介護事務に興味があり、向いている人の特徴や必要な能力について知りたいという方も多いでしょう。
この記事では介護事務に向いている人の特徴や、介護事務として働くために知っておきたい業務の特徴、あると有利な資格等について紹介していきます。
介護事務へ就職や転職を考えている人はぜひ参考にしてみてください。
目次
介護事務の業務内容
まずは介護事務の業務内容につて紹介します。
介護業界ならではの専門的な業務もありますので注目してみてください。
一般事務との違いについて把握しておきましょう。
介護報酬請求業務
介護報酬請求業務というのは、施設や事業所が介護サービスを提供した際に支払われる報酬を請求する業務です。
介護報酬は原則として利用者から1割~3割、残りを国保連が負担し、総額はサービスの種類や利用者の要介護度など、様々な条件を考慮して決定されます。
つまり利用者宛と国保連宛で、案件ごとに2ヵ所分の請求書を作成する必要があるということですね。
そのうち、国保連への請求書のことをレセプトとも呼びます。
介護報酬請求業務には、「介護保険制度」「介護報酬請求」に関する専門知識が欠かせません。
ケアマネジャーのサポート業務
ケアマネジャーとは、介護を必要とする人がサービスを受けられるよう、利用者と事業者の間に入り調整する人のことです。
主な業務には介護給付費の管理、要介護認定に必要な書類の作成、ケアプランの作成などがあります。
サポート範囲に関しては施設によって異なりますが、上記のようなケアマネジャーの業務を一部、介護事務が補助する場合があります。
一般事務業務
介護事務といっても介護にまつわる専門的な業務だけでなく、一般的な事務業務も行います。
消耗品の在庫管理や備品の発注、それに伴う伝票の作成。
もちろん経費の支払いなどの会計処理全般も担当します。
電話対応・来客対応
介護事務は、新規利用者の受付や、利用者家族の訪問、電話問い合わせ等にも対応します。
総合的な窓口業務を担当することから、施設の顔といっても過言ではありません。
介護職のサポート(兼務の場合あり)
施設によっては、介護事務でも介護職員の補助のような業務を行うこともあります。
業務範囲は施設によって異なりますが、例えばレクリエーション準備・片付けや、送迎時の利用者の誘導などですね。
場合によっては食事作りや配膳、洗濯などの生活援助も行うことがあります。
「介護事務」として採用されているからには、基本的には事務業務専門のポジションではあります。
しかし常に人手不足の業界ということもあり、「現場を手伝ってほしい」とお願いされることも多いのです。
介護事務に向いている人の特徴
では、介護事務に向いている人の特徴にはどんなものがあるかみていきましょう。
福祉に関心がある
介護事務は、福祉に関心がある人であれば年齢に関係なく適性があると言えます。
事務なのだから、スキルがあれば業界への興味は関係ないのでは?と思う方もいるかもしれません。
しかし介護事務は、利用者と関りがあるのはもちろん、利用者家族への対応をする第一窓口でもあります。
施設の信頼や評判を左右する重要なポジションということですね。
ただの事務職ではなく、福祉に従事している者という認識をもって、サービスを求める人に寄り添えるような人が向いていると言えます。
数字が得意
介護事務は会計・経理業務を担当するため、数字が得意な方に適性があります。
また介護報酬請求業務では特に正確な仕事が求められるため、堅実にコツコツ作業をこなせる人が向いていますよ。
請求業務に必要な計算自体はそれほど難しいものではありません。
ただしミスがあるとその月の介護報酬が受け取れなかったり、利用者からの信用が下がり施設の評判に影響してしまうこともありますからね。
デスクワークが苦にならない
介護事務の仕事はほとんどがデスクワークです。
介護職と兼務する場合などは一時的に現場に出ることもありますが、それでも勤務の大半はPCを使った座り仕事となります。
1日中デスクについていることが苦にならない人、PCの操作が得意な人、コツコツと作業を進めることが好きな人には向いていると言えます。
PCの扱いに慣れていない方は、仕事に慣れるまでに時間がかかるかもしれません。
Officeソフトの基本操作程度は、就業前にマスターしておいた方がいいでしょう。
また目が疲れやすい、肩こりがひどい、腰痛を持っているという方は、場合によっては症状が悪化してしまう可能性があるので注意しましょう。
PC用の眼鏡や、腰に負担がかからないようクッションを用意するなどして対策するのがおすすめです。
期限厳守できる
介護報酬請求は月ごとに必要な業務で、国保連宛のレセプトは提出期限が決まっています。
期限に間に合わず請求が遅れると、その月の介護報酬を受け取れず施設の運営に影響が出てしまいます。
そのため介護事務には、締め切り位に間に合うようしっかりとスケジュール管理する能力が求められるのですね。
積極的にコミュニケーションが取れる
事務といっても介護事務は書類作成だけでなく、人とコミュニケーションをとる機会も多いです。
利用者や利用者の家族とお話をすることもあれば、医療機関や保健所の職員と連絡を取り合うこともあります。
事務作業は個人で黙々と進めていくものというイメージがありますが、積極的なコミュニケーションを取りながら周囲と連携していく力も、介護事務には求められます。
丁寧な言葉遣いができる
介護の話題というのは、多くの場合利用者や利用者家族にとって繊細な問題です。
配慮の感じられないフランクな話し方などは、場合によっては施設の信用に影響してしまいます。
最低限のビジネスマナーとして、場面に合った丁寧な言葉遣いができることは大切ですよ。
働く前に知っておきたい介護事務の特徴
介護事務として働く前に把握しておくべきポイントについて紹介します。
介護事務には意外と知られていない特徴が多く、仕事を開始する前と後でイメージとのギャップを感じている人が多いのです。
そうならないよう、介護事務の良い面、大変な面などの特徴をあらかじめ把握しておきましょう。
介護報酬請求業務には専門知識が必要
介護事務は一般的な事務業務だけでなく、「介護報酬請求(レセプト作成)」もメイン業務となっています。
正しく介護報酬を請求するためには、「介護保険制度」「介護報酬請求」などの専門知識が必要不可欠ですからね。
もし業務開始時にそれらの知識がない場合は、通信講座を使ったり独学で勉強するなどして、業務と並行して学習も進めていく必要があります。
また、介護保険制度は3年に1度見直され改正が入るので、その都度知識を更新していかなくてはいけません。
一般事務と比べて将来性がある
事務職はAIに代替されていくという話はよく聞きますよね。
ルーティン作業や数字データの扱いなどはAIの得意分野であり、将来的には事務業務の8割がAIによって削減可能とも言われています。
そういった背景もあり、事務職の求人は今後さらに減少傾向となることが見込まれているのです。
ただしそんな中でも、介護事務は一般事務とは違い専門性の高い業務が多いことから、AIへの置換が難しいと言われています。
また高齢化も進んでいることもあり、介護業界の需要はまだまだ上がっていくことが予想されます。
それに伴って介護事務の需要も増加していくでしょうから、事務職の中でも介護事務は将来性のある仕事だと言えるのですね。
多様な働き方を選べる
介護事務は正社員、派遣社員、パート等様々な雇用形態での募集があります。
社員として安定して働きたい、家事や育児と両立したい等、ライフスタイルに合った働活き方ができるのも特徴です。
介護職と兼務する可能性がある
基本的には事務業務がメインではありますが、業界の性質上施設は慢性的に人手不足であることが多く、事務職でも介護職を兼任する場合が多いです。
事務作業を進めつつ利用者の生活サポートもしなければいけないため、なかなかメイン業務に集中できない…なんてことも。
介護事務の業務範囲は施設によるため、必ず兼務するというわけではありません。
事務業務専門で働く場合ももちろんあります。
ただ「事務専門のつもりでいたのに現場に出るとは思わなかった」と驚く方も多いので、業務開始前に施設に兼務するかどうかは確認しておくと良いでしょう。
毎月月初から10日までが繁忙期
介護報酬請求は月ごとに行う必要があり、国保連への請求は毎月10日までと決められています。
そのため、毎月月初から10日にかけてが介護事務の繁忙期となります。
この時期には残業が増える傾向にあり、どうしても間に合わないという場合には出勤予定でない日に急遽出勤しなければいけない、なんてことも。
すでに紹介していましたが、請求業務が間に合わないということは、その月の介護報酬の受け取りが大幅に遅れるということです。
施設の運営に影響が出かねない責任重大な業務ということもあり、残業も増えがちになります。
介護事務のつらいところは?辞めたいと思う人が多い理由や体験談を紹介
介護事務の給与水準は介護職とほぼ同じ
厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、月給制の介護事務の平均給与は下記のようになります。
介護事務(常勤) | 31万1,120円 |
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介護事務(非常勤) | 20万1,730円 |
また月給制の介護職の平均給与は下記の通りです。
介護職(常勤) | 31万5,850円 |
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介護職(非常勤) | 19万6,630円 |
このように、介護職と介護事務の給与水準はほぼ変わらないことが分かります。
年収を上げたい場合には、介護関連の資格などを取得すると手当てがつくことが多いですよ。
あると有利な介護事務関連資格6つ
介護事務をするために必須の資格はありません。
ただし紹介していたように、介護事務として勤務していくためには専門知識が必要となる場面が多いです。
必須ではなくとも、介護事務関連の資格を持っていることは採用時、実務開始時の両方で有利に働くことは間違いありません。
ここでは介護事務の業務に役立つ関連資格を紹介していきますので、ぜひ確認してみてください。
介護事務管理士
介護事務管理士とは、事業所の受付、会計、レセプト作成業務等の介護事務全般のスキルを証明する資格です。
試験内容は介護保険制度と介護請求事務の知識を問うマークシート形式の学科。
それからレセプト(介護給付費請求書)の作成や点検の実技です。
受験資格に制限はなく、誰でも受験することができますよ。
受験資格 | 特になし |
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難易度 | 合格率約50% |
受験料 | 6,500円 |
認定元 | JSMA技能認定振興協会 |
ケアクラーク
ケアクラークとは介護事務に必要な知識や技能、高齢者・障碍者の心理や医学一般の知識について評価する資格です。
試験は学科と実技によって行われ、それぞれ70%以上の得点を取ることで合格となります。
受験資格は特にありません。
受験資格 | 特になし |
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難易度 | 合格率約60~70% |
受験料 | 6,900円 |
認定元 | 一般財団法人 日本医療教育財団 |
介護報酬請求事務技能検定
介護報酬請求事務技能検定は、介護事務に必要な介護報酬請求業務のスキルを問う検定です。
ケアマネジャーの書類作成作業もサポートできるようになる等、実務に役立つ書類作成業務のスキルを身につけることができます。
ただし受験資格として、日本医療事務協会認定の介護講座を修了している必要があります。
受験資格 | 日本医療事務協会認定の介護講座を修了している 受験申請のあった高校・専門学校・短期大学・大学等 |
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難易度 | 合格率約84% |
受験料 | 6,600円 |
認定元 | 日本医療事務協会 |
日本医療事務協会認定の介護講座のコースと費用は下記の通りです。
通学コース(6時間×3日間) | 4万9,500円 |
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通信コース(最短1か月) | 4万7,300円 |
介護事務実務士
介護事務実務士とは、介護報酬請求業務に必要なスキルを評価する資格です。
在宅受験の介護情報実務能力認定試験を合格するか、指定の通信講座を修了することで資格を取得することができます。
受験資格の特になく、家事や仕事と両立しながら目指しやすい資格といえます。
受験資格も特になく、誰でも受験することができます。
受験資格 | 特になし |
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難易度 | 合格率約67.5% |
受験料 | 試験の場合9,240円(7,700円+合格した場合の認定証発行手数料1,540円) 通信講座の場合3万8,100円(講座価格3万5,000円+認定証発行手数料3,100円) |
認定元 | 特定非営利活動法人 医療福祉情報実務能力協会(MEDIN) |
介護事務資格(介事管理専門秘書検定資格)
介護事務資格を取得すると、介護報酬請求業務をはじめ、受付・相談業務、利用者や利用者家族、施設スタッフのメンタルサポートなども行うことができます。
ケアマネジャーのサポート業務も可能になり、活躍の幅が広がりますね。
元々は「介事管理専門秘書検定資格」という名称でしたが、現在は「介護事務資格」に変更となっています。
受験資格 | 認定教育機関実施する履修カリキュラムを修了していること |
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難易度 | 合格率非公開 |
受験料 | 5,600円 |
認定元 | 一般財団法人 日本能力開発推進協会 |
介護事務資格の講座は、認定教育機関の「キャリアカレッジジャパン」で開かれています。
コースの詳細は下記の通りです。
コース | 通信 |
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受験費用 | 5万600円 |
期間 | 3か月~最長12か月 |
介護事務認定実務者
介護事務認定実務者は、介護事務に関する知識技能を評価する資格です。
試験内容は学科とレセプト作成の実技。
在宅にも対応しており気軽に挑戦しやすい資格です。
受験資格 | 特になし |
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難易度 | 合格率約60~80% |
受験料 | 一般5,500円、団体5,000円 |
認定元 | 全国医療福祉教育協会 |
介護事務に求められるのは「福祉への関心・経理スキル・ビジネスマナー」
介護事務に向いている人の特徴や、介護事務として働く前に知っておくべき業務の特徴等について紹介しました。
特に「福祉への関心・経理スキル・ビジネスマナー」は、介護事務に求められる能力だといえるでしょう。
また介護事務には一般事務にはない専門的な業務もたくさんあります。
介護業界ならではの事情や特色もあらかじめ理解しておくことで、良い転職、良い就職に繋げていただけたらと思います。