待遇や制度の改善によってケアマネの人材不足が解消されたとき、AIにできる範囲の業務しかできないケアマネは優先的に削減の対象となるでしょう。
そうならないためにも、今より一層専門性を高め、スキルアップするための努力を重ねていく必要があります。
将来的にAIに職を奪われないためにも重要なことですね。
国からの支援にも期待
介護業界において重要なポジションであるケアマネージャーを確保するため。
そして現役のケアマネージャーがこれからも安心して活躍するためにも、制度の改善や国からの支援は必要となるでしょう。
ケアマネージャーの待遇の改善、ケアマネ受験のハードルの調整など、現場の声を反映した改革が必要となります。
ケアマネを目指す人の背中を押すような支援がなされることにきたいしたいですね。
ケアマネに求められる業務は変化している
ケアマネの現状と課題、そして将来性について解説してきました。
高齢化も進んでいることから、ケアマネの需要は今後も大きくなっていくことが予想されます。
AI技術が普及していると言えど、専門性の高いケアマネの業務を完全にAIに置き得ることは難しいでしょう。
しかし業務の一部をAIが担うようになる可能性は十分にあり、業務負担が軽くなる分ケアマネには「人だからこそ」できる業務の質の向上を求められます。
ケアマネの仕事がなくなることは考えにくいですが、将来的に人材不足が解消に向かえば、人員削減の方向に向かい競争率が高くなる可能性がありますからね。
今後はより高い専門性と、利用者の心に寄り添うきめ細やかなサービスを提供するスキルが求められていくでしょう。