働くうえで適度な休息をとるということは、必要不可欠です。
休みをとることで気持ちをリフレッシュできるだけでなく、作業の効率も上がります。
近年、「働き方改革」という言葉も話題になっていますが、まだ解決されていない課題が多いというのが現実です。
そんな課題に直面したとき、私たちには何ができるのでしょうか。
今回取り上げる内容は、仕事で休みがとれずに悩んでいる人はもちろん、自分の働き方で悩んでいる人にも知っておいてほしいことです。
大切な人のために、そして自分自身のために、必要な知識を身に付けましょう!
目次
会社員の休みについて国が定めている規定をご存じですか?
日本には、働く私たちを守るための、労働基準を定めている法律があります。
それが「労働基準法」です。決められた法律の中で仕事をすることは、雇う人、働く人にとっての基準になります。
一概に誰にでも当てはまるとは言えませんが、この基準を超えないということは、働く私たちの生活、そして命を守るためでもあるのです。
労働基準法第35条では週に1回の休日を与える義務を定めている
労働基準法の第35条には、休日について以下のように定められています。
- 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない
- 前項の規定は、四週間を通じ週四日以上の休日を与える使用者には適用しない
引用:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000049
週休二日制の会社も増えていますが、どの会社においても、最低このラインは守られている必要があります。
第35条を守る、それは会社の義務です
上記に記載した労働基準法第35条を守ることは、雇う人の義務です。
働く人を危険にさらさずに、働く場を提供する。
会社のためにと、働く人の休日を必要以上に減らすことは、働く人に対しての義務を放棄しているだけでなく、会社のことも考えることができていないとも言えます。
残業100時間は罰則の対象!残業の上限時間と違法な職場への対処法
ただし条件付きで期間を定めて出勤できる
労働基準法で休日を定めていると言っても、企業によっては時期に応じて繁忙期が来てしまうケースもあります。
特に小売業界や飲食業界では人手不足が深刻になっており、運営がままならないことがありますので、労働基準法では休日出勤に関する36条の規定を活用すれば、休日出社を命じられるのです。
繁忙期で人が足りていないことを理由に届出を提出すれば、社員に休日出勤をさせることが可能になるのです。
労働基準法で定められている時間外労働は月45時間・年間360時間と決められている条件が、申請をすれば1年の半分までを上限に時間外労働の制限がなくなります。
もちろん特別な事情があることが条件なのですが、実際のところ企業の特別な状況の条件があいまいなため、うまく活用して社員に残業をさせようとする企業も多いのです。
年間休日が規定の105日以下の企業は意外と多い
労働者の休日は、1週間に1回あるいは4週間に4回あるべきときめられているため、フルタイムで働く人の年間休日の最低ラインは、105日とされています。
皆さんも求人で見かけることがあるように、お盆休みや国民の祝日を含めて120日としているところが多いのが現状です。
しかし平成29年に厚生労働省が実施した平成29年就労条件総合調査によれば、年間休日が法律で規定されている数値から換算した105日以下の休日数の会社が多いことが分かっています。
年間休日が105日以下の事業所数が約2/3となっており、休日が少ない企業が多いことがわかります。
平均である120日以上の休日を設けている事業所も多くはありません。
休みがなく嘆いている労働者は、意外と多いのが現状です。
仕事で休みがつぶされる企業はブラック会社である可能性が高い
仕事で休みがつぶされる企業は、社員の健康を考えずに利益ばかり追い求めている企業である可能性が高いです。
会社は社員を雇う以上、健康面も気を使う必要があります。
社員がいなければ売り上げにつながるアクションは生まれませんから、利益を求めるのであれば社員を使い捨てのコマのように扱うのは、意味がありません。
毎日多量の仕事を押し付けられたり、社員数が少なく一人で複数名の仕事をこなしている場合には、ブラック企業で有る可能性が高いです。
もちろんそのまま環境に慣れて、仕事をこなせるようになれば問題意識も薄れてくるでしょう。
しかしブラック企業に心身ともにつぶされてしまう人も多いのが事実です。
在籍し続ける意味があるのか、今一度心に問いかけてみましょう。
過労から引き起こされるリスクを知ろう
「過労死」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。
休みをとらずに働き続けるということは、心身を壊す恐れがあるだけではありません。最悪の場合、死にもつながってしまうのです。
行き過ぎた過労は人の死を奪うということを、雇う人も働く人も知っておく必要があります。
休みをとらずに働くということ
例えば、スマートフォンを長時間使用していて、触ったときに熱くなっていたという経験はありませんか?
高温になったことで、画面の反応が鈍くなったり、アプリの起動に時間がかかったりと、様々な不具合が生じることがあります。
スマートフォンは、ある一定の温度を超えるとそれ以上温度が上がらないような仕組みになっています。
その仕組みが働くことで、スマートフォンの反応が鈍くなるというような不具合が生じるのです。
人間もスマートフォンと同じような仕組みになっていると言えます。
休みなく働き続ければ、疲れを感じます。
その疲れをとるために、人は適度に休みをとります。
適度な休息をとらない時間が続いた場合、どうなってしまうでしょうか。
スマートフォンも人間も、過度な負担に耐え切れなくなり、壊れてしまいます。
壊れてしまっては、スマートフォンも人間もこれまでできていたはずの仕事ができなくなってしまいます。
将来にも影響を与える場合があるのです。
仕事をするためには、スマートフォンにも人間にも、適度な休みが必要です。私たちは休みをとるから仕事ができるのです。
仕事の作業効率が下がる
休みをとらずに仕事を続けていると、集中力も続かず、注意力も散漫になります。
休みなく働き続ければ、必然的に仕事の作業効率も下がります。
そして、普段ならしないようなミスをしてしまうこともあります。
仕事のためにと休みなく働いていても、結局ははかどっていないのです。
脳や心臓へかかる負荷
休みなく働くことで、体にはかなりの負担がかかっています。
仕事の過度な負荷は、脳や心臓の病気につながる恐れがあります。
ストレスによって臓器や血管にまで影響が出てきます。
脳梗塞や脳動脈瘤、くも膜下出血などにより、突然死してしまうこともあるのです。
心へかかる負荷
仕事による過度な負荷は、体だけではなく、心にも影響を与えます。
うつ病などの精神障害だけでなく、自殺してしまう場合もあるということを、今一度理解しておく必要があります。
仕事を休めない人の特徴
仕事が休めないという人には、いくつか共通した特徴があると考えられます。
いくつかその特徴を挙げてみます。当てはまってはいませんか?
仕事を休むことに罪悪感を抱く
例えば自己都合で必要な休みをとったとき、「申し訳ないな…」とか「休み明けに会社に行きにくいな…」などと思うことはありませんか?
それがずる休みや、わざと職場の人を困らせようと思ってとった行動であれば、働く人としての責任がとれていないことになりますが、必要な休みをとったのですから、必要以上に自分を責める必要はありません。
周りの人に迷惑がかかると思っている
自分が休むと、周りの人に迷惑がかかると思ってはいませんか?
もちろん、休んだことによって他の人の負担が増えることは考えられます。周りの人と連携して持ち場を回すような仕事であればなおさらです。
ですが、必要な休みをとることは誰にでもあります。体調不良も考えられます。
誰かが抜けたときにその穴を補い合えるような仕事をすることを、一人一人が普段から意識する必要があります。
また、自分が思っているほど、周りの人は迷惑だと思っていないこともあります。普段一緒に働いている人のことを信じて休むということも大切です。
周りの人の気持ちに目を向けられる人というのは、会社にとっても貴重な存在でしょう。
責任感が強い
仕事を休めないと思っている人のなかには、責任感が強い人も多いです。仕事をしていて、「~ねばならない」と思うことはありませんか。
「この仕事は自分がしなければならない」「休まずに仕事にいかなければならない」など、自分で自分に負荷をかけている場合があります。
責任感が強いことは大切なことですが、その「~ねばならない」は、なぜそう思うのでしょうか。
誰かに言われたからでしょうか。すぐに説明できないときは、必要以上の責任感で、自分自身を追い詰めている可能性があります。
必要なときに周りの人に助けを求めるということも、仕事をするうえで必要なスキルです。
普段から責任を持って働いている人には、自分が思っているよりも周りの人は快く力になってくれます。
仕事を休むことはいけないこと?
そもそも、仕事を休むことはいけないことだと思ってはいませんか?なぜ休んではいけないのでしょうか。
この問いは働く人、そして雇う人にも考えていただきたいことです。
体や心を壊すリスクを背負ってまで、休むことなく働く理由はなんでしょうか。
- やらなければならない仕事がたくさんあるから
- 自分が担当している仕事が終わらないから
- 会社が回っていかないから
- お金が必要だから
- 会社のためだから
- それが社会のためになるから…
理由は様々かと思いますが、人間が休みなく働き続けることは不可能です。
どんなに働きたいと思っていても、永遠に働き続けることはできません。
働き続けるには、休息が必要です。休むから、人は働くことができます。
そのため、働きたいと強く思っている人ほど、適度に休むことが必要なのです。
適度な休みをとることは働く人の義務ですが、それと同時に働く人にとって必要不可欠な要素でもあるということを再確認する必要があります。
あなたにとっての働くということ
なぜ仕事を休んではいけないのか、という問いにもつながりますが、あなたはなぜ働いているのかということを改めて考えてみてください。
あなたにとって、働くとはどういうことですか?あなたは、なぜ働くのですか?
なぜ働くのか
食べていくため、家族のため、子供のため。欲しいものがある、借金があるから、生活のため…。
これらに共通していることは「お金」です。
おそらくほとんどの働く人は、お金を稼ぐために仕事をしています。
お金を稼ぐためというのは、生きていくためということです。
私たちが生きていくためには、お金が必要ですから、当然の理由とも言えます。
お金以外には、やりがいや自分のスキルアップのためというような理由も考えられます。
働く理由に、正解はないのだと思います。理由は違っても、人は何かを守るために働いています。
どんな理由も、あなたの大切なものを守り、あなたが働く日々を支えているのです。
あなたの働く理由のために必要なこと
一人一人に異なる働く理由があるかと思いますが、その理由のために私たちができること、そして必要なことはなんでしょうか。
それはこれまで前述してきた通り、適度に休みをとるということです。
どんな働く理由であれ、最終的には自分のために働いているのではないでしょうか。
自分が身体を壊してしまっては、自分のために思い描く働き方はできなくなってしまいます。
過労死を避けるために皆さんができること
ここでいう最悪の場合というのは、「過労死」を指しています。
体への負荷も心への負荷も、度が過ぎれば死につながってしまいます。
休みがとれていない状態が続いていると、自分が思っている以上に思考も回っていません。
もし身近に相談できる人がいるのであれば、一緒に対策を考えてもらいましょう。ひとりで解決できないことはあるのです。
休みがとれる理由を考える
まずは会社に理解してもらえるような理由を考えてみましょう。
会社が働く人の命を守ってくれるような環境ではないのであれば、理由も工夫する必要があります。考えられるものとして、
- 有給休暇の申請をしてみる
- 体調不良
- 家庭の事情
などがあります。有給休暇をとることも働く人の権利です。
休むことと評価はイコールではないということを理解しておく
休んでしまうと会社からの評価が下がってしまうと考えている人もいるかもしれません。
しかし、基本的に休むことが必ずしも評価につながるとは言い切れません。
普段から仕事に手を抜いていたり、遅刻やずる休みをしていたり、ということをしている場合は、会社だけでなく同じ職場の人達からの評価もそれ相応のものになるでしょう。
必要な休みは働く人の権利なので、休んだことが直接評価につながるような場合は、会社側に問題があると言えます。
人手不足の解消を上司に依頼してみる
人手不足が深刻でどうしても仕事の量が多い場合は、人手不足の解消を上司に依頼してみる事が大切です。
部署によっては人員の補充がされておらず、常に人手不足の状態におちいっていることもあります。
アサインできる人がいないと、段々と一人当たりの仕事量が多くなっていきます。
人事異動のタイミングで人手不足の解消ができないかどうか、上司に依頼してみる事をおすすめします。
上司の裁量権にもよりますが、人員の補充を人事部に掛け合ってくれる可能性があります。
有給休暇を有効活用する
もしも有給休暇がたまっているのであれば、いったん休養するために有効活用してみましょう。
有給休暇の取得は法律で認められている労働者の権利です。
休暇の取得で相手を攻めて取得させないように画策することは、上司にもできません。
万が一一度も使っていないのであれば、ぜひ一度活用してみる事をおおすすめします。
辞めるという選択肢
どんなに休みがとれる理由や会社からの評価について考えても、会社自体に問題があれば何も解決しません。
あなたがその会社で心身を壊してまで働く理由はありますか?
「辞める」という選択肢があることを忘れないでください。手遅れになってからでは遅いのです。
【怖すぎ】ブラック企業あるある!一つでも当てはまったら転職を!
会社で休みがほとんどないのであれば労基に行く選択肢もある
休日がなく転職を検討していても、上司が辞めさせてくれないこともあるでしょう。
どうしても改善されない、退職させてもらえない場合には、労働基準監督署への通報も視野に入れましょう。
法律で規定されている労働時間を大幅にオーバーしている、法律的にアウトな労働体制を取っている場合には、摘発や指導措置を取ってくれる可能性があります。
労働時間を理由に通報したいのであれば、タイムカードの証拠を残しておきましょう。
ただし企業によっては社員が帰った後に、タイムカードを改ざんする悪質なところもあります。
一回一回証拠をのこしておくと、相手の改ざんも摘発できますので、魚拓を取っておきましょう。
ただし労基に通報するときに気を付けたいのが、実際に動いてもらうためには、匿名ではなく実名での通報になる点です。
きちんと労働基準法に違反している項目がないかを判断したうえで、通報してみましょう。
おわりに
働く人も会社も、これまでの働き方を変える取り組みが増えてきています。
ですが、人によって、そして会社によって考え方には差があります。
そういった差があるなかで、私たちは自分で自分の働き方を考え、決める力が求められているのだと思います。
働く人に休みが必要なように、“自分にとっての働くということ”を考える時間も、長い人生の中で必要な時間なのではないでしょうか。