保育士として働いている方にとって、離職率は気になる情報ではないでしょうか。
転職を意識しているなら、なおさら新しい勤務先の離職率や働きやすさは気になるでしょう。
保育士不足や、資格を持ちながらも保育士として働くことを選ばない「潜在保育士」の存在も問題視されています。
保育士として働き続けたいと思っていても、労働条件や人間関係で長く続けられない職場もあるでしょう。
より良い職場を見つけるためにも、ここでは、他業種も含めた離職率について説明するとともに、働きやすい職場を見つけるポイントについて紹介します。
目次
保育士の離職率はどれくらい?
保育士の離職率は高い、と聞いたことがある方もいるでしょう。
実際、保育士として働いている方の多くは、毎年退職者がいることを普通のことと感じているのではないでしょうか。
では、実際の統計データで保育士の離職率を見てみましょう。
全体・公立・私立保育施設の離職率
分類 | 退職率 |
---|---|
全体 | 10.3% |
公立 | 7.1% |
私立 | 12.0% |
厚生労働省保育士等確保対策検討会の「保育士等における現状」によると、平成25年の調査では常勤保育士全体の離職率が10.3%です。
さらに公立、私立によっても離職率は異なり、公立の場合は7.1%、私立は12.0%です。
こうしてみると、私立保育園の方が離職率が高いことが分かります。
年代・男女別の離職率
続いて、年代・男女別ではどのような差があるのでしょうか。
残念ながら、年代や男女別の詳細な離職率のデータはありませんでした。
しかし、保育士の平均年齢や勤続年数のデータはあるため、そこから読み解いていきましょう。
異業種と保育士の勤続状況を比較
まず、全職種の平均年齢、勤続年数を比較として知っておきましょう。
全職種を含めたデータによると、平均年齢は42.1歳、勤続年数は12.1年。
就業者の平均年齢 | 42.1歳 |
---|---|
平均勤続年数 | 12.1年 |
保育士では、男性の平均年齢は31.4歳、勤続年数は6.3年、一方女性は、35.1歳、7.7年です。
男性保育士の平均年齢 | 31.4歳 |
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男性保育士の平均勤続年数 | 6.3年 |
女性保育士の平均年齢 | 35,1歳 |
女性保育士の平均勤続年数 | 7.7歳 |
ここから、男性は比較的若年層が多く、勤続年数も年齢に対して長いことから、離職率はそれほど高くないことが分かります。
これは短時間労働者のデータからも明らかで、保育士の短時間労働者のうち、男性の平均年齢は38.2歳、勤続年数は12.4年です。
女性は45.6歳、5.3年と、男性の方が遙かに勤続年数が長く、保育士として勤め続ける人が多いことがわかります。
また、年代に関しては、若年層の早期離職が目立っています。
平成25年の厚生労働省職業安定局「保育士資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者に対する意識調査」によると、保育士の資格を持ちながら保育士としての就職を希望しない求職者、すなわち求職中の潜在保育士のうち6人に1人が保育士を1年未満で離職しています。
さらに、半数以上が勤務年数5年未満で離職しており、早期離職の傾向が明らかです。
ただし、保育士の平均勤続年数が7.6年であることから、離職の理由はさまざま考えられますが、その中に、働きやすい職場で働き続けられる人と、働きにくい職場ですぐに辞めてしまう人の二極化が顕著なこと、また、比較的若年層における保育以外の業種に対する興味が挙げられるのではないでしょうか。
保育士が仕事を辞める理由については、後に詳しく紹介します。
他の業種・職種と比べても離職率は高い?
厚生労働省の平成25年雇用動向調査結果より、「産業別入職・離職状況」を見ると、産業全体の平均離職率は15.6%です。
同じ年の保育士の離職率は10.3%だったため、平均的には離職率は低いと言えるでしょう。
ただし、離職率のランキングで見ると、決して低いとは言えないことが分かります。離職率上位から見ていくと、次のようになります。
- 宿泊業、飲食サービス業」30.4%
- 生活関連サービス業、娯楽業」23.7%
- サービス業(他に分類されないもの)」23.2%
- 医療、福祉」15.2%
保育士を含む「医療、福祉」が4位にランクインしています。
トップスリーが20%を超え、5人に1人は辞める離職率の高さで離職率全体の平均を底上げしていますが、保育士を含む「医療、福祉」が全16業種の中で4番目に離職率が高いことは注目すべきでしょう。
離職率の平均より低くとも、全産業の中では決して低い業種ではないのが現状です。
保育士が仕事を辞める理由TOP3
では、なぜ保育士は離職率が高いと言われるのでしょうか。
実際のデータからも早期離職の傾向は明らかであり、離職後、再び保育士の仕事に就くことは少ないことが分かります。
早期離職と保育士への再就職の少なさが問題と言えるでしょう。
では、保育士が仕事を辞める理由について、紹介していきましょう。
給料が低い
保育士の離職の理由として最も大きな理由が、給料の低さです。
さらに、保育士への就職を希望しない理由としても第一に挙げられています。
それほどまでに保育士の給料は低いのでしょうか。
厚生労働省の保育士等確保対策検討会の「保育士等における現状」によると、平成26年賃金構造基本統計調査による平均賃金は、次に示す通りです。
全職種平均賃金 | 32万9600円 |
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保育士平均賃金 | 21万6100円 |
幼稚園教諭 | 23万1400円 |
全職種の平均賃金と比較すると、保育士の平均賃金は10万円以上差があることが分かります。
保育士の資格を持っている方の中には、幼稚園教諭の資格を取得している方もいるでしょう。
仕事内容も比較的似ていますが、平均賃金は保育士よりも高いことが分かります。この給料の低さは短時間労働者でも明らかです。
1時間当たりの平均賃金を見ていきましょう。
全職種平均 | 1041円 |
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保育士平均 | 980円 |
幼稚園教諭平均 | 1046円 |
保育士は全職種よりも低く、幼稚園教諭は全職種よりも高いことが分かります。
このように、保育士の給料が低いことは、データからも明らかです。
こうした現状から、保育士による職場改善希望では「給与・賞与等の改善」を求める声が多く上がっています。
労働時間が長い
保育士の離職理由の中でも大きな理由を占めるのが、労働時間の長さです。保育士の労働時間はどのくらいなのでしょうか。
勤務時間は労働基準法に則って設定されていますが、実際に働いている時間はさらに長い、ということは保育士の現場ではよくあります。
特に実際の保育現場で、職員の数が少ないために残業しなければならないケースや、事務・雑務で保育時間外に仕事せざるを得ないケースもよくあることです。
さらに研修や各行事などの際に、時間外で残業する人も多いのではないでしょうか。
このように、保育士の仕事といっても、ただ保育を行うだけでなく、連絡帳や日誌などの日常的な書類仕事だけでなく、おたより作成や指導計画、研修報告や事例検討など事務作業が数多く存在します。
さらに、ヒヤリハットやアレルギー児対応の書類を書くなど、突発的な書類仕事もあるでしょう。
それら全てを、保育の合間に時間を見つけてこなさなければならない状況に置かれている保育士がほとんどではないでしょうか。
そうした結果、保育を終えた業務外の時間や、休憩時間を削る、さらには仕事を持ち帰るなど、労働時間外でも仕事をしなければならないケースが増えています。
人間関係のトラブル
人間関係のトラブルは、保育士特有の問題ではありません。
どの職場で働いていても、人間関係のトラブルは離職理由になり得るでしょう。
ただし、保育士は人との関わりが非常に多い職種であり、人間関係のトラブルも他職種と比較して起こりやすいと言えます。
保育士は子どもを育てる仕事です。
同時に、子どもだけでなくその保護者や同じ職場の保育士たちなど、人と関わることが非常に多い仕事です。
そのため、特に忙しい職場では職員間のコミュニケーションがうまく取れず、職員同士のトラブルが起こると収束できないまま悪化することもあります。
また、モンスターペアレントまではいかずとも、保護者対応で悩む保育士は多いでしょう。
こうした悩みを抱え、職場の誰にも相談できない環境で働くことで、離職を決意する保育士も少なくありません。
保育士が転職しよう、と決めた理由はこちらの記事で更に詳しく解説しています。
離職率の高い保育園の特徴
これまでは保育士の離職理由について紹介しました。
では、それらを踏まえた上で、離職率の高い保育園の特徴について紹介しましょう。
サービス残業が多い
離職率の高い保育園とは、保育士にとって働きにくい職場とも言い換えられます。どのような保育園が挙げられるでしょうか。
まず、サービス残業が多い保育園は離職率が高い傾向があります。
保育士にとって、仕事が労働時間外に及ぶことは珍しくありません。
特に運動会や生活発表会などのイベント前には遅くまで残業する保育士は多いでしょう。
その残業が賃金が発生する超過勤務であれば問題ありませんが、サービス残業で、かつ頻繁にサービス残業しなければならない職場であれば、辞めたいと思うのも当然でしょう。
サービス残業をしない、という手段もありますが、他の職員がサービス残業をしている中1人だけ帰るのも人間関係に溝を作ることになりかねません。
サービス残業が根付いている職場では、新たに入った職員もサービス残業しなければならない状況に追い込まれるため、サービス残業を断ち切れない悪循環に陥ってしまうでしょう。
有給消化率が低い
離職率の高い保育園の特徴として、有給消化率が低いことも挙げられます。
一般的に保育士は有給が取りにくい職業と言えます。
それは、慢性的な人手不足のために、休みが取れない状況や、保育士自身が担当する子どもに対する責任感から、積極的に有給を取ろうとしないことが理由として考えられるでしょう。
しかし、保育士も人間である以上、リフレッシュは必要ですし、有給を取る権利があります。
ただし、現実には、自分の希望する日に休みを入れられることは少なく、職員の余裕がある日に互いに譲り合いながら休みを取る職場が多いでしょう。
会議や研修、行事のある日は休んではいけないという暗黙の了解がある保育園もあります。
あまりに有給消化率が低い職場は要注意です。有給消化率が低いということは、それだけ休みが取れない職員体制だという証明でもあります。
職員の数が少なく、ギリギリの人数で運営している場合は、1人でも休むと保育がままなりません。
極端に有給消化率が低い場合は注意しましょう。
一族経営で職員の力が弱い
一族経営の保育園は、アットホームで風通しの良い環境が魅力と言えます。
一方で、非常に働きにくい保育園である可能性も高いのです。
その理由として、一族の力が強すぎるために、一族以外の職員の意見を聞き入れてもらえないためです。
全ての一族経営の保育園に当てはまるわけではありませんが、一族経営では、園長を父親や母親が務め、その子どもが主任やリーダーなどの要職に就いていることが多いでしょう。
運営方針は一族によって決められることが多く、そこに職員の声が入り込む余地がない場合もあります。
また、もし一族の人たちと衝突してしまうと、それ以降風当たりが強くなり、辞職に追い込まれるケースも少なくありません。
ただし、一族経営でも職員を大切にしている保育園はあります。
一族経営の保育園では、職員と一族の関係をチェックすると良いでしょう。
職員同士の空気がギスギスしている
保育士の離職の理由として、人間関係のトラブルについてすでに紹介しましたが、職員同士の空気がギスギスしている保育園は避けた方がいいでしょう。
よほど対人スキルが備わっていて、どんな人とも打ち解け、仲良くなれる自信のある方なら問題ないでしょうが、職員同士の仲があまり良くない職場では、保育を含めた仕事がスムーズにいかないことが多いです。
保育の仕事では、職員同士の情報共有が重要です。
衛生、安全面に関する報告や共有だけでなく、子どもたちそれぞれの発達・発育に沿った保育を行う上でも、職員同士での連絡や相談は欠かすことができません。
しかし、職員同士の空気がギスギスしていると、そうした相談ができるような環境とは言えないでしょう。
さらに、職員同士のギスギスが子どもたちに伝わる可能性もあります。
これでは、保育士だけでなく子どもたちにとっても良い環境とは言えません。
相場よりも給料が低い
相場より給料が低い場合も、注意が必要です。
福祉分野である保育は、儲からないと言われています。
それは利益が出にくいシステムのためです。
保育園では、条例によって職員の配置基準が定められており、0歳児3人に対し保育士1人(3:1)、1歳児では6:1、3歳児では20:1、4歳児以上では30:1です。
乳幼児の保育では職員がより必要で、人件費が非常にかかることが分かるでしょう。
この人件費を抑えることが、利益を出すには一番の近道です。
そのため、利益を出すために、保育士の給料が低く抑えられている場合があります。
こうした保育園では、職員を大切にしようという気持ちが感じられません。
給料以外の部分でも職員を守ろうとする意識が薄いと言えるでしょう。
離職率の低い保育園の特徴
では、離職率の低い保育園はどのような特徴があるのでしょうか。
離職率の低さは働きやすさとも関係しています。
働き続けられる職場を探す上で、どのようなポイントに気をつければ良いのでしょうか。
福利厚生が充実している
離職率が低い、働きやすい保育園としてまず挙げられる特徴が、福利厚生が充実していることです。
保育園の福利厚生と聞いて、どのようなものが思い浮かぶでしょうか。
福利厚生とは法律で定められているもの、企業が独自で定めているものの大きく2種類に分けられます。
法律で定められているものは社会保険や児童手当が当てはまります。
企業が独自に定めるものとしては、住宅手当や交通費、家族手当などが挙げられます。
他の職種と比較すると給料の低さが目立つ保育士のため、住宅手当が充実していると非常に助かるでしょう。
また、園で提供する給食を昼食として無料、もしくは低価格で食べられる園もあります。
こうした独自の福利厚生がどれだけ整っているかも、職員を大切にしている保育園かを知る上で重要です。
職員の数が多い
保育士の職場に対する改善希望は、給料に対するものが圧倒的ですが、次に「職員数の増員」を希望する声が多く、深刻な人手不足がうかがえます。
すでに保育園における保育士の配置基準について述べましたが、早番・遅番業務ではさらに顕著で、たとえ1人の子どもであっても、保育士2人(もしくは保育士1人と保育士でない保育業務経験者等1人)を配置することが義務づけられています。
以前は資格を持つ保育士2人の配置でしたが、1人は資格のない者でも可能になりました。
これは、資格を持つ保育士を2人配置したのでは、圧倒的に人手が足りないからです。
こうした義務づけられた配置の他にも、職員は必要です。
実際には、配置基準である0歳児3人を保育士1人で見ることは不可能でしょう。
保育では、食事、排泄、身の回りの世話だけでなく、遊びなどを含めた活動を行います。
子どもによっては生活リズムもバラバラで、それぞれの子どもに応じて必要な睡眠や活動、食事を保障することが保育です。
流れ作業のようにオムツを替え、食事を与えるだけなのであれば、それは保育とは言えません。
本来の保育を行うのであれば、手厚い職員体制は不可欠です。
職員の数が多ければ、職員の有休消化も希望する日に取ることが可能になり、事務作業のための時間も、労働時間内で取れるように人員配置できるでしょう。
さらに、職員が多ければ1人当たりの負担が減り、一人ひとり余裕を持って仕事ができるようになります。
そうした余裕は、職場の雰囲気にも良い影響を与えられるのではないでしょうか。
子育てママが多く働いている
子育てママが多く働いているかは、職員を大切にしている職場かどうかをはかるポイントでもあります。
働く女性にとって、産休・育休が取れる職場環境かは重要なポイントと言えるでしょう。
保育園は女性の多い職場のため、妊娠した女性が戻ってこられない状況は、死活問題です。
また、子育てママは、子どもの病気や行事などでどうしても休みが多くなりがちです。
特に子どもの熱などで突然帰らなければならないなどの突発的な状況にも対応できる職場であるということは、それだけ職員の配置が手厚く、余裕のある体制を取っていると言えます。
職員の数に余裕があるだけでなく、子育てママが気兼ねなく働いている職場は、急な休みでも「お互い様」の気持ちを持って職員が働いている証明でもあります。
そうした職場は、職員間の雰囲気も良いことが多いでしょう。
一定割合男性職員もいる
保育園は女性の多い職場ですが、男性職員もいる職場も増えています。
特に英語や鼓笛隊など独自のカリキュラムを持つ保育園では、体操の先生として男性職員が活躍していることが多いです。
すでに紹介しましたが、保育士として働いている男性は平均勤続年数も長く、平均賃金も女性より高いことがデータからも明らかです。
これは、男性の保育士が働いている保育園は他の保育園よりも給料が高い可能性がある、ということを示しています。
また平均勤続年数も平均年齢と比べて短くはないことから、働き続けやすい職場であることが分かるでしょう。
統計として、男性職員のいる職場は働きやすい可能性が高いと言えます。
女性ばかりの職場の良さもありますが、男性が加わることで活動に幅が広がったり、さまざまな考え方に触れられるきっかけになる場合もあります。
職場全体の雰囲気にも関わってくるでしょう。
私立保育園より公立保育園の方が離職率は低い
厚生労働省の平成25年の調査において、私立保育園と公立保育園の経験年数が明らかにされました。
経験年数12年未満までは私立の方が高い割合ですが、そこからは公立の方が高く、特に14年以上の経験年数に関しては、私立が20.2%に対し公立が40.4%と、非常に大きな差が見られます。
これは公立保育園の保育士は公務員のため、雇用条件が安定しており離職者が少ないという点と、公立の求人が年々減っているため、経験年数の少ない若年層が少ない点が挙げられるでしょう。
私立に関しては求人は多いものの、待遇に差があり、長く働き続ける人が少ないことが読み取れます。
データからも明らかなように、公立保育園の方が私立保育園よりも長く働き続ける人が多く、働きやすい職場環境だということが分かるでしょう。
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念願の保育士になったものの、人間関係や待遇面での不満から辞めてしまった、という保育士の方は多いでしょう。
中にはもう保育の仕事には就きたくない、という方もいるかもしれません。
しかし保育士の資格を持つ以上、いつでも保育の仕事に携わることは可能です。
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