「介護事務の勉強は独学でもできるの?」
「資格を取るにはどうやって勉強すればいいの?」
そんな風に、介護事務の勉強について悩んでいる方は多いでしょう。
この記事では独学で介護事務を勉強するメリット・デメリットや、おすすめの勉強方法、テキストの選び方などを紹介していきます。
採用時や実務に役に立つおすすめの資格もまとめていますので、ぜひ目を通してみてください。
目次
独学で介護事務の資格は取得できる?
独学というのは人に教えてもらうことなく、自力で知識を身につけていくことを指します。
スクール等には通わず、自分でテキスト等を用意して勉強していくということですね。
結論から言えば、介護事務の資格は独学でも取得することができます。
介護事務関連の資格は全て民間資格で、国家資格より試験難易度が高くありません。
また介護事務資格には受験資格が設定されていないものも多いですので、受験のハードルも低めです。
ただし、独学で勉強を進めていくためにはテキスト選びや勉強方法に関していくつか注意すべきポイントがあります。
まずは介護事務を独学で勉強するメリット・デメリットについて把握しておきましょう。
介護事務を独学で勉強するメリット3つ
介護事務を独学で勉強する主なメリットは下記の3つです
- 学習環境・タイミング・ペース等を自由にできる
- 学習にかかる費用を抑えられる
- スクールに通う時間を有効活用できる
ここから1つずつ解説していきます。
学習環境・タイミング・ペース等を自由にできる
独学であれば、自分のペース、自分のタイミングで勉強を進めていくことができます。
仕事や移動のすきま時間に勉強したり、コンディションによって学習量を自由に調整することもできますね。
スクールに通って勉強する場合は決まった場所、決まった時間の授業を、決められたタイミングで受けなくてはいけません。
しかし、集中できる勉強スタイルは人によって異なりますから、中にはスクール通いにストレスを感じてしまう人もいます。
独学なら時間や場所に縛られず、自分のペースを守って勉強に取り組むことができますよ。
学習にかかる費用を抑えられる
もし介護事務の勉強のためにスクールに通うとすれば、講座費用はおよそ5~7万円ほど必要になってきます。
通信講座の場合は3~5万と、スクールよりはお手頃ですが、それでも出費は大きいです。
一方独学であればかかる費用は教材費と、ノートや電卓などの勉強道具のみです。
トータルで学習にかかる費用を数万円も節約できるのは嬉しいですよね。
講座費用だけでなく交通費もかからないところもメリットと言えます。
スクールに通う時間を有効活用できる
もしスクールに通うとなれば、講座の開講時間に合わせて指定の場所に通わなければいけません。
スクールの場所にもよりますが、場合によっては往復の移動時間が長くなってしまう可能性がありますよね。
就業中の方や家事・育児と並行して勉強していきたい方にとっては、スクールに通う時間を確保するのも大変です。
独学であれば、移動にかかる時間を家事や育児にあてるもよし、もちろん資格の勉強にあてることだってできます。
移動にかかる体力も温存しつつ、時間を有効に活用することができますよ。
介護事務を独学で勉強するデメリット3つ
介護事務を独学で勉強する主なデメリットは下記の3つです
- テキスト選びが難しい
- わからない問題がある時に聞ける人がいない
- モチベーションの維持が難しい
テキスト選びが難しい
スクールや通信講座を利用する場合は指定のテキストが用意されることが多いですが、独学の場合は自分でテキストを探すところから始めなくてはいけません。
また介護事務資格にはいくつかの種類があり、どれを受験するかによって試験範囲が異なります。
自分が受けたいと思っている資格の試験範囲に合ったテキストを見つけなければいけないということですね。
さらに、市販されている介護事務関連資格のテキストや問題集は数が少ないため、書店などにうまく取り扱いが無く購入が難しいことも。
独学で介護事務を勉強する際に、1番最初の難所がこのテキスト選びなのです。
介護事務の大変なところは?仕事は難しい?体験談や資格の難易度も紹介
最新情報の載っているテキストであることが大切
介護事務として働くために重要な知識である「介護保険制度」は、3年に1度見直されます。
市販のものでも、中には直近の改正に対応していないものが混ざっていることがありますので注意しましょう。
また仮に介護事務経験者の知り合いがいても、過去に使っていたテキストをもらって勉強する、というのはやめましょう。
改正前の古い制度を覚えてしまうと、後々知識を修正するのに苦労することになります。
わからない問題がある時に聞ける人がいない
介護事務の勉強内容の中には、基礎知識がない人にとって難解な部分もあります。
例えば「介護保険点数表」は介護事務の中でも特に大切な部分ですが、全くの介護事務未経験者が自力で理解するのは簡単なことではありません。
そういった「どうしても理解できない…」という時に頼れる人がいない点は、独学のデメリットと言えます。
また間違いを指摘してくれる人もいないため、誤った知識をそのまま身につけてしまう危険もあります。
モチベーションの維持が難しい
自分で学習スケジュールを組んで進めていく独学は、モチベーションの維持もとても大切です。
勉強をしなくても怒る人はいませんし、誰かと比べて焦ることもありませんが、その分自分を律してコツコツと勉強を続ける精神力が必要なのですね。
自力で解決できない問題でつまずくことが多くなると、だんだんと気持ちも落ち込んでしまうもの。
学習が先に進みづらくなりモチベーションが下がることで、次第に勉強が手につかなくなってしまうこともあります。
そのため人によっては、スクールで講師にわからないことを聞ける環境や、一緒に勉強する仲間がいたほうが学習がはかどりやすいということもあるでしょう。
テキスト選びの注意点
すでにお伝えしていましたが、独学で介護事務を勉強するにあたってテキスト選びは非常に大切です。
そこで、介護事務のテキスト選びの注意点についてあわ溜めて紹介しておきます。
最新情報に対応したテキストを選ぶ
介護事務として働くために重要な知識である「介護保険制度」ですが、こちらは3年に1度の頻度で見直されます。
市販のものでも、中には直近の改正に対応していないものが混ざっていることがありますので注意が必要です。
ちなみに直近では2021年に改正され、次の改正は2024年です。
つまり現状では、2021年の改正が反映された最新のテキストを入手することが大切なのですね。
受験したい資格に合うものを選ぶ
介護事務の資格はいくつかあり、受ける試験によって出題範囲が異なります。
1冊のテキストがすべての介護事務関連知識を網羅しているとは限らなかったり、テキストによって特化している部分が違ったりもしますからね。
受験したい資格が決まったら一度出題内容を確認し、それに合ったテキストを選ぶようにしましょう。
介護事務の資格取得におすすめのテキスト
介護事務の資格を独学で取得するために、おすすめのテキストを紹介していきます。
世界一やさしい「介護事務」の仕事入門
介護事務として働く上で最低限知っておきたい基礎知識について分かりやすく解説されている初心者向きのテキストです。
資格取得に必要な知識だけでなく、介護事務の仕事内容やキャリアアップについても紹介されていて、業務への理解も深められる一冊となっています。
日本医療報酬調査会理事を務め、医療と介護事務のプロフェッショナルである水口錠二さんによって書かれています。
タイトル | 世界一やさしい「介護事務」の仕事入門 |
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発行 | ぱる出版 |
税込み | 1,650円 |
出版日 | 2021/6/4 |
護報酬パーフェクトガイド 2022-23年版
介護報酬請求に関わる制度や手続きを、基礎から応用まで実務者視点で分かりやすく解説したテキストです。
実際のケアプランの事例に沿って様々なパターンの算定・請求ポイントを、具体的かつ詳細に解説しています。
2021年4月の改正内容にもしっかりと適応していますよ。
タイトル | 介護報酬パーフェクトガイド 2022-23年版 |
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発行 | 医学通信社 |
税込み | 2,750円 |
出版日 | 2022/3/3 |
介護福祉経営士テキスト「基礎編Ⅱ」〈2〉介護報酬制度/介護報酬請求事務——基礎知識の習得から実践に向けて 第4版
このテキストは「介護福祉経営士」を目指す方向けのものです。
紹介したいのは、全4巻からなるこちらのテキストの中でも2巻「介護報酬制度/介護報酬請求事務」です。
介護報酬の仕組み、介護報酬の請求の流れ、主な基本報酬と加算算定要件等について解説されています。
介護事務の内容に特化して解説されているのが2巻なので、介護事務を目指す場合には1・3・4巻は購入しなくても問題ないでしょう。
タイトル | 介護福祉経営士テキスト「基礎編Ⅱ」〈2〉介護報酬制度/介護報酬請求事務——基礎知識の習得から実践に向けて 第4版 |
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発行 | 日本医療企画 |
税込み | 2,750円 |
出版日 | 2021/9/1 |
独学で介護事務知識を修得するための勉強方法
テキストの選び方のポイントを抑えたところで、ここからは独学で介護事務知識を修得するためのおすすめ勉強方法を紹介します。
まずは基礎を固めることに集中する
介護事務の試験範囲は広いですから、まずは範囲全体の基礎を固めましょう。
発展問題を解くためには、複数の知識を集約して考えなければいけません。
一部分の基礎を身につけたからと言って応用に進んでも、結局基礎に戻らなければいけなくなり効率が悪くなります。
焦って応用問題を解こうとせず、全範囲の基礎知識を網羅してから、次のレベルに進みましょう。
問題は繰り返し解く
問題は1度解いて終わりではなく、何度も繰り返し解くようにしましょう。
間違えた問題を繰り返し解くのももちろんですが、正解した問題でも、2回、3回と繰り返し解いた方が良いです。
なぜなら1回目をまぐれで正解している可能性があるからですね。
勘で選んだら当たってしまった、という場合、自分の知識をもとに回答したわけではありません。
にもかかわらず正解だったからと言って復習せずにいると、本番の試験でも勘で回答することになり、今度は不正解を選ぶかもしれません。
そうならないためにも、しっかりと自分の知識として定着するまで、問題は何度も繰り返し解くようにしましょう。
余裕を持った学習スケジュールを立てる
スクールや通信講座と違い、独学の場合自分で学習スケジュール管理しなくてはいけません。
介護事務に限ったことではありませんが、独学での勉強は人に急かされたり怒られたりする緊張感がないため、学習スピードが緩やかになる傾向があります。
はじめは張り切って、まとまった勉強時間をとっていても、次第に失速していくことも良くあります。
そのため、目指す資格の試験日に対してぎりぎりの学習プランを組んでしまうと、知識の習得が間に合わなくなってしまう可能性があるのですね。
その点を考慮して余裕を持った学習スケジュールを組みましょう。
介護事務の資格を取るメリット
ここまで、介護事務を独学で勉強する方法や資格取得のためのポイントについて紹介してきました。
しかしながら、実は介護事務の仕事に就くために必須の資格というものはありません。
無資格でも介護事務として働くことは可能なのです。
では、介護事務の資格を取るメリットとは一体何なのかを確認していきましょう。
採用時に有利になる
介護事務は資格がなくても働くことができますが、資格があれば採用時のアピールポイントになります。
事務職や介護業界が全くの未経験だった場合、採用側もこの人が本当に介護事務として働けるのかを判断するのが難しいです。
もし介護業界の実務経験や、事務職の経験がある人が同じ面接を受けていたなら、当然そちらが優遇されるでしょう。
しかし、全くの未経験でも介護事務関連の資格を持っているとなれば話は違います。
採用側もほぼ即戦力として期待してくれるため、就職や転職で有利になることは間違いありません。
業務に慣れるのが早くなる
介護事務として就業する前に資格を取っておくことで、早くから介護事務の実務に慣れることができます。
介護業界は慢性的に人手不足ですから、新人の教育に十分な時間をとれないことも多いのが現実です。
現場のためにももちろん助かりますが、何より自分が現場に入った後困らないためにも、資格は持っていたほうが良いでしょう。
キャリアアップしやすい
介護事務の平均年収はそこまで高くなく、実際日本の平均年収よりは低いです。
キャリアアップを目指す上でも資格の有無は大切になってきますので、早いうちから取得しておくに越したことはありません。
また施設によっては資格取得者に資格手当をつけてくれることもありますよ。
介護保険の知識は実生活でも役に立つ
介護事務の業務で重要な介護保険制度は、実生活にも活用できる知識です。
将来家族に介護が必要になった時や、自分が介護保険サービスを利用する時に役に立つでしょう。
また、身近な人が介護サービスの利用について困っている時にアドバイスできる場面もあるかもしれません。
介護は誰にでも必要となる可能性の高いサービスをですから、仕事以外でも役に立つ機会は多いでしょう。
介護事務に向いている人とは?持っていると有利な資格や業務の特徴も紹介
採用時や実務に役立つおすすめ介護事務資格5つ
採用時や実務に役立つおすすめの介護事務関連資格を紹介します。
- 介護事務管理士
- ケアクラーク
- 介護報酬請求事務技能検定
- 介護事務実務士
- 介護事務認定実務者
知名度の高さや受験のしやすさ、難易度などもまとめていますので参考にしてみてください。
介護事務管理士
介護事務管理士とは、事業所の受付、会計、レセプト作成業務等の介護事務全般のスキルを証明する資格です。
試験内容は介護保険制度と介護請求事務の知識を問うマークシート形式の学科。
それからレセプト(介護給付費請求書)の作成や点検の実技です。
難易度はやや高めですが比較的知名度のある資格ですので、就職や転職のアピールポイントとしてもおすすめですよ。
受験資格もありませんので誰でも受験することができます。
受験資格 | 特になし |
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知名度 | ◎ |
受験しやすさ | ◎ |
難易度 | 合格率約50% |
受験料 | 6,500円 |
認定元 | JSMA技能認定振興協会 |
ケアクラーク
ケアクラークとは介護事務に必要な知識や技能、高齢者・障碍者の心理や医学一般の知識について評価する資格です。
試験はマークシートの学科と、介護報酬請求事務や介護給付費明細作成の実技によって行われます。
それぞれ70%以上の得点を取ることで合格となります。
こちらも介護事務の関連資格の中では知名度の高い資格となっていますよ。
受験資格も特に設けられおらず、在宅での受験も可能なので受験しやすいです。
受験資格 | 特になし |
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知名度 | ◎ |
受験しやすさ | ◎ |
難易度 | 合格率約60~70% |
受験料 | 6,900円 |
認定元 | 一般財団法人 日本医療教育財団 |
介護報酬請求事務技能検定
介護報酬請求事務技能検定は、介護事務に必要な介護報酬請求業務のスキルを問う検定です。
ケアマネジャーの書類作成作業もサポートできるようになる等、実務に役立つ書類作成業務のスキルを身につけることができます。
ただし受験資格として、日本医療事務協会認定の介護講座を修了している必要があります。
専門の講座を受講していることもあり、独学よりも学習効率が良くなっているためか合格率は高めですね。
介護事務の関連資格としての知名度も高めです。
ただ受験資格があることと、講座の費用がかかることから、受験押しやすさは△としました。
受験資格 | 日本医療事務協会認定の介護講座を修了している 受験申請のあった高校・専門学校・短期大学・大学等 |
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知名度 | ◎ |
受験しやすさ | △ |
難易度 | 合格率約84% |
受験料 | 6,600円 |
認定元 | 日本医療事務協会 |
日本医療事務協会認定の介護講座のコースと費用は下記の通りです。
通学コース | (6時間×3日間) 4万9,500円 |
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通信コース | (最短1か月) 4万7,300円 |
通信コースの方は若干価格が安いですが、修了までの期間が通学に比べてかなり長いです。
転職したいタイミングや、現在就業しているのか等の状況に合わせて、最適な方法を選択して受講しましょう。
介護事務実務士
介護事務実務士とは、介護報酬請求業務に必要なスキルを評価する資格です。
在宅受験の介護情報実務能力認定試験を合格するか、指定の通信講座を修了することで資格を取得することができます。
受験資格の特になく、家事や仕事と両立しながら目指しやすい資格といえます。
合格難易度は中級といったところですが、受験難易度はかなり易しいですね。
受験資格も特になく、誰でも受験することができます。
費用が少し高めなので、受験のハードルが高いと感じることもあるかもしれません。
受験資格 | 特になし |
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知名度 | 〇 |
受験しやすさ | 〇 |
難易度 | 合格率約67.5% |
受験料 | 試験の場合9,240円(7,700円+合格した場合の認定証発行手数料1,540円) 通信講座の場合3万8,100円(講座価格3万5,000円+認定証発行手数料3,100円) |
認定元 | 特定非営利活動法人 医療福祉情報実務能力協会(MEDIN) |
介護事務認定実務者
介護事務認定実務者は、介護事務に関する知識技能を評価する資格です。
試験内容は学科とレセプト作成の実技。
在宅にも対応しており気軽に挑戦しやすい資格です。
受験資格 | 特になし |
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知名度 | 〇 |
受験しやすさ | ◎ |
難易度 | 合格率約60~80% |
受験料 | 一般5,500円、団体5,000円 |
認定元 | 全国医療福祉教育協会 |
介護事務を独学で勉強するには事前準備が大切
介護事務は独学でも知識を身につけることができ、資格取得も目指すことができます。
ただし、独学の場合テキストを自分で用意したり、目指す資格試験に間に合うよう自分で学習スケジュールを管理したりする必要があります。
まずは取りたい資格を決定し、試験の開催日程の確認や対応したテキスト探しをしましょう。
独学で勉強を進めていくためには、事前準備と計画性が非常に重要ですからね。
もし自信がない、自分は独学には向いていないかも、という場合にはスクールや通信講座の活用も検討してみましょう。