大企業と中小企業、転職するならどっちがいい?

大企業と中小企業、転職するならどっちがいい?

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この記事では従業員1万人超の大企業に新卒で入社し、その後未上場のベンチャー企業(中小企業)に転職した筆者が、「大企業と中小企業」の違い、見るべきポイントについてお伝えします。

筆者略歴

  • 新卒で従業員1万人超の大企業に入社
  • 法人営業、海外駐在、新規事業企画などを経験
  • 30歳で未上場のベンチャー企業へ転職
  • 未上場ベンチャーでは新規事業開発を担当
  • 経営学修士(MBA)
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大企業・中小企業の定義とは?

そもそも大企業・中小企業とはなんでしょうか?実は「大企業」は公には定義されていません。

一方、「中小企業」は中小企業基本法という法律でその定義が定められています。

こちらの表をご覧ください。

中小企業グラフ

※業種ごとに資本金や従業員の定義がありますが、この記事では便宜的に従業員300人以上の企業を大企業、299人以下の企業を中小企業とします。

大企業0.3%、中小企業99.7%!

中小企業庁によると、日本の企業のうち大企業は約1.2万社。中小企業は約419.8万社。

日本の会社のうち、実に99.7%が中小企業なのです。

中小企業の景況について

出典:中小企業庁「最近の中小企業の景況について」
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/chushoKigyouZentai9wari.pdf

従業員数は大企業3割、中小企業7割

一方、働く人の数は大企業約1,229万人、中小企業約2,784万人となっています。

会社の数で見れば圧倒的に中小企業が多いですが、働く従業員の数では大企業が約3割、中小企業が約7割となります。

大企業と中小企業を比較

それでは早速、大企業と中小企業の比較をしてみましょう。

まずは公開されているデータで定量的に比較ができる項目から見ていきます。

平均賃金の比較

皆さんが一番気になるのはやはり給与面でしょう。

2018年の厚生労働省資料では、企業規模ごとの平均賃金が明示されています。

厚生労働省:平成 30 年賃金構造基本統計調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2018/dl/13.pdf

大企業と中小企業の平均賃金の差

これを見ると、大企業と中小企業の平均賃金に差があることは一目瞭然。

例えば40-44歳男性で見た場合、大企業の平均賃金は年間409万円に対して中企業で344万円、小企業で314万円となっています。

労働生産性の比較

上で述べた平均賃金の格差は、労働生産性の格差が原因で生じています。

中小企業白書2020年版によると、あらゆる業種で大企業よりも中小企業の生産性が低いことが分かります。

出典:日本経済新聞「大企業・中小の格差縮小、急務 コロナ危機と生産性」

企業種別大企業と中小企業の格差

労働時間の比較

企業規模別に労働時間は違うのでしょうか。

大企業で1日あたり平均7時間46分。中小企業は平均7時間47分となっています。

出典:厚労省の令和2年就労条件総合調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/20/dl/gaiyou01.pdf

大企業と中小企業の労働時間の差

労働時間は大企業と中小企業で変わらないということでしょうか?この数字には少しカラクリがあります。

次の年間の休日日数で詳しく見ていきましょう。

年間休日総数の比較

上で述べた労働時間は1日あたりのもの。

同じく厚労省の令和2年就労条件総合調査で、企業規模別の1企業平均年間休日総数が示されています。

これによると、1年間における休日の日数は1,000人以上の企業で117日、300-999人の企業で115日、100-299人で113日、30-99人の企業では108日となっています。

大企業と中小企業の休日の差

つまり、中小企業よりも大企業の方が休みの日数が多いということが分かります。

1日あたりの労働時間は同じでも、年間で働く総労働時間は大企業よりも中小企業の方が長いということになります。

出典:厚労省「令和2年就労条件総合調査」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/20/dl/gaiyou01.pdf

経営の安定性

経営の安定性はどうでしょうか。

少し古いデータですが、2015年の倒産件数は大企業が6社に対して中小企業が8,806社。

母数に対する割合では大企業が0.05%、中小企業が0.2%となります。

中小企業の倒産件数の推移

出典:中小企業庁「倒産、休廃業、解散件数の推移」(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/h28/html/b1_2_1_2.html)

この数字から、「大企業の方が倒産する可能性は低い」と言えます。

※但し、大企業でも最近は早期退職や希望退職の募集という形でリストラを進めている会社が増えています。

参考:仕事カフェ「大企業のリストラ一覧」(https://shigoto-cafe.com/restructuring/)

公開されている定量データで大企業と中小企業の比較をお伝えしてきました。

ここまでの比較は、大企業の方が圧倒的に良いという結論になりそうです。

ここからは、大企業と中小企業の定性的な比較をお伝えします。

企業のブランド・知名度

働いている会社がどれだけ有名か?を会社選びの軸とされる方もいるでしょう。

言うまでもなく、企業の知名度は中小企業よりも大企業の方が高いのが一般的です。

福利厚生

研修制度を含む各種福利厚生についてはどうでしょう。

こちらも、大企業に軍配が上がります。

大企業では充実した研修や保養所、各種サービスの割引などを導入している会社が多くあります。

経営者との近さ

将来起業や独立を考えているといったように、いちはやく経営視点を学びたいという方には、中小企業の方が良い環境といえます。

経営者とひとこと話すこともままならないという大企業に比べ、一般的に中小企業であれば経営者との距離が近く経営視点を学べることも多いと言えるでしょう。

仕事や環境のコントロール

大企業では、ジョブローテーションといって数年に一回会社が従業員に異動を命じるのが一般的です。

この異動制度は、様々な職種や環境を経験できると捉えればメリット。

ただし、自分の意に反した仕事や転勤を命じられる可能性もあるのがデメリットと言えます。

一方中小企業は基本的に特定の地域で特定の事業を展開しますので、意に反した転勤や仕事の命令は少ないと言えるでしょう。

自分で仕事や働く環境をコントロールできるという意味でも中小企業にメリットがあると言えます。

大企業か中小企業かで選ぶのはナンセンス

ここまで大企業と中小企業の違いを比較してきました。

皆さんはどう感じられたでしょうか?

やっぱり大企業がいい?中小企業も魅力的?

それぞれ感じ方が違うと思います。

ここでちゃぶ台をひっくり返すようで恐縮ですが、大企業か中小企業かで転職先を選べる立場にあるのであれば、企業規模だけで会社を選ぶのはそもそもナンセンスであると筆者は考えています。

大企業と中小企業の比較に意味がある?

終身雇用の崩壊と人生100年時代

というのも、これからはさらに環境変化が激しくなる時代。

例えば今回のコロナショックを考えると、観光業や旅行業、航空会社などはどんなに大企業でも経営の危機に瀕しています。

コロナショックの前から大企業でも終身雇用の崩壊が始まっており、もはや会社という箱に頼るのではなく「個人として会社関係なく価値を発揮できる」人材になる働き方が求められます。

いくら平均賃金が高くても制度が充実していても、それに安心しきっていては予想できない事態が起こったときに対応できず境地に立たされることになります。

急速に進むグローバル化やデジタル化に加え、今回のコロナショックのように誰も予想できなかったことが発生する今後の世界。

「個人として会社関係なく価値を発揮する」ための会社選びの基準をこれからお伝えします。

「成長率」という軸で見ると大きく変わってくる

先ほどの規模別の横軸に、「成長率」という縦軸を足すと以下の図のようになります。

成長率マトリクス

この記事をご覧の皆さまにおすすめしたいのは、大企業vs中小企業という単なる規模の比較ではなく、最初にこの4象限で会社選びをすること。

特に比較してほしいのが、右下「多くの日系大企業」と左上「スタートアップ・ベンチャー」と言われる企業群。

日本の大企業はほとんどが低成長もしくは停滞・衰退のフェーズにあります。

一方、創業数年で従業員数はまだ少なくても急激に成長している会社は意外と多くあります。

成長している会社は、それだけ市場のニーズがあるということ。

また、事業を創るという意味でもこうした急成長している会社に身をおくことは「会社関係なく価値を発揮する」人材に近づける選択肢です。

ベンチャー・スタートアップは不安定?

ベンチャーやスタートアップはリスクが大きく不安定。給与も安いという印象をお持ちの方も多いでしょう。

もちろん、創業間もないフェーズで商品やサービスが市場に認知されていないような会社は倒産リスクも高いでしょう。

ただ、近年日本でも大企業の投資部門やベンチャーキャピタルのエコシステムが急激に発展。

ベンチャーやスタートアップで多額の資金調達をする会社が急速に増えています。

こういったことを背景に、待遇の面でも一昔前とは状況が異なっています。

例えば2020年12月に東証マザーズに上場したプレイドという会社は、従業員190名、平均年齢33歳にして平均給与は年間887万円。(株式会社プレイド「新規上場申請のための有価証券報告書」参照)

プレイドは突出して平均給与が高い例ですが、近年のマザーズ上場会社の平均給与は多くの場合500万円を超えています。

もちろんそれでもリスクはあります。

しかし、いまの世の中「大企業だからリスクはない」とは言い切れません。

これからの時代を生き抜くために、「大企業か中小企業か?」という単純な比較ではなく、そこに「成長率」という軸を加味して会社選びをされることをおすすめします。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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