リファラル採用の報酬から税金は引かれるのか、紹介者は気になりますよね。
アメリカ発祥で、日本でも普及し始めているリファラル採用は企業社員の知人紹介制度です。
企業のメリットは定着率の高い人材を雇用でき、採用コストを抑えられる利点があります。
リファラル採用に貢献した社員には「報酬」や「インセンティブ」といったお金の支給があり、多方面でメリットが大きい制度です。
今回はリファラル採用の報酬と税金について、社員と企業が気を付けたいことを紹介します。
目次
リファラル採用とは
リファラル採用とは社内外の人脈を活用し、信頼がおける人材を採用する方法を言います。
企業を理解している社員が知人を紹介するため、ビジネスマッチングと定着率に期待できることがおおきなメリットです。
アメリカではすでに浸透している採用方法で、日本でも幅広い職種や企業で導入が進んでいます。
リファラル採用の報酬から税金は引かれる?
リファラル採用は人材の紹介者に企業から報酬や贈られる場合が多く、既存社員の活性化も望めます。
企業に貢献出来るだけでなく、インセンティブが受け取れることに魅力を感じる人もいるのではないでしょうか。
ここからは、リファラル採用の報酬から税金は引かれるのか、インセンティブの注意点についてくわしくまとめました。
給与所得の場合は所得税が引かれる
リファラル採用の報酬が給与所得となる場合、所得税が課税されます。
インセンティブをもらうことによって給与所得がアップし、所得税の課税額も上がる危険性があるため注意してください。
所得税は毎月の給料から源泉徴収されるため、自分で支払う必要はありません。
所得税の控除額は以下の通りです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
(参考:国税庁公式サイト)
支払手数料の場合は雑所得として住民税が引かれる
リファラル採用が支払手数料として処理される場合は、雑所得または一時所得として、住民税にかかわります。
住民税とは、そもそも都道府県民税と市町村民税の俗称で、居住地に収める税金です。
リファラル採用の報酬を企業から支払手数料として受け取った場合、20万円以内であれば個人での確定申告は不要です。
都道府県民税と市町村民税は居住地と所得額によって税率が異なりますが、雑所得が20万円以内の場合は非課税として処理されます。
山分けする場合は受け取り側に贈与税がかかる
リファラル採用の紹介者と採用された人材が報酬を山分けする場合は、採用された人材に贈与税が課税されます。
贈与税の計算方法は以下の通りです。
- その年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産を合計する
- 合計額から基礎控除110万円を引く
- 残りの金額に税率(一般贈与財産用)を掛けて税額を計算する
<一般贈与財産用>(一般税率)
基礎控除後の課税価格 | 200万円以下 | 300万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 3,000万円超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | – | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
(参考:国税庁公式サイト)
山分けした報酬を受け取っても、基礎控除110万円以内の場合は納税や贈与税の申告は不要です。
社会保険料に影響があることも
リファラル採用の報酬を受け取るときは、社会保険料の等級が上がる可能性に気を付けてください。
社会保険料の標準報酬月額は総支給額を使って計算するため、報酬を受け取るタイミングによっては負担が大きくなる場合があります。
社会保険料は4~6月に受け取った標準報酬月額の平均で求められます。
これは、定時改定といわれ毎年実施されるもので、この時期に報酬を受け取ると社会保険料の等級が上がるおそれがあります。
4~6月は昇給といった固定的賃金変動と、報酬を受け取る期間が重ならないように気を付けましょう。
万が一、社会保険料の等級が上がってしまった場合でも、その後の給与が2等級以下の基準になる月が続くと再改定されることもあります。
これは随時改定といい、時期を問わずに固定的賃金が大きく変動すと見直されます。
リファラル採用でもらえる報酬とは
リファラル採用でもらえる報酬とは、お金に限ったもので張りません。
また、紹介した人材の採用が決まった場合の報酬はもらえる範囲に限りがあります。
リファラル採用でもらえる報酬について、目安額や注意点をまとめました。
報酬額は年収の30%未満が目安
リファラル採用でもらえる報酬は年収の30%未満が目安という場合が多いです。
リファラル採用をしている企業の中には、報酬制度を導入していない場合があるため注意が必要です。
報酬額が気になる人は、自社のリファラル採用について確認してみましょう。
会食の実費や休暇支給の企業もある
リファラル採用でもらえる報酬が、会食や交通費の実費や休暇支給の企業もあります。
企業が紹介者と紹介を受ける人材の食事代を支払ったり、紹介者にお祝いとして短期休暇のプレゼントをしたり、ユニークな報酬ですね。
採用人数によって異なる
リファラル採用の報酬額は、紹介後の採用人数によって異なる場合がほとんどです。
紹介者は、リファラル採用で紹介できる人数の制限を、企業に確認しておきましょう。
企業はリファラル採用の人数に制限を設けることで、人材に偏りが出たり実務がおろそかになったりとする危険性を予防しています。
採用ポジションやスキルが考慮される
リファラル採用で紹介者が受け取れる報酬は、採用した人材の実績やスキル、業種や職種、雇用形態によって変動します。
また、採用ポジションによっても金額が変わるため、一律で同じ報酬をもらえる場合は少ない傾向です。
採用期限や勤務時期に応じて決まる
リファラル採用で紹介者がもらえる報酬は、採用期限や勤務時期に応じて決まることもあります。
採用期限がある場合は、無理な紹介にならないために少額報酬が多い傾向です。
入社後の勤務期間に応じて報酬をもらえる場合は、紹介者は何度かに分けて受け取ります。
企業はリファラル採用で雇った人材の離脱を防ぐために、勤務期間を設定し経過ごとに紹介者に報酬を支払うようにしています。
採用された人も報酬がもらえる場合がある
リファラル採用で雇われた人も、報酬を受け取れる場合があります。
企業によって異なりますが、高いスキルや実績がある人材は活躍を期待され、報酬支給の対象と判断されます。
優良人材が感じる転職へのハードルを報酬で下げることで、企業のレベルを上げられます。
企業がリファラル採用をするときの注意点
ここからは、企業がリファラル採用をするときの注意点を紹介します。
リファラル採用は企業にとってどのような注意点があるのでしょうか。
賃金規定や就業規則を見直す
企業はリファラル採用を行うまえに、賃金規定や就業規則を見直しましょう。
賃金や給料に関する事項は必ず明示することが労働基準法で決まっています。
リファラル採用の報酬に関する支払時期や支払額も、導入時に就業規則に入れてください。
常時10名以上の企業は就業規則を規定や改定したときに、行政官庁へ届け出なくてはいけません。
社員への周知も同時に行い、リファラル採用のトラブルを防ぎましょう。
常時10名未満の企業については就業規則作成や届け出の義務はありませんが、同様に準備と周知しトラブルを防ぐことをおすすめします。
採用活動の内容を確認して勘定科目を処理する
企業がリファラル採用を行う場合、採用活動の内容を確認して勘定科目を処理してください。
人事担当者など業務の一環としてリファラル採用にかかわった場合は給与手当、業務時間外に仕事と関係なく人材紹介した場合は紹介手当と判断できます。
以下のポイントを勘案して総合的に判断することが重要です。
- 紹介者の業務と紹介活動が関係するか
- リファラル採用にかかった費用は企業負担か
- 営業時間内の紹介活動か
- 勤務規定におけるリファラル採用の整備状況
高額な報酬は避ける
リファラル採用の報酬が高額だと、人材紹介の仕事とみなされ紹介者に職業安定法第30条(有料職業紹介事業の許可)にかかわるトラブルが発生する可能性があります。
人材紹介業者の報酬相場は、採用人材の年収30%程度といわれているため、その額以下に収めましょう。
社員に当事者意識を持ってもらう
社員に当事者意識を持ってもらうことは、リファラル採用で重要なポイントです。
企業は紹介者に利他意識や当事者意識を持たせ、リファラル採用の動機になるように努力しましょう。
「友人に協力したい」という利他意識や「自社に貢献したい」という当事者意識がリファラル採用に重要です。
報酬金をトリガーとしても、人事採用にいい効果が生まれないことを覚えておきましょう。
フローを決めて丁寧に対応する
リファラル採用は採用後までのフローを決めて丁寧に対応してください。
問題が起きた場合の対処法や、社員への周知を徹底することはもちろん、不採用時のフォローなど紹介者のサポートも考えましょう。
「知人に紹介したい」と思われるような職場環境づくりは、人材の定着につながります。
リファラル採用で転職者が覚えておきたいポイント
リファラル採用に挑む前に、転職者が覚えておきたいポイントは以下の通りです。
- 不採用になることもある
- 紹介者との関係に変化が出る
- 面談で条件をきちんと確認する
以上3つのポイントを詳しくまとめました。
不採用になることもある
リファラル採用は不採用になることもある制度です。
知人紹介のひとつなので、リファラル採用で紹介を受けても、必ず入社できると決まったわけではありません。
面談や試験は一般採用と同じレベルと考え、リファラル採用に臨みましょう。
紹介者との関係に変化が出る
リファラル採用は紹介者との関係に変化が出ることもあります。
友人・知人と同じ職場で気まずかったり、紹介者との待遇が異なる場合に不満を持ったりすることもあるでしょう。
紹介者である人物との関係に多少の変化が出ることを理解して、リファラル採用を受けるか考えてくださいね。
面談で条件をきちんと確認する
リファラル採用は紹介者から聞いた採用条件と、転職先の提示する待遇に違いはないか確認しましょう。
面談で条件をきちんと確認することで、入社後のギャップやミスマッチの悩みが減らせます。
また、報酬目当ての紹介者からリファラル採用の声がかかった場合、待遇をいいように伝えられることもあります。
紹介者からの話をうのみにせず、企業との面談で条件をきちんと確認し、リファラル採用を受けるか判断してください。
リファラル採用の報酬から税金は引かれる
リファラル採用の報酬から税金は引かれますが、企業に勤めている場合は自分で確定申告をする必要はありません。
また、山分けした報酬を受け取る場合は、110万円以下なら気にすることはないでしょう。
リファラル採用は企業、紹介者、採用される人材にとってメリットがある制度ですが、入社後のサポートについてもきちんと確認してください。