「農業を仕事にしてみたい」
「大自然の中で生活したい」
「都会暮らしに疲れた」
農業への転職を考えている人は、さまざまな動機を持っています。
毎日パソコンの前に張り付いて仕事をしていれば、緑のある環境で汗を流すことに憧れるでしょう。
自分の仕事が誰の役に立っているのか分からないという人でも、野菜や家畜を育てることが人々の生活を支えていることを実感しやすい職業です。
しかし脱サラして農業を初めてみると、「思っていたよりも自分に向いていなかった」「想像以上に大変な仕事だった」などの理由で辞めてしまう人も多いのだとか。
農業を専業にして転職しようとする人は、このような失敗をしないためにも事前の情報収集が必要不可欠です。
自分が農業に向いているのか、この記事をしっかりと読んでもう一度考えてみましょう。
目次
脱サラして農業への転職を志す人は意外と多い
農林水産省の調査によると、2018年に新規で農業に就業した人数は5万5,810人もいるようです。
内訳として一番多いのは、実家が農家という人が他の職業を辞めて農業を継ぐケース。
次に農業法人などへ就職するケースと続きます。
土地や資金を自身で調達して農業を始める「新規参入者」は最も少なく、実家が農家でない人たちの多くは農業法人へ就職して農業をスタートさせているのが分かります。
企業から離れて大自然の中で仕事をしたい
毎日の満員電車、上司への気疲れ、数字に追われる日々……。
それらから離れて、おいしい空気を吸いながら生活がしたいという人も少なくないでしょう。
機械的ではなく、四季や自然に触れながら働きたいというのは、現代人であれば誰でも憧れる生活かもしれません。
テレビで見る農業ビジネスへのあこがれ
最近よく、若者が脱サラして農業へ転職するドキュメント番組などが放送されています。
雑誌でも「ストレスフリーな田舎暮らし」などと取り上げられており、メディアの影響を受けて転職を志す人も多いようです。
しかしメディアが田舎暮らしのいい面しか見せておらず、実際に生活してみてマイナス面に気付いたということもあるため、転職は慎重に行いましょう。
国がプッシュしている収納給付金制度の広まり
新規で農業に取り組む場合、資金問題は大きな課題です。
そこで次世代の農業者の育成を後押しするため、国がさまざまな助成金や補助金のサポートを行っています。
「農業次世代人材投資資金」の政策においては、就農前の資金を支援してくれる「準備型」を、収納後の経営を支援してくれる「経営開始型」の2種類を用意。それぞれ交付には要件が提示されていますが、年間最大150万円の給付が受けられる制度です。
ほかにも、機械や施設の導入をバックアップしてくれる支援事業などがあり、農業への間口を広げています。
脱サラして農業への転職はリスクも伴う!
新規就農で農業へ転職した人は、7割の人が農業だけでは生活ができないというデータがあります。
どうしてこのような事態になっているのか、詳しく調査しました。
農場経営戦略がうまくいかない
農業の成功は、人の力ではどうにもならない要素が多く含まれています。
収穫した農作物の品質や収量も予測ができませんし、毎年の市場価格も不安定です。
野菜に関しては保管が難しいため、供給できる量によっては大量に廃棄処分をせざるを得ない状況に陥ってしまうケースもあります。
天候と立地に恵まれずに作物が育たない
農業を行う上で立地条件は非常に重要です。
土壌条件や育ちやすい作物、産地形成などの環境により作物を選定しなくてはなりません。
さらに台風や豪雨などの気象条件によって多大な自然被害を受けるため、収穫の予測ができないリスクを抱えています。
他の農家とのコミュニケーションがうまく取れない
「農業に転職したら面倒な人付き合いがなくなる」と思っていませんか?
農業は田舎であることが一般的なため、都会暮らしよりも深い人間関係を築く必要があります。
まず農業は経験がモノをいいます。
そのため独自のルールでやると失敗する人が多く、周囲の農家の人たちに仕事を教わりながら経験を積んでいくことが大切です。
農業への転職で失敗しないための5つの注意点
ここまで読んでみて「思っていた生活と違う……」と感じた方も多いのではないでしょうか?
では次に、農業への転職で失敗しないためのポイントを紹介していきたいと思います。
農業に適性のある性格かどうかを見極める
あなたが農業に向いているのかどうか、以下の項目をチェックしてみましょう。
自然が好き
農業は自然の中で行う作業なので、「自然が好き」というのは適正であるかの第一条件となりますが、それだけでは不十分です。
例えば家畜に携わる場合は独特の匂いもありますし、糞の掃除などもしなくてはなりません。
自然というのは、このような項目も含めてすべてを受け入れる覚悟が必要です。
虫や鳥に対して嫌悪感がない
これまで都会暮らししかしたことがない、もしくは田んぼや畑の近くに住んだことがないという人は、虫や鳥に対して抵抗がありませんか?
大自然では今まで見たことのない虫や大量のハエがブンブン飛んでいます。
またカラスやヒヨドリなどによる農作物の被害も甚大です。
肉体労働が得意
近年では農業の機械化が進み、力仕事もずいぶんと減っているようです。
それでも肉体労働はまだまだ多く、体力的に限界を感じ退職する人も多いとか。
歩く道ですら整備されたコンクリートの道とは違い、石や雑草が生えたデコボコ道。
その上、重いものを運ぶとなると、年齢が上がるごとに足腰に負担がかかってしまうでしょう。
農業でお金を稼いでいく仕組みを理解する
農業一本で稼ぎたいのであれば、日々の作業をこなすだけでなく、綿密な年間計画や経営戦略を理解する必要があります。
以前は熟練者の勘や経験に頼っていた部分を、近年はデータ化して収益を上げる農家も増えているようです。
前年の気温や水量、日照時間のデータを参考にしながら、自然災害のリスク、害虫や感染症など大きなトラブルを事前に察知することが求められています。
開設する農場近くの人間関係を事前に理解しておく
農業は実に多くの人との関わりを持つ仕事です。
周辺の農家の人たちだけでなく、卸先や農業資材を販売する会社、自治体や町内会など人との関わりが生活に左右します。
どんな人間関係があるのか、地域独自のルールやしきたりなども理解しておくことが大切です。
本当に農業に専念できる気持ちが整っているかを振り返る
農業に転職して失敗する人の多くが、農業への心意気が足りなかったというケースです。
「自然が好きなだけ」「田舎暮らしに憧れただけ」「マイペースに働けると思っていた」というような理由では、理想と現実のギャップに驚いてしまうでしょう。
農業は数ヶ月や数年先を見越して作業や計画を練る必要がある仕事です。決して大雑把な人でもできるような、簡単な仕事でないことを理解しておきましょう。
農機具や土地にかかる費用を計算する
2016年度に新規就農者に対して行ったアンケートでは、各自が用意した自己資金は土地取得代を除いておよそ569万円。
初年度は軽トラやトラクターなどの農機具も揃えなくてはならず、多くの人が1年目の生活費はゼロを見越して資金を用意しているようです。
また肥料や燃料などは毎年必要な経費ですので、これらを計算して初期投資を行う必要があります。
農家の平均年収っていくら?年収1,000万円以上は夢ではない?
農業といっても農作業だけが仕事なわけではない
農業を専業にやっていくことの大変さが理解できたと思います。
「やっぱり自分には無理かも……」と思った人は、農家以外の農業に携わる仕事を検討してみるといいかもしれません。
JAなど農協の職員
農協は公的機関ですので、安定した職場として地域の人たちからも人気の職業です。
さらに金融部門や営農経済部門など多くの事業があり、さまざまなスキルや経験が身につきます。
しかし給与が低い、ノルマが厳しいなどの声も上がっており、就労してからの環境や条件については入念なリサーチが必要です。
選果場などの選別場
野菜や果物を選別して箱詰めする、出荷作業に携わるのもひとつの案です。
農作物にキズや汚れ、欠陥がないかを見極めて袋や箱に詰めていきます。
肉体作業よりも細かい手先の作業になるので、力仕事に自信がない女性でも始めやすい職業です。
兼業農家
農業以外の収入源を確保しながら、農業のリスクを抑えた「兼業農家」という働き方も可能です。
勤務先の企業が週3〜4日勤務で、週2日を農業に当てるなど、ライフスタイルに合わせた働き方ができます。
新規で就農したい人にとっては始めやすい働き方ではないでしょうか?
農具メーカー
トラクターやコンバイン、田植え機などの農具メーカーで会社員として働く方法もあります。
企画や開発、メンテナンスや事務など、多様な職種があるのも魅力です。メーカーでの勤務経験があれば優遇されやすいでしょう。
農家以外の農業関係者に転職するためには?
農家以外でも、農業に携わる職業があることが分かりました。
「農家よりも向いているかも」と思った方は、農業関係者を目指して転職活動を行いましょう。
地元のハローワークを利用する
「農業・林業・漁業」の仕事に就きたい人を支援するため、厚生労働省は「農林漁業雇用対策」を行っています。
具体的には、ハローワークに窓口を置き、職業相談や就職の情報提供を実施しているようです。
とくに農業が未経験という方には、体験ができる農家を紹介してくれたり、管轄外の自治体の情報も提供したりしています。
転職サイトで求人検索する
農業への転職を目指すなら、一般的な求人サイトよりも「農業専用の求人サイト」で仕事探しをするのがオススメです。
複数のサイトに登録することで、農業に特化した求人を効率的に見つけられます。
スカウト機能を利用したり、未公開求人を紹介してもらったりすることで、複数の選択肢から仕事が選べるようになります。
脱サラ後農業で失敗しないようにリスクを理解しよう
農業への転職は学歴や経験を問わないことが多く、誰にでも門戸が開かれています。
しかし理想と現実のギャップに振り回されることがないよう、事前のリサーチを徹底して行うことが大切です。
農家への転職を希望する場合は、資金を用意することから始めましょう。
農家以外で考えている人は、就活サイトなどで仕事内容や条件をチェックすることが始めるといいですよ。
自然を相手にする仕事は大変ではありますが、やりがいや充実感も想像以上のはず。農業への転職が成功するよう祈っています。