公務員の副業は、どこまで OK なのでしょうか。
副業が認められる範囲と、その注意点をお伝えします。
この記事を書いている私 安彦和美は、元法務省職員で16年間勤務する傍ら、人事例規や倫理法令を守った形で、10年間副業を続けて参りました。
現在は公務員を退職して、公務員の専門の副業講座やイベント開催、個別コーチングを行っております。
目次
公務員の副業はどこまで OK なの?
法令で認められている公務員の活動範囲をご紹介します。
注目度が高く、実際に活動している公務員が多いトップ5をご紹介します。あわせて、注意点もお伝えします。
第1位 ブログ・YouTube・SNSで稼ぐ
「ブログで稼ぐ」「YouTube で稼ぐ」初期投資がかからず、手軽に始められる副業として、関心も人気も高いです。
稼ぐ以前に「そもそも公務員が SNS で発信して良いの?」と躊躇したり、悩まれる方も多いのも事実です。これには、ガイドラインがあります。
平成25年6月に、総務省が「国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点」を発出しています。
【出典】 https://www.soumu.go.jp/main_content/000235662.pdf
このガイドラインは、復興庁の職員のSNSが炎上し、社会的に批判が多く寄せられたために制定されました。
国家公務員向けのガイドラインではありますが、インターネット発信で気をつけるべき点や誹謗中傷を防ぐために、わかりやすく解説されていますので、地方公務員の方にも一読をお勧めします。
内容を抜粋しますと、
- 発信内容が、所属する組織の公式見解と混同されないように。
- 法令違反をしない(信用失墜行為、人権侵害、著作権法違反、情報漏えい等にならないように)
- 公私の区別をつける(勤務時間内の発信はしない、公務で使用する端末や電源を使わない)
- 端末、パスワード、アカウントを適切に管理する。
- インターネットの特性を理解し、炎上した場合の事後対応にも備える。
などです。
憲法で「表現の自由」が認められていますので、公務員であっても SNS での発信が禁止されているわけではありません。
次に、ブログや YouTube で稼ぐのは、広告収入や紹介料収入を得る、いわゆるアフィリエイトです。
結論を申しますと、現行法令では規定されていません。
というのも、インターネットで稼ぐという副業の形態が出てきたのはここ数年のことです。
国家公務員法は昭和22年に、地方公務員法は昭和25年に交付された法律であり、改正はされているものの、インターネット時代に追いついておらず、明文規定がありません。
先述のSNS私的利用のガイドラインを守って発信されたうえで、不要なバッシングを防ぐためにも、公務員の立場とは切り離し、匿名で発信したうえで、SNS運用することがより安全だといえます。
第2位 講師・執筆、テレビやラジオ出演等
「公務員が勤務時間外にテレビ出演して報酬を得てもいい」ってご存知でしたか?
あまり知られておらず、結構皆さんびっくりされます。人事院規則や事例集でも明文規定があり、OKなのです。
これは、公務員がその専門性や知識経験を活かして、勤務時間外にテレビやラジオに出演したり、講師として登壇したり、原稿を執筆するなどして、報酬を得ることは OKとされています。
【出典】国家公務員倫理教本 p12
https://www.jinji.go.jp/rinri/siryou/2020_kyohon.pdf【引用】
「講演等」とは、講演、討論、講習・研修における指導・知識の教授、著述、監修、編さん又はラジオ・テレビの番組への出演をいいます。
注意点としては、テレビ・ラジオ出演や、講師や執筆などが、利害関係者からの依頼されたものならば、倫理監督官の承認が必要なのですが、一般の依頼には承認不要で活動できます。
紙の本を出版されている現役公務員もいらっしゃいますし、電子書籍なら更にハードルが低くなります。
専門誌に寄稿して原稿料を受け取ったり、文学賞で受賞して賞金を受け取る方もいらっしゃいます。今は、ブログ記事から原稿依頼がくるケースも多くなっています。
この場合の注意すべき点は「守秘義務」と「反復継続」です。
守秘義務
まず「守秘義務」については、公務員の職務に関する「講演等」の場合、公務員の本業として行うべき事柄ではないのか、また内容が職務関連の場合、守秘義務に抵触する内容をださぬよう、上司や所属長に確認をとりましょう。
たとえば「◎◎市役所△△課の■■です」と職場や所属を明示しての活動ならば、職場公認で行うべきでしょう。
反復継続
次に「反復継続」です。
そもそも、公務員として職務専念義務がありますので、本業に差し障るような、反復継続することは許されません。
反復継続するのは「業として行う」ことになるため、自営業にあたるのではないかと問われてしまいます。
許可されているテレビ・ラジオ出演や講演、執筆もあくまで「単発」で行うことは良しとされていますが、毎日テレビにレギュラー出演することは公務員としての本業が疎かになりかねません。
あくまで単発のオファーに応えることを想定しています。
報酬はいくらまで受け取っていい?
なお、よくある質問として「報酬額」があります。
結論は、金額に上限はありません。
禁止されているのは「公務員だから優遇された報酬額を受け取る」ことです。
これは贈収賄や天下りにつながるため、最悪ですと刑事処分もしくは懲戒処分に該当し、厳しく罰せられます。
他の出演者や執筆者と同じ額の報酬ならば、額を問わず、良しとされています。
第3位 大家業や太陽光発電等
公務員をしながら、不動産を賃貸しして、大家収入を得ている方は多いです。
さきほど「反復継続する収益事業は基本的に NG」と申しましたが、例外が3つあります。
それが「不動産事業・農業等・太陽光発電」です。
これらが兼業で公認されている理由は、先祖から受け継いだ土地や建物や農業等を、公務員だから放棄しなければならないのは、不合理であり、所有権に反するものだからです。
歴史的にも、地方公務員は、農家をしながら地域のために事務仕事を請け負った有志が起源であるとも言われており、農家と公務員との兼業が長らく続けられてきた歴史的背景もあります。
よって、公務員が「不動産事業・農業等・太陽光発電」との兼業を行うことは、明文規定で認められています。
この3事業の場合、規模によって、職場の承認の要否がさだめらます。
たとえば国家公務員の場合は「独⽴家屋・・・5棟以上 / アパート・・・10 室以上、 ⼟地・・・10 件以上 / 駐⾞台数・・・10 台以上、 賃貸料収⼊が年額 500 万円以上 等」の場合に、所属長の承認が必要となります。
許可なく大規模な不動産事業を行った場合、懲戒処分となるので、注意が必要です。
【出典】義務違反防⽌ハンドブック P11
https://www.jinji.go.jp/fukumu_choukai/handbook.pdf
「不動産事業・農業等・太陽光発電」のいずれも、公務員の職務に専念できるよう、実務は家族や専門業者に委託することが必要です。
なお、民泊は不動産賃貸業ではなく、旅館業とみなされる可能性が大きく、兼業許可が下りない場合があります。
第4位 不用品販売
メルカリやヤフオクなど、フリーマーケットアプリで、不要品を販売することはOKです。
これらは、リサイクルショップや質屋に、持ち物を売るのと同じことだからです。
注意点は、ここでも「反復継続」しないこと、です。
例えば、せどりのように、大量に仕入れて在庫を抱えて、何十回も繰り返して販売した場合には「反復継続」であり、在庫や店舗を抱える「自営該当性」ありとみなされ、自営兼業となり、懲戒処分の対象となります。
あくまでも、読み終わった本を売る、着なくなった洋服を売るなど、仕入れや在庫がない形態で行いましょう。
第5位 NPO 法人の代表
公務員として、世のため人のために働きながら、プライベートタイムでも、地域活性化や社会貢献を目指して精力的に活動されてる方も多くいらっしゃいます。
たとえばボランティアで海岸を清掃する活動を続けるためには、運営費用が必要になります。
そのような場合、公務員がNPO 法人や任意団体を建てることはOKです。
注意すべき点は、営利法人の代表者や役員になってはいけないことです。(国家公務員法103条と同法104条、地方公務員法38条)
営利性を持つ法人を運営することは、公務員の公平中立性に反しますので、非営利団体で運営しましょう。
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まとめ~副業が認められる範囲と注意点
以上、公務員の方から質問が多く、活動実績も多い人気の5つをご紹介しました。
法令で認められている副業をする場合も、公務員として誠実に勤務することが最も重要です。
そのうえでオフタイムに副業として活動することが最も重要です。
(1)ブログ・YouTube・SNSで稼ぐ
<注意>公務員のSNS私的利用の留意点を一読する。
(2)講師・執筆、テレビやラジオ出演等
<注意>利害関係者からの依頼は、倫理監督官の承認が必要。
<注意>職務に関連する場合は、上司や所属長に確認。守秘義務に抵触しないよう留意。
(3)大家業や太陽光発電等
<注意>大規模により所属長の承認が必要。実務は委託する。
(4)不用品販売
<注意>どりや転売業など、在庫を抱えて、反復継続すると自営兼業でNG。
(5)NPO 法人の代表
<注意>営利法人は公務員の公平中立性が保てないのでNG。
この記事は、国家公務員法・地方公務員法・人事院規則に基づき、概要をお伝えしました。
あなたの職種や立場、1741の地方自治体ごとにルールが異なりますので、必ずご自身の職場のルールを確認の上で行いましょう。