保育士のクレーム対応は、一歩間違えるとさらに大きな問題に発展します。
保護者のクレームには過剰なものや、保育園の過失が見受けられない相談もあり、初めの対処が肝心です。
保育士は子どもたちだけでなく保護者の対応も仕事の一環ですが、うまく対処する方法はあるのでしょうか。
クレーム対応に悩んでいる保育士に向けて、事例や対応策をまとめました。
目次
保育士にクレーム対応を求める保護者の背景
トラブルはないか、保育園でどのように過ごしているか、保護者が子どもの環境を気にするのは当然でしょう。
保護者の保育士に対するクレームには、以下の3つの原因が多くみられます。
- 保育園や保育士に対して不安がある
- ストレスを受け止めてほしいという承認欲求
- 言いたいことを普段から我慢している
クレームが発生することは、少子化、核家族化、共働きの家庭が増え、ゆとりがなくなったことが原因と考えられます。
保護者が異常なほど過保護になったり、子育てのトラブルを相談できなかったりすると、保育士への過度な要求につながる恐れがあります。
保育士のクレーム対応8つのポイント
保育士のクレーム対応には、事前に確認したいポイントがあります。
保育園の運営に関わることは、独断での安易な判断は避けて園長や主任から指示を仰いでください。
保護者のクレーム対応で、保育士が注意したいことを確認しましょう。
1.保育士のクレーム対応は内容の確認が必須
クレーム対応の基礎は、保護者の話を聞き取りながら内容を整理することです。
保護者が伝えたいことは保育士の問題か、保育園全体に望むことか、他の保護者や通園している子供同士のトラブルか、きちんと把握しましょう。
保護者が何を伝えたいのか整理すると、クレームの本質が見えてきます。
話していることに不明な点がある場合は最後に質問し、まとめた事項が合っているか確認を取りましょう。
2.謝罪や回答は安易に行わない
クレームに対して謝罪を繰り返すだけでは保護者から平謝りと受け取られ、満足のいく解決策が取れない場合があります。
クレームの事実確認をせず安易な回答をすることも、さらなるトラブルの発生につながるので避けてください。
保育士が独断で「対応します」と言った言葉を返してしまうと、実現できなかった場合は信頼をなくしてしまう原因になります。
その場を切り抜けるための謝罪や、自分の考えだけで保護者に回答することはやめましょう。
3.できることはすぐに行う
クレームのうち対応可能なことは素直に受け入れ、保育園全体で改善結果についても報告してください。
「すぐに対応できるはずなのに、何もしてくれない」という不満を保護者がもつ前に、対策を練りましょう。
解決までに時間がかかりそうな場合は、今どのような状態か話せる範囲で進捗を共有してもいいですね。
クレームには保育園や保育士が気づけなかった改善策が隠されています。
保護者のクレーム対応をスピード感をもって行うことで、保育園全体のイメージアップにつながるでしょう。
4.真摯な姿勢でさえぎらずに話を聞く
クレーム対応は相手の不満を受け止める心がまえと、真摯な姿勢が重要です。
保護者が何を訴えたいのか、どんなことに困っているのか理解しましょう。
しっかりと最後まで話を聞く姿勢で対応すると、保護者の感情もおさまり冷静に話し合いができる可能性があります。
話を聞くなかで疑問があっても、相手の言葉はさえぎらずに丁寧な姿勢で対応してくださいね。
5.保育士から反論や否定はNG
保護者に理不尽なことを言われても、否定言葉を使ったり反論したりする態度は避けましょう。
人は反論や否定をされると、さらに感情的になってしまいます。
否定的な言葉は感情を逆撫でしてしまい、次のトラブルが発生する危険性があるので気をつけてください。
「でも」「そんなことはないです」「難しいです」と言った言葉が思い浮かんでも、その場ですぐに伝えることは危険です。
6.クレーム対応はチームで解決する
クレームは保育士ひとりだけで対応せずに、園長や主任など上の立場の人に相談しましょう。
先輩や上司、同僚の力を借りることで、トラブルが早く解決する場合があります。
クレームは速やかに報告し情報共有を保育園で徹底すると、同じようなトラブルが起きた場合もスピーディーに解決できます。
保護者のクレームをすべて聞いてから「対応策を相談させてください」といった返事をし、保育園に共有しましょう。
7.可能な範囲で代替案を立てる
クレームのすべてを聞き入れたり保護者の言いなりになることは避けたいですが、出来る範囲で代替案を立てる前向きな対処が重要です。
すぐ対応できそうなクレームは、なるべく早く園長や保育士に共有し代わりになる案を保護者に提案してください。
8.クッション言葉を活用して話す
保護者はクレームを伝えるときに、感情が高ぶっていることが考えられます。
クレーム対応する時は、言い回しが柔らかくなるように以下のクッション言葉を活用しましょう。
尋ねるとき | 「失礼ですが」「差し支えなければ」 |
---|---|
お願いするとき | 「恐れ入りますが」「お手数おかけしますが」 |
断るとき | 「残念ですが」「あいにくですが」 「大変申し上げにくいのですが」 |
クッション言葉を利用すると、保護者の感情や不安を和らげることが可能です。
ただし、極端な丁寧語で失礼にならないように、場面に応じて使い分けてください。
保育士のクレーム対応を防ぐコミュニケーションの取り方
保護者とよい関係性を築くためには、充分なコミュニケーションを取ることが重要です。
連絡帳や送迎時の情報共有を活用して子どものどんな些細なことでも報告すると、保護者も安心します。
日ごろからいい関係を続けていると、保護者もいきなりクレームを言う可能性は低いでしょう。
保育士は言葉遣いに気を付ける
保育士が保護者に対して避けたい言葉遣いには、以下のものがあります。
- 「マジ」「ヤバい」といった流行ことばや若者ことば
- 友達同士に話すような敬意を払わない言葉遣い
- 相手を不快にさせるネガティブな言い回し
保護者と同年代という保育士も多い場合は、お互いに仲が良くなることもあるかもしれません。
ただし仕事の言葉遣いは敬語で行い、あくまでも保育士と保護者という関係性を崩さないでください。
相手に合った状況判断をしよう
クレームを防ぐためには、保護者や子どもたちなど相手にあった状況判断をしましょう。
子どもの情報共有について例をあげると、細かく伝えたい場合や重要なことだけ知ってほしい保護者などさまざまなタイプがいます。
情報共有にかける時間は、保護者ごとに対応を見直してください。
送迎時は時間にゆとりがなく忙しい保護者も多いため、口頭では重要な情報だけを伝えて連絡帳にくわしく書くといった工夫が必要です。
保育士のクレーム対応事例を紹介
保育士のクレーム対応について、問題の内容と対応策を紹介します。
トラブルによって対応が異なるため、クレームが重なった場合は内容によって優先順位をつけることをおすすめします。
クレームはスピーディーな対応を心がけてください。
保育士の指導に関するクレームは保育園全体で解決しよう
保育士に積極的なサポートを望む保護者が多くいます。
充分な対応が取れないと、以下のようなクレームにつながるでしょう。
- 保育士に要望を受け流される
- 送迎時の対応が遅く態度が冷たい
- 子ども同士のトラブルをいつまでたっても解決してくれない
- 保育士が子どもを叱るときの言葉遣いに不安がある
子どもは予期せぬ行動をとるためトラブルの発生自体を防ぐことは難しいですが、きちんと対応すればクレームは抑えられます。
ケガや健康にかかわるクレームは具体的な提案をする
ケガや健康にかかわるクレームは以下の例があります。
- 子ども同士のトラブルでケガをしたのに連絡がなかった
- 子どもの体調不良にすぐ対応してもらえなかった
子どもが怪我をしてしまった場合は、すぐに対処しましょう。
小さいケガでも、保護者への連絡は怠ってはいけません。
園長や主任に相談してから今後の解決策や予防策を伝えると、保護者は子どもを安心して通園させられます。
行事関連のクレームは独断で安易に対応しない
保育園では、運動会やお遊戯会など季節ごとに行事が行われます。
保育園の行事に関してのクレームには、以下の例があります。
- 行事の開催日程を変えてほしい
- 劇の配役や題材を変えてほしい
理不尽なクレームも多くみられ、一度対応してしまうと保護者からの要求がエスカレートする恐れがあります。
保育士がひとりで謝ることや対応することは避け、保育園がチームとなって解決してください。
その場では「園に相談し、後日回答させていただきます」とだけ保護者に話し、対応策を話し合ってから結果を伝えてください。
保育士のクレーム事例は3パターンに分かれる
保育士が受け取るクレームは、大きく3パターンに分けられます。
相手がどんなことを伝えたいか考え、保育園としてベストな対応をしましょう。
保育園の運営にかかわるクレームは近隣住民からも
保育士は保護者だけでなく、近所に住む人から保育園の運営に関わる相談を受けることがあります。
楽器の音が近所に響いて騒音問題になったり、私有地に侵入してしまう子供がいたり、保育園としてのマナーが問われるトラブルは早い解決が重要です。
地域の子育てを推進したい保育園は、受け入れられないと運営を続けることが難しいでしょう。
クレームは放置せずに保育園に相談し、全体に共有を行うといった適切な対処をしてください。
理不尽で無理難題に近いクレーム
保護者トラブルに発展するような、理不尽なクレームを受けた経験がある保育士もいるのではないでしょうか。
担任をベテラン保育士に変えてほしい、写真撮影は自分の子供がよく映る位置で行ってほしいなど、常識的ではない要望を伝える保護者もいるようです。
本来は家庭で行うはずのしつけや、自分の子どもにだけ特別な対応を求める保護者には、無理に応える必要はありません。
しかし、その場で対応を断ってしまうと角が立つため、園長や主任に相談してベストな解決策を共有してもらいましょう。
保育士の態度やモラルでクレーム対応が必要な場合も
保育士に心配りのある対応力が見られないと、保護者は不安になります。
笑顔と挨拶で円滑なコミュニケーションを取ることはもちろん、清潔感や安全性に気をつけた身だしなみをしましょう。
保育士個人や保育園でSNSを利用している場合は、発信する内容に気をつけると言ったインターネットリテラシーの共有も重要です。
保育士の態度やモラルにクレームをもらった場合は改善をきちんと行い、どのような対策をするか保護者と共有してください。
保育士のクレーム対応は保護者に信頼してもらうチャンス
クレーム対応の細かいルールや方針は保育園によって異なります。
基本的なポイントは押さえながら、子どもの保護者や家庭の状況によってベストな対応を取りましょう。
自分一人で回答したりトラブルを解決することは避け、上司への相談を第一に行い判断を仰いでください。