データサイエンティストに未経験者がなるためには、データ分析やプログラミングに関わる業界で働いた経験があると有利です。
データサイエンティストになるためには、国家資格や限定された経歴はありません。
高いスキルが必要なため、未経験者からデータサイエンティストになることは、やや難しい傾向です。
この記事ではデータサイエンティスト未経験者もなれるのか、なるためにどんな適性があると有利か、まとめました。
目次
データサイエンティストは未経験でもなれる?
そもそもデータサイエンティストは、未経験者もなれるのでしょうか。
データ分析や数字についてくわしくなければ、データサイエンティストを目指すこともないでしょう。
しかし、統計学のスキルがあっても、まったくの実務未経験者の場合はデータサイエンティストになることは難しいと考えましょう。
統計データを扱う仕事からのチャレンジが多い
数理統計を扱う仕事からの就職や転職は、データサイエンティストにとって一般的な傾向です。
統計データに関わる実務経験を活かして転職を考える人は、採用される可能性はあるでしょう。
中途採用の応募条件には、統計データや分析に関わる実務経験が必須とされていることも多いです。
データサイエンティストはAI(人工知能)が注目されるようになってから生まれた仕事ではありません。
以前よりマーケティング会社や金融機関など多様なジャンルで必要とされていました。
IT業界未経験は難しい傾向
データサイエンティストはデータを収集・分析する役割を担当します。
データサイエンティストとして活躍するためには、PythonやR言語などプログラミングの知識が必須と考えてください。
そのため、IT業界での経験がない人材はハードルが高く、採用されたとしても実践的な仕事を覚えるまでに時間がかかるおそれがあります。
AI分野ではの学習データを扱う仕事のため、プログラマーやシステムエンジニアといった業種とは少し異なる業務内容でしょう。
未経験者として内定をもらえる新卒者は、専門の学部で勉強しつつインターンやアルバイトとしてデータ分析に関わる業務を担当した経験者が多くいます。
応募条件に実務経験が設定されている求人では、担当分野や勤務年数について細かく記載されている可能性があります。
未経験も活躍できる業界をねらう
データサイエンティスト未経験者の場合は、求人条件をよく確認し応募の対象者か判断してください。
そのうえで、未経験者も活躍できる業界を狙うことが重要です。
- データ分析サービスを提供している企業
- AIソリューション系のプロダクトを提供する企業
上記のような会社のほかに、所属企業の社内プログラムや公募制度を行なっている会社も未経験者は挑戦しやすいでしょう。
即戦力として募集している企業よりも、育成を目的に人材を集めている会社に注目してください。
20代、30代、40代にかかわらず未経験者は採用されにくい
年齢にかかわらず、データサイエンティスト未経験者は企業から採用されにくい傾向です。
IT業界未経験であったり統計学の知識がない未経験者は、即戦力として考えてもらえません。
企業で担当者を育てる場合も、研修や勉強についてコストがかかるため、積極的に未経験者を募集している求人は少ない傾向です。
未経験者対象の求人でも、ある程度のスキルや知識は必要とされるので、データ分析の経験がなければ採用されにくいでしょう。
未経験が転職した場合の年収相場は?
データサイエンティスト未経験の場合、企業は成長性に期待して人材を採用することが多いです。
経験者のように、高年収が望める条件が少ないため注意してください。
その一方で、データサイエンティストは専門職なので、経験を積むことで高い収入を稼げる可能性があります。
未経験の年収相場は400万円程度
厚生労働省のデータによると、「その他の技術者」に分類されるデータサイエンティストの平均年収は、508万円です。(参考:職業情報提供サイト(日本版O-NET))
そのことから、データサイエンティスト未経験者が、仕事についたときの年収相場は350万~400万円前後と考えられます。
ただし、データサイエンティストを募集する企業は、大規模な仕事をしていることが多いため、高い賃金ベースが期待できます。
実務未経験の状態でも将来的な収入アップが期待できる職種なので、入社後は実績を積みましょう。
年収アップには社内で昇進を目指そう
未経験者が年収アップを期待する場合は、データサイエンティストとして着実に成果を上げて社内での昇進を目指しましょう。
データサイエンティストは、マネージャー職以上に選ばれると年収が大きくアップする職種です。
プロジェクトマネージャー以上のポジションに昇進することで、1000万円に近い年収も夢ではありません。
データサイエンティストの仕事内容をチェック
データサイエンティスト未経験者は、仕事内容をチェックしましょう。
おもな業務の流れは以下の通りです。
- 課題抽出・仮説立案
- データ分析設計・環境構築
- データ加工・レポーティング
- 分析と仮説検証
- 戦略と施策の提示とモデル構築
1.課題抽出・仮説立案
会社やクライアントが抱える課題を抽出して、解決方法の整理と提案をします。
実際に収集が可能なデータや分析方法を踏まえながら、仮説を立てて業務を進めることが重要です。
この業務に基づいて今後の作業が行われるので、課題抽出・仮説立案に時間をかけるデータサイエンティストも多くいます。
2.データ分析設計・環境構築
仮説をもとに、データ分析基盤の構築を行います。
必要なデータや分析モデルを選び、収集したデータの中から重要なものだけを抽出する作業です。
分析がしやすいように業務システムやデータを選別する環境を作り、集めたデータを保管するデータベースの構築も行います。
エンジニアとしての仕事も含まれるため、プログラミングやデータベース関連のソフトウェアに関するスキルと知識が求められるでしょう。
3.データ加工・レポーティング
データ収集や加工の作業です。
集めたデータをそのまま使うのではなく、意味のあるデータだけを抽出します。
集めたデータを使いやすいように加工し、グラフや表などを使って可視化したり、KPIの設定などを行ったり、分析以外のスキルも求められる業務です。
4.分析と仮説検証
データ分析では、統計的に有意なデータを選別します。
例として、サービス継続率を上げるためにはどのデータに注目するか、どのデータ項目に関連して分析するか、といった視点で課題解決のためにスキルが必須です。
最初のフェーズで設定した仮説と照らし合わせて、妥当性を判断する作業も担当します。
5.戦略と施策の提示とモデル構築
データ分析結果をもとに、課題解決のために経営戦略や業務施策を決定します。
戦略や施策はクライアントや企業に提示し、当初の目的に合っているか判断するためのアルゴリズムを設定したり、予想されるモデルを構築したり、プログラミングに関わる仕事も行います。
課題解決のために、目標設定から実装や対策まで、分かりやすく可視化する能力は必須です。
専門職はキャリアプランが重要
データサイエンティスト未経験者は、将来性や年収アップを考えたときにキャリアプランが重要です。
ここからは、未経験者がデータサイエンティストになるための、キャリアプランをまとめました。
関連性のある職種へ転職
未経験者がデータサイエンティストになるためには、関連性のある職種について実績を積むことが大切です。
スキルを蓄えるためには、以下の仕事への就職や転職をおすすめします。
- マーケティング
- システムエンジニア
- データアナリスト
- 数学や統計学の研究職
エンジニアやマーケティングに関わる経験を重ねると、データサイエンティストとしても役立つスキルが身に付けられるでしょう。
マーケティング
マーケティング職は分析に関する基本的なスキルが身に付けられます。
データをもとに戦略を立てる能力が必須なため、データサイエンティストとしてのキャリアを目指す人におすすめの仕事です。
マーケティングの主な業務内容は、消費者のニーズを探り市場調査を行うことです。
データサイエンスやビジネスに共通する基本スキルを覚えられるでしょう。
データ分析やグルーピングのほか、マネジメント能力も高められる仕事です。
システムエンジニア
データサイエンティストはエンジニアリング力も必要とされる仕事のため、システムエンジニアとして基礎力があれば活躍できる可能性があります。
経営の課題解決を行うデータサイエンティストは、プログラミングや環境構築のほか、ITセキュリティのスキルも必須です。
論理的思考や課題の定義、分析評価、システム開発と実装などの能力も学べるでしょう。
データアナリスト
データアナリストはデータを分析して仮説を立て、課題解決に導く仕事です。
データサイエンティストと非常に似ている業務内容なので、転職も難しい傾向ではありません。
エンジニアスキルやビジネスについて、データサイエンティストと共通している部分が学べる業務内容が特徴です。
データアナリストの経験があれば、データサイエンティストの基礎スキルはあると判断されるでしょう。
数学や統計学の研究職
数学や統計学、マーケティングなどの研究職は、データサイエンティストへの転職難易度は高くありません。
しかし、研究職に就くためには、大学または大学院で専門分野を学び高度な知識が求められるでしょう。
研究職は、データサイエンティストよりも転職や就職のハードルが高い可能性があります。
AIにかかわる機械学習や基礎数学の技術は、データサイエンスに応用できるスキルです。
プログラミングを学ぶ
サイエンティストは課題解決のために、プログラミングの技術も求められる仕事です。
次の3つは、最低限覚えておきたいプログラミング言語のためチェックしてください。
- Python
- R言語
- SQL
Python
PythonはAIに関わる分野で使用されているスクリプト言語です。
分析用のライブラリが豊富で、シンプルなコードで複雑な処理が行えるため、使い方を身につけておきましょう。
Pythonの中でも以下の機能について知識を深めてください。
- Pandas:データ分析を簡単にするデータ解析ライブラリ
- NumPy:AIやディープラーニングを行う際に使われる拡張ライブラリ
- Jupyter:データ可視化やレポーティングに用いられる機能
R言語
R言語は統計解析で使用されていた言語で、大量のデータを効率よく解析できます。
必要な機能を複数備えているため、「dplyr」や「stringr」などの拡張パッケージと合わせて勉強してください。
SQL
SQLは、データベース操作用の言語として国際標準化されています。
データベースの種類に限らず使用できる汎用性があるので、基礎レベルの構文は覚えておきましょう。
データサイエンティストのデータ検索や抽出、データベース操作に必要なスキルです。
未経験者向けのキャリアパス
データサイエンティスト未経験者のキャリアパスを紹介します。
具体的なキャリアパスを知っておけば、データサイエンティストとして活躍が期待できるでしょう。
非エンジニアの場合
エンジニアとして経験がない一方で、コンサルタントやデータアナリストとして分析・レポーティングの実績がある人は、技術的なスキルを磨きましょう。
ビジネスに寄り添ったデータサイエンティストとして活躍できる可能性があります。
技術的な要素よりも課題の抽出や仮説立案など、経験をもとに初級レベルのデータサイエンティストとして転職活動を進めることが可能でしょう。
エンジニア経験者の場合
エンジニアの経験がある場合はPythonを使った、AIやディープラーニングに関わる仕事の実績を積むことをおすすめします。
エンジニアよりのデータサイエンティストとして、AIに関わるエンジニア求人に応募し統計学を学んでください。
その後、データサイエンティストとして転職を再び計画すると、採用の判断で有利になる可能性があります。
実務未経験者は適性をチェック
データサイエンティスト未経験者が自分の適性をチェックしてください。
統計学の知識のほかに、ビジネスに関わる全般的な能力も求められるでしょう。
データ分析や統計学の知識はあるか
データサイエンティストはデータの分析や解析、統計学の知識が必須です。
企業の持つ膨大なデータを整理して分析するためには、ソフトの使い方に応用を効かせることもあるでしょう。
データに関わる能力は事業戦略を提案する上で、非常に重要なスキルです。
エンジニアとしての能力はあるか
エンジニアの能力がなければデータサイエンティストとして活躍は見込めないでしょう。
データサイエンティストは、プログラミング言語への理解だけでなくITの基礎知識も求められます。
AIやディープラーニングに使用するためのプログラミング言語は、最低限必要なスキルとして転職前に覚えておいてください。
ビジネススキルはあるか
データサイエンティストは他の部署との連携も必要です。
企業は部署や部門によって、所持しているデータや情報に異なる部分があります。
専門的な知識で導き出した結果を、理解が深くない人にもわかるように伝えなくてはなりません。
プロセスの可視化やコミュニケーション能力、ビジネスの基礎知識は必須と考えましょう。
データサイエンティストに役立つ資格5選
データサイエンティスト未経験者が転職で役立つ資格を紹介します。
以下の5つの資格について詳しくまとめました。
- ビジネス統計スペシャリスト
- 情報処理技術者試験
- アクチュアリー資格試験
- DB系の資格(ORACLEMASTER、OSS-DB)
- 統計検定
ビジネス統計スペシャリスト
ビジネス統計スペシャリストは、データ分析に関する力を評価する民間資格です。
資格は、エクセル分析ベーシックとエクセル分析スペシャリストという2種類に分かれています。
ビジネスパーソンに必要なデータ分析の実践力が示せるでしょう。
情報処理技術者試験
情報処理技術者試験は、IT分野に関する資格です。
分野別に試験が分かれているため、データサイエンティストを目指す場合は以下の試験をおすすめします。
- 基本情報技術者試験
- データベーススペシャリスト試験
アクチュアリー資格試験
アクチュアリー資格試験はデータサイエンティストの必須知識を証明できます。
日本語では保険数理士とも呼ばれる資格です。
データサイエンティストを目指す人には、一次試験の「数学」の勉強をおすすめします。
DB系の資格(ORACLEMASTER、OSS-DB)
SQLを取得するためにはデータベース系の資格について勉強しましょう。
Oracle社製のデータベースに関する資格の「ORACLEMASTER(オラクルマイスター)」や、OSSの「OSS-DB」などがおすすめです。
データベースを扱う仕事ではメジャーな試験なので、取得しておいて損はありません。
統計検定
統計検定は統計学に関する知識を証明できる試験です。
5段階のレベルと2つの資格によって試験内容が分かれているため、自分のレベルに合ったものからチャレンジしてください。
習熟度に応じて検定が受けられるので、統計学を学び始めた人もチャレンジしやすいでしょう。
未経験者におすすめの勉強方法
データサイエンティスト未経験者が仕事について勉強するために、おすすめの方法を紹介します。
データ分析の独学についても触れているので、気になっている人はチェックしましょう。
通信講座やスクールを利用する
通信講座やスクールを利用すると、データサイエンスについて基本的な知識が学べます。
無料で学べる「データサイエンスオンライン講座」は、総務省統計局が提供しており基礎的な知識が理解できるでしょう。
IT分野のビジネススキル全般を学べるオンライン講座もあるため、自分が学びたいスキルから挑戦してください。
データサイエンティストが求められる能力を勉強できる講座は、Python、R言語、統計学基礎などがあります。
BIツールを使ってみよう
BIツールは、企業のデータを分析し、見える化して役立てるソフトウェアです。
未経験者も業務や分析に役立つデータを集められるので、データサイエンスの基礎的な理解が可能でしょう。
まずはBIツールを使用し、経営に活用できるデータに触れることをおすすめします。
参考書や動画では独学が難しい
書籍や動画を使った勉強は手軽に行えますが、データサイエンティストになるためにはそういった方法はおすすめできません。
独学として参考書やYouTubeを使う場合、基礎的な知識を理解するために活用する程度にとどめましょう。
転職するときの志望動機のポイント
データサイエンティスト未経験者が志望動機を書く際は、気をつけたいポイントがあります。
準備段階として、企業へどのようなPRができるのか、自分のスキルを洗い出してください。
未経験者の志望動機は魅力的なものを伝える
未経験者の志望動機は企業に魅力的なものを伝えましょう。
データサイエンティストとして以下の点に注意してください。
- 転職先になぜこの企業を選んだのか
- なぜデータサイエンティストに転職するのか
以上の2点を中心にして、実績や経験をどのように企業に貢献するのか具体的に伝えることがベストです。
入社してどのようなことを目標にしたいのか、最終的にどのように成長したいのか、シンプルかつポジティブな言葉でまとめましょう。
「学びたい」といった志望動機はNG
企業から「利益になる人材」とはっきり判断されない志望動機は避けてください。
「貢献のためにスキルを活かします」といった、具体性のない動機は熱意が伝わりにくいためNGです。
「スキルを学びたい」といった理由は、利益につながるイメージがされにくいので避けましょう。
給与や福利厚生といった待遇のみを動機にすると、企業からの印象が良くありません。
そればかりか、早期退職してしまう懸念を持たれてしまう可能性があります。
データサイエンティスト未経験者の疑問を解決【Q&A】
データサイエンティスト未経験者の疑問を解決します。
Q&A形式でわかりやすくまとめたので、チェックしてください。
Q.アルバイトから経験を積める?
アルバイトからデータサイエンティストの経験を積むことは難しいでしょう。
データサイエンティストは企業の重要な役割を担うため、アルバイトの募集をほとんどしていません。
データ分析のスキルを積みたい人には、マーケターやエンジニアからのステップアップをおすすめします。
Q.文系学部出身でデータサイエンティストになれる?
文系学部出身のデータサイエンティストも一定数存在するので不可能ではありません。
データ分析の実務経験や統計学を学習していることをPRすると、すると採用される可能性があるでしょう。
Q.働いている人の平均年齢は何歳?
データサイエンティストの平均年齢は42.9歳です。
高いスキルのほかに、ビジネススキルが求められるため、中途採用は経験者の募集がほとんどです。
Q.未経験が独立してフリーランスになることは難しい?
独立してフリーランスになることは、データサイエンティスト未経験者はほぼ不可能です。
実績がなければ、高いスキルや知識があってもクライアントはつかめないでしょう。
未経験者はキャリアパスを設計しよう
データサイエンティスト未経験者は、キャリアパスを設計し逆算して行動しましょう。
マーケティングやエンジニアの実務経験があれば、採用に一歩近づけます。
未経験者がデータサイエンティストになるためには、データ分析や統計学のスキルについて、アピールが必須です。