管理薬剤師という職業に就きたいと考えた時、最初に疑問に思うのは、何か専門の資格を取得する必要があるのかどうかではないでしょうか。
管理薬剤師は、国家資格である薬剤師の資格を持っている人であれば、誰でも就けるチャンスがあります。
そこで、管理薬剤師になる方法や具体的な仕事内容について見ていきましょう。
目次
管理薬剤師とは?
管理薬剤師とは、薬を扱う場所に最低ても1人は配属される有資格者を指し、国家試験や民間で行っている試験を、改めて受ける必要はありません。
しかし、薬剤師の「資格さえ取得していれば」管理薬剤師になれるわけではないのです。
また、管理薬剤師になれたとしても永久的に働き続けられるわけでなく、管理薬剤師として業務をする、続けるためには、一定のスキル及び条件が必要になります。
管理薬剤師になるには?
管理薬剤師になるためには、どのようなスキルと条件が備わなければならないのか、最も市民の生活に近い調剤薬局を用いて解説します。
薬局では、薬剤の監督、他の薬剤師及び従業員の監督をするため、1店舗に必ず1人在籍していなければなりません。
衛生面や業務を遂行するうえで問題が生じた場合には、改善するよう指示する職務を担っています。
そのため、問題点が見られれば、経営者や薬局の設立者に進言することもあるのです。
もちろん、薬剤師としての実務経験は必要ですが、キャリアさえあれば良いのではありません。
従業員をまとめる力、状況毎に的確な指示を出せる能力、問題点を指摘するだけではなく、どうすれば良いかも考えられる提案力も必要です。
さらには、他の薬剤師や従業員が「この人にならば任せられる」「ついて行ける」と思えるリーダーシップ等が大事だといえるでしょう。
ほかにも、保険の請求手続き等に必要な医療事務の知識もあれば、重宝されます。
これらの働きや能力が認められれば、他の薬剤師や従業員をまとめる者として、薬局の設立者や経営者から管理薬剤師というポストに任命されるのです。
また、ひとことで「管理薬剤師」といっても、調剤薬局で勤務している場合のみを指すのではありません。
ドラッグストアや一般企業等に勤めている場合でも、同じように管理薬剤師と呼ばれる人たちはいます。
次に、管理薬剤師はどんな仕事をしているのかについて詳しくみていきましょう。
管理薬剤師の仕事内容は?
管理薬剤師の仕事内容として、主に6つのものが挙げられます。
現場マネジメント
1つ目が、現場マネジメントです。
管理薬剤師になるまでの過程はさまざまですが、自分の店舗を誰よりも理解していなければならず、大きな責任があることは共通しています。
具体的には、1日あたりの患者数、処方箋の枚数、どの病院・クリニックからの処方箋が多いか、処方箋の技術科1枚あたりの金額、スタッフへのフォローとシフトの管理、現場の問題提起・解決などが挙げられます。
ほかにも、人事マネジメントを行うこともあるでしょう。
調剤・監査・投薬・薬歴作成
2つ目が、調剤・監査・投薬・薬歴作成です。
薬剤師は調剤の経験をメインに積み、ミスなくこなせるようになったのちに、投薬と薬歴作成を行うようになります。
まだ日が浅い新人には、管理薬剤師が監査をした後、投薬、薬歴作成の業務を付き添って指導することが一般的です。
監査業務は企業によって異なりますが、基本的には責任を持つ管理薬剤師が行なっています。
しかし、患者が大量に押し寄せた時や、内科や小児科の場合、粉薬やシロップ剤の一包化のために時間がかかってしまうため、臨機応変に管理薬剤師が調剤に入って他の薬剤師が監査を行うことも珍しくありません。
患者数に関わらず、管理薬剤師の権限を利用して指示をする場合もあります。
さらに、薬歴記載を行い、同じ患者が訪れた時に他の薬剤師が見ても対応ができるよう指導する必要もあるでしょう。
苦情への対応
3つ目が、苦情への対応です。
患者からのクレーム対応は、管理薬剤師の重要かつ大変な役目の1つだといえます。
例えば「請求書の計算が違う」「薬の数が足りない」など、患者の勘違いによるものだったという場合も含めて、薬局がクレームを受けることは多いです。
中には悪質なクレームもあり、薬が足りないとの虚偽のクレームを行って薬を不当に多く受け取ろうとしたり、薬局側が謝罪訪問をしたところ暴力をふるったりと、刑事事件に発展したケースもあります。
もっとも、調整薬局の場合、原則としてクレームを担当するのは窓口の医療事務スタッフもしくは管理薬剤師ではない一般の薬剤師です。
しかし、人手が足りない現場であれば、管理薬剤師であっても対応せざるを得ない場面があるでしょう。
いずれにしろ最終的に責任を負うのは現場責任者である管理薬剤師のため、クレームを適切に処理するスキルは不可欠になります。
在庫管理
4つ目が在庫管理です。
薬局の場合にはインフルエンザ関連商品など、時期によって売れる商品が大きく変動します。
年度によっても違いがあるほか、TVやインターネットの情報の影響も受けるため、常に最新の情報をチェックすることも必要です。
現状の分析のみならず、将来の需要を見越した仕入も行わなくてはなりません。
薬品の中には高価なものもあり、常に必要な量だけ確保しておくことは非常に難しい作業です。
とりわけ、調剤薬局やドラッグストアなどに商品を卸す医薬品卸企業においては、多くのメーカーからの膨大な種類と量の薬品を管理することになります。
各営業所に1人配属されることが義務付けられている管理薬剤師の在庫管理は、大変な作業です。
在庫商品を店内のどこに置けば売れるようになり、スタッフも作業しやすくミスが減るかなどの工夫も在庫管理の仕事の1つといえます。
現場責任者である管理薬剤師の重要な業務であり、幅広い視点からの検討が必要になるでしょう。
学校薬剤師
5つ目が、学校薬剤師としての仕事です。
学校薬剤師の仕事には、町や市の学校の衛生検査があり、学校の水道水の水質検査、夏に使用するプールの塩素濃度の検査を行います。
水道水は規定内の水質であるかが調査され、プールの塩素濃度はチェック項目で調査が行われるのです。
衛生検査以外にも薬物乱用に関しての講演などもあり、子供も教職員も興味をもちやすく簡単で分かりやすい言葉を使って危険性を伝えます。
犯罪となる薬物には麻薬、覚せい剤、危険ドラッグがあることや、使用した場合の現実を伝えることが、価値がある仕事です。
薬物乱用の防犯にもなり地域社会に協力できる意味深い仕事であるといえるでしょう。
学校薬剤師は、教育委員会が地域薬剤師会に相談し、地域薬剤師会が薬剤師を推薦することで就くケースが多いです。
地域に密着している薬局で管理薬剤師を勤めている人や、大手で調剤を扱える薬局チェーン店で働いている管理薬剤師であれば選ばれる可能性があります。
セミナーの講師
6つ目がセミナーの講師です。
コメディカル向けのセミナーで講師を務め、自分が働いている薬局の取り組みや、臨床などを話します。
企業や薬剤師会が主催することもあり講演時間は1時間30分ほどのもののほか、市民ホールなどで薬の豆知識やポイントなどを分かりやすく伝えるケースも多いです。
大手企業の場合、新人教育のプログラムとしてセミナーが行われることもあります。
管理薬剤師の年収は?
管理薬剤師の年収は、働く場所によって異なります。
調剤薬局で働く管理薬剤師
まず、調剤薬局で働く管理薬剤師の年収について見ていきましょう。
調剤薬局で働く薬剤師は、一般的には4年制大学を卒業後、およそ3年の経験を経たあとに管理薬剤師になるケースが多いです。
薬剤師としての基本給に追加の報酬として、管理薬剤師手当と呼ばれる手当が付き、相場はおよそ1万円~3万円となります。
また、管理薬剤師手当はボーナスに反映されないため、管理薬剤師になったとしても年収が大きくあがらない仕組みです。
大手の調剤薬局で管理薬剤師になると、年収はおよそ450万~500万円、人口が比較的少ない地域で働くことで、年収600万円になることもあります。
ドラッグストアで働く管理薬剤師
次に、ドラックストアの管理薬剤師の年収です。
ドラックストアで働く管理薬剤師は、調剤薬局と同等の手当が付きますが、飛躍的な給料の上昇はありません。
しかし、調剤薬局と比べると高くなり、平均するとおよそ550万、僻地での勤務ではおよそ650万にもなるケースもあります。
さらに、周辺エリアを管轄する薬剤師になることで年収のアップを期待できるでしょう。
医薬品卸企業の管理薬剤師
最後に、医薬品卸企業の管理薬剤師です。
医薬品卸企業で働く場合、調剤薬局とドラックストアと比較して年収は低くなります。
加えて、各営業所に1人しか在籍していないことが多いため、半強制的に管理薬剤師として働く人が多いです。
年収は400万円以上であり、管理薬剤師手当は基本給にプラスで1万円程度であることから、調剤薬局やドラックストアと比較すると少くなります。
管理薬剤師になるために必要なスキル
一部の企業では、働き始めた時から管理薬剤師としての業務を経験させることがあります。
しかし、基本的には勤務先に経験豊富な薬剤師が勤務している、もしくは新人に対して的確な指示やアドバイスをすることが可能な人材でなければ難しいといわざるを得ません。
管理薬剤師は重要な役職であり、医薬品に関する知識はもちろんのこと、あらゆる場面で正しい判断が求められます。
併用禁忌薬と飲食物の飲み合わせの配慮、さらには医師に対して処方を提案もしなければなりません。
当然のことですが、これらの能力は管理薬剤師だけでなく薬剤師として働いていれば必須です。
管理薬剤師は、自分の仕事をこなすだけでなく他の薬剤師にも気を配る必要があります。
薬剤師としての仕事に真摯に取り組むという気持ちだけでは務まらず、一定以上の経験のがあってこそ成り立つといえるでしょう。
また、初年度から薬剤師が1人しかいない調剤薬局やドラッグストアでの勤務が決まり、必然的に管理薬剤師にならざるを得ない場合があるかもしれません。
眼科や整形外科といった専門的な分野での勤務経験しかない薬剤師が、内科や循環器というような分野の異なる処方に対応することは容易ではありません。
さらに、薬剤師としての知識や経験のみがあっても円滑に業務をこなせるとは限りません。
管理薬剤師は人のうえに立つ人間であり、人間性も重視されます。
ドラッグストア、調剤薬局のいずれの場所であっても、1つのお店の責任者として自分の理想通りの店作りをすれば良いわけではないのです。
働いている一般の薬剤師は、それぞれに考え方も思いも異なります。
そのため、管理薬剤師が「責任者だから」という理由で経営を牛耳るようなことがあれば、スタッフはついてこなくなるでしょう。
一般薬剤師の考えを聞いてくみ取ったうえで、スタッフが同じ意向でお店作りができるよう、仕事ができるように自然と導くスキルも必要になります。
人間としてにスキルの面では、どのような場面でも冷静に物事を見るスキルも重要です。
日々の業務を行うなかで、薬剤師同士、もしくは自分と薬剤師の意見が衝突することがあるでしょう。
そのような場面で感情的にならず、冷静に理解して対処するスキルも必要になります。
いずれにしても、最も大切なことは責任感があることです。
管理薬剤師として、また、薬剤師としての倫理観ももって自己中心的な仕事をしないことが大切だといえます。
管理薬剤師はどんな職場に転職するのがおすすめ?
管理薬剤師が転職する際には、職場の人間関係が重要です。
転職先での主な仕事は、上司はもちろん先輩や同僚からも教えてもらうことになります。
上司がどれほど丁寧かつ親切に教えてくれたとしても、同僚との人間関係が悪ければ働きにくいでしょう。
そのため、転職においては人間関係を重視し、内部の情報までリサーチしたうえで決定することが大切です。
職場の雰囲気の良さをアピールしているような職場を見つけましょう。
管理薬剤師の転職におすすめ薬剤師転職サイト・エージェント
管理薬剤師の転職に有効な3つの転職サイト・エージェントを見ていきましょう。
薬キャリエージェント
1つ目が女性に人気の薬キャリエージェントです。
コンサルタントの対応力に大きな強みがあり、転職で不安がある女性にも利用しやすい特徴をもっています。
数多くの女性や主婦向け求人を手掛けており、「ママ薬剤師」という他にはない検索条件がポイントで、特に女性が好条件の案件を見つけたいときにおすすめです。
掲載案件数が大手に負けない量と質を誇り、担当者のフットワークが軽く高い交渉力も利用者数に大きく影響しています。
地方の薬剤師の不足は深刻で、情報を調べてみると都市部で働くよりも高収入の案件が見つかるようになりました。
薬キャリエージェントは、他の転職サイトと比較してもニッチな条件を見つけられることから、管理薬剤師が転職を考える場合に最適でしょう。
薬キャリエージェントの口コミ・評判からみるメリット・デメリットを徹底解説!
マイナビ薬剤師
2つ目が、知名度も抜群のマイナビです。
薬剤師のほかにもさまざまな業種を扱っており、抜群の情報量を保有していることが特徴です。
利用者数の数も非常に多く、検索システムや転職までの流れに関するノウハウの蓄積もあり、使い勝手に優れています。
転職先を見つけるため、どれほど案件を抱えているか、母数が大切です。
マイナビ薬剤師は圧倒的な母数であり、他のサイトと併用して利用する価値あるでしょう
実績も40年を超え、対象の薬局や病院でコンサルタントが細かくヒアリングするため、信頼感の高さも抜群です。
現場の様子がわかりやすく、理想にぴったりの求人を見つけ出せます。
転職業界最大手で知名度抜群のリクルートが運営していることも、高い評価につながるポイントです。
マイナビを運営するリクルートは、一般企業の転職サイトとして抜群の知名度を誇る「リクナビ」を運営している企業でもあり、有名企業とも密接な関係をもっています。
大きな企業で経済的にも精神的にも安定して働きたい人にとって利用しやすいでしょう。
マイナビ薬剤師の口コミ・評判からみるメリット・デメリットを徹底解説!
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