「キャリアプランの考え方とは?自分の将来を考えるコツ」について、キャリアコンサルタントとしてお伝えします。
ここ何年か「キャリア形成」「キャリアプラン」など「キャリア」という言葉がよく聞かれるようになりました。国は全国民がキャリアコンサルティングという、人生や将来を考える相談を受けられる仕組みを作ることを推進しています。
その流れでキャリアコンサルタントという国家資格も生まれました。
では、なぜその流れが生まれたかというと、終身雇用制度が崩壊し、非正規雇用も増え、働き方が多様になったこと。
何度も新たな仕事に就くことが求められるようになったからです。
目次
キャリアプランを考える上で重要なポイント
キャリアコンサルティングの基本的な流れで、
- 自己理解
- 仕事理解
- 啓発的経験
- 意思決定
- 方策の実行
- 仕事への適応
というものがあります。
自己理解
①の自己理解はとても重要です。
自分は何が得意で何が苦手なのか。何に喜びを感じ何は嫌なのか。譲れない価値観は何か。どんな風に生きていきたいのか。これまでの仕事の経験などを詳しく振り返ります。
幼少期の振り返りも大事で、子どもの頃に憧れた人や夢を思い出すなどして、自分の原点を見つめる事も大事です。
また、私達キャリアコンサルタントが使うツールで、職業興味検査(VRT)や職業適性検査(GATB)などがあります。
職業興味検査は自分がどの分野の仕事が好きなのか。得意と感じているかを知るもので、アンケートのように自分の主観から見つけます。
これに対して、後者の職業適正検査は能力測定です。
言語能力や図形識別能力、素早さや計算力などいくつかの項目が日本人平均と比べて高いのか低いのかということが、客観的に分かります。
この検査で極端な落ち込みがある場合には、医療機関での発達検査をお勧めすることもあります。
ショックを受ける方もいますが、自分の能力は客観的に知っている方が、苦手なところは上手くカバーし、自分が得意なところを生かすことができるので、仕事にも適応しやすくなり、生きやすくなります。
よく私は、就職活動は「自己理解に始まる」と言うのですが、転職でも人との人間関係でも、自分というものがよく分かって初めて上手く行きます。
仕事理解
次に仕事理解が大事です。仕事の種類を10しか知らない人は10の中から選びます。
3,000知っている人は3,000の中から選びます。選択肢が多い方がより良い意思決定ができます。
また、数だけでなく、具体的にどのような仕事なのか?という理解も大事です。
恰好良い部分だけでなく、大変なところも併せて、実際に自分が現場で仕事する時は、どうなんだろう?とイメージが持てるくらい理解するのが理想です。
そのためには、体験できれば一番良いですが、体験できない場合には、その仕事をしている方にインタビューをして教えてもらう。ドキュメンタリーの番組や本などで知るということも良いでしょう。
これは転職に限らず、同じ社内で違う部署に異動する時にも有効です。
もう一つ、新卒の学生さんが就職する時、また、独立をする、転職をするなどの場合には「やりたいこと」だけ考えて突き進んで行くのではなくて、「バランス」を考えることも大事です。
私がよくお伝えするのは、
- できることか
- やりたいことか
- 生活できるか
の3点のバランスで、新たに就こうとする仕事を考える。ということです。
啓発的経験
啓発的経験とは、職場体験やインターンシップなど「やってみる」ことです。
イメージと実際が違うということが防げます。意思決定は応募企業を決める。
異動を受けると決めるなど。方策の実行は、決めたことを行動に移すことです。
忘れがちな仕事への適応も大事です。悩んだら相談するなど意識しましょう。この流れで考えていくと、新たな仕事や環境に適応しやすいです。
キャリアプランを考える上での注意点
自分の可能性に蓋をしない
まず、自分の可能性に蓋をしないということです。
さきほど3点のバランスを考えることの大切さをお伝えしました。確かにそれは現実を考える上で非常に重要です。
しかし、生活できるか。能力的にできることか。ということを考えすぎるあまりに、小さく収まってしまったり、本当はもっと可能性があるのに諦めてしまったりすることに気を付けて欲しいです。
特に日本人は謙遜の美学があり、あまり褒める子育てがこれまで浸透してなかったりして、自己肯定感が低く自信が持てない方が多いですから、この罠にかからないようにする必要があります。
例えば、適正検査や発達の検査などで明確に能力が低いのに、高度な知的能力を必要とする仕事に就き、成果を上げるのは難しいことが一般的です。
しかし、少し平均より低いくらいであれば、人一倍努力すれば平均の人を追い抜くことだってあります。
ましてや、実際には能力が低くないのに自分が「できない」と思いこんで、その道を諦めることは勿体ないことです。
できないことを出来る仕事に変えることも可能
今できないことであっても、勉強をして必要な資格を取ったり、実務経験を積むなどのことをすれば、「できる仕事」に変わります。
私自身も生い立ちが悪かったことから、義務教育をほぼ受けておらず、義務教育が完全に抜け落ちています。
でも、働き始めてから46歳の現在まで学び続けて来ました。
非常に簡単な事務職しかしたことがなくて、人前で喋ったことも自己紹介くらいしかなかったのに、26歳で突然パソコンと簿記会計の講師として独立した時。
30代半ばで、カウンセラーになりたい。と決めて、39歳で産業カウンセラー・キャリアコンサルタントに転向した時。
どの時も「できることをした」訳ではありません。
できないけどやりたかったから、働きながら勉強して資格を取った。
何とか講師経験を積んだ。非常勤勤務をしてカウンセリングやコンサルティングの経験を積んだ。
そんな風に、学ぶ→実践経験のサイクルで、できないことを、「できること」に変えてきたわけです。
年齢で諦める必要はない
また、能力や経験だけでなく、よくあるのが、「もうこの歳だから」という諦めです。
確かに職種によっては年齢制限があることがありますが、簡単に諦めないでいただきたいです。
私も今の仕事に転向したのは、39歳。40歳前後のことです。
「人生100年時代」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?平均寿命はどんどん延びています。
2019年の日本人女性の平均寿命は87.5歳、男性の平均寿命は81.4歳です。
年々寿命は延びていますので、私達現役世代の寿命は更に延びます。
例えば、私の子どもは現在13歳ですが、子どもの年代の平均予測寿命は107歳です。人生100年時代はもう現実なのです。
一般的に健康寿命と言って、介護や病気での看護などが必要なく自立して生活できる年齢と命が尽きる寿命には10年ほど差がありますので、それを勘案しても私の年代でも90歳頃まで細々と働いたり、何らかの役割を担うことができるほど、私達に残された時間が多いのです。
そう考えると46歳の私は折り返し地点には来ていますが、これまで働いて来た26年ほどより、はるかに長い期間まだ働ける。
職業人としては、まだ全然折り返し地点にも来ていないのです。
キャリアプランに固執しない
次に注意することは、キャリアプランに固執しない。ということです。
私が一番好きなキャリア理論に、ジョン・クルンボルツ教授の「計画された偶発性理論」あります。
理論の詳細はネットなどで検索すればすぐ見つかるので割愛しますが、その主体となるのは、キャリアのほとんどは計画したことではなく、偶然により作られるというものです。
つまり計画通りにいかない。
そのために、キャリアプランに固執するのではなく、良いキャリア形成に役立つ考え方や行動をして行こうというのがこの理論の肝です。
自分が決めた夢、キャリアプランに向けてやってみる。
一定の継続性を持って努力することは大事ですが、ダメだった場合には、固執して人生をダメにしてしまうのではなく、ポジティブに軌道修正をして行くことが大事です。
キャリアプランを考える際の流れ
一旦書き出してみる
ここまでで、自分がどうありたいのか、強み、自分のやりたい事や目標設定が整理できたら、それを紙に書きます。
パソコンでも構いません。仕事を変えるなどの方向転換を目標に設定した場合には、「いつまでにそれを実現するのか」期限を区切って書きます。
例えばそれが5年後の夢であったら、その手前3年で何をするのか。
どうなっているのか。この1年で何をするのか、どうなっているのか。などを書きます。
直近3ヶ月の行動リストを作る
次に目標が絵に描いた餅になって行動できないといけませんので、私がお勧めするのが直近3ヶ月の行動リストを作るということです。
この作成のコツは、自分がどうありたいか。どう生きたいか。ということを、一番上に書きます。
次にその生き方を実現するために、直近3ヶ月で達成できそうな目標をその下に書きます。
今度は、その3ヶ月に達成する目標の実現のために、必要な行動を15個書きます。
既に習慣化されているような、簡単なものから始め、難易度の高いものは後に書いていきます。
それを机の前など毎日見る所に貼って行くと、実践の強い味方になります。
ジョブカードを使ってみる
こういうやり方もありますし、国が勧めているキャリアシートで「ジョブカード」というものがあります。
このジョブカードには「キャリアプランシート」がありますので、以下のジョブ・カード制度 総合サイトの見本と様式を利用して書き進めることでも、キャリアプランが作成できるようになっています。
厚生労働省 ジョブ・カード制度 総合サイト
https://jobcard.mhlw.go.jp/
変化の大きな時代だからこそキャリアプランが重要
最後にまとめとして、変化の大きな時代だからこそ、キャリアプランを意識することが重要です。
この不確実な時代を生き抜くための対策は「学び続けること」が一番の守りになります。
かつてのキャリア形成は、ゴールが約束された山登り型でしたが、現代のキャリア形成は激流を筏で下るようなもの。と表現されます。学び、時代の流れや環境の変化に順応し、自分らしいキャリアを築いてください。