時代が変われば新しい仕事が生まれ、反対に必要なくなっていく仕事もあります。
たとえば一昔前には『システムエンジニア』や『WEBデザイナー』といった仕事は無かったでしょう。また、以前はあったであろう『エレベーターガール』や『証券取引所の場立人』、『タイピスト』といった仕事は現代にはほぼなくなりました。
技術の革新は、年々早くなっています。今当たり前に求められている仕事が、10年後、20年後もあるとは限りません。
その要因の一つが、『AI』です。AI関連の技術はAI自身が開発を行えるため、これまでよりも飛躍的に世の中が変わっていく可能性があります。
令和の時代に失われていく職業とは何なのか、そして反対に技術革新が進んでも求められ続ける仕事とは何なのか。今回は具体的な職種を挙げながら解説します。
AIの登場によって10年後4割の仕事がなくなる!
2015年に株式会社野村総合研究所が、イギリスのオックスフォード大学の職員と行った共同研究によれば、日本国内にある601の職業のうち、10~20年後には49%もの職業がAi(人工知能)にとってかわられる可能性があると試算しています。
参考:野村総合研究所
しかもイギリスやアメリカと比較しても、日本の方がなくなる仕事の割合が高くなっていきます。
亡くなる可能性のある仕事は大きく分けて、以下の4つに分類できます。
- 単純な入力作業
- 機械を動かす仕事
- 監視系の仕事
- 販売系の仕事
以下で例とともに解説していきます。
①単純な入力作業
なくなる仕事の共通点は、「人間でなく、機械でも出来てしまう」という点です。
機械であれば、一度導入してしまえば人件費は掛からず、採用リスクもありません。
今はAIの導入コストが高いかもしれませんが、今後コストが落ち着いてくれば導入企業が増え、機会に取って変わられる仕事は多くなるでしょう。
ではどんな仕事が無くなりそうか、いくつかご紹介します。
事務
事務はAIにとってかわられる可能性の高い仕事といえます。
登録したいデータをまとめる作業が主な業務ですが、AIに条件を指定すれば簡単にその場で並び変えてくれるためです。
またいちいち入力する作業もいらないので、データを再入力する手間も省けます。
ミスも最小限に抑えられるので、人を雇うよりもコストがかかりませんから、企業が人件費削減のために導入する可能性は非常に高いです。
受付係
大きい企業のフロントにいる受付係も、AIにとってかわられる可能性のある職業の一つです。
フロントで担当する業務といえば、来館した人に対して要件を聞いて対応する、社内の人間への用事があるなら取り次ぐだけの単純な作業です。
デバイスを一つ置いておいて、企業内で使用している連絡用ツールにつないでしまえば、受付係を通さずとも簡単に受付業務ができるようになります。
AIの機能が進化すれば自動音声ガイドで案内をすることも可能ですから、人件費削減のために将来的には導入する企業が多くなる可能性があります。
電話オペレーター
お客様センターなどに電話をすると、オペレーターの方が対応してくれますよね。
たまに自動ガイダンスによる対応もあると思いますが、ゆくゆくは全て自動対応になるでしょう。
現在はまだ技術が足りないため音声ガイダンスで該当する要件に応じた番号を押せば、コールセンターの職員につながります。
しか今後は音声ガイドの技術も発達し、AIが電話オペレーターの対応をすべて担えるくらいにまでなる可能性があるのです。
実際にみずほ銀行ではAIを活用した電話オペレーターの開発に着手しています。
機械を動かす仕事
AIが発達すれば機械に人が一旦作業工程を入力するだけで、他の機械にも動きを指定して自動化がさらに進んでいく可能性があります。
製造ラインが決められていれば、工程ごとに情報を整理して、効率的に清算ができるように組み込んでくれることも予想されます。
自動車工場の職員
自動車工場では組み立てからなにからまで、人が機械を動かして作業を行います。
しかしAIが導入されればすべての工程で機械をAIが動かしてくれます。
夜間も稼働できるので人件費も最低限にまで削減できますし、生産効率も上がっていくので大量生産をしたい企業は導入を進めていくでしょう。
建設作業員
住宅やビルなどを作る建設作業員も、AIにとってかわられる可能性のある職業の一つです。
AIを導入すれば、予定している通りに作業が進められるので、スケジュール通りに作業を進められます。
人間が建設工事に携わるのであれば、健康上の問題から休憩時間もありますから、時間がかかってしまうのが一般的です。
機械に全て任せてしまえばスムーズに事が進められるので、自動運転技術が発達すれば建設作業員の雇用もAIに取られてしまう可能性が高いです。
監視系の仕事
人の動きを監視する仕事もAIが対応できる業務の一つです。
認識する人や物の状態をあらかじめ学習させておけば、ただ設置しておくだけでほしいデータを収集できるメリットがあります。
二十四時間作動できるので、監視員を常に置いておく必要もありませんし、正確に判定ができるのでスポーツにも役立てられるメリットがあります。
スポーツ審判などの判定
スポーツの審判など、人の目による判定を必要とするものもなくなっていくでしょう。人間の目には限界があるため、機械のほうが正確なジャッジが可能です。
現にサッカーや野球のビデオ判定、陸上や水泳のタイム計測など、機械化されているものはたくさんあります。
実際にバレーボールのチャレンジシステムは、コートのラインにボールがかかっているかどうか、瞬時に判断できない場合に活用されています。
システムで判定が覆ることもありますから、厳格に勝負をつけるのには向いています。
誤審問題もある通り、人間の目ですべてを公正に判断できませんから、審判も今後は主審だけ、副審は導入しないなどの対応が取られていく可能性があります。
交通量調査
皆さんも街中で見かける交通量調査やアンケートにより、人の流れを判断する仕事も、AIにとってかわられる可能性があります。
最近では道路の状況を判断するために、等間隔でカメラが設置されたり、速度計が置かれていることもあります。
人の手で行うよりもはるかに簡単で、データ入力もしやすくなりますので、導入する企業も今後同じ調査を行いたいのであればAIを導入したほうがコスパが良いのです。
販売系の仕事
物を販売する仕事も段々とAI技術にとってかわられています。
最近ではセブンイレブンが自動で生産できる機械を導入し、会計時の人権コストを削減する動きに乗り出しました。
東京の某駅では無人で販売できる小売店の実験も行われました。
最近ではキャッシュレス化の動きも進んできていますから、決済に必ずしも人が介在する必要はなくなっています。
ここ数年でも販売方法が変化していますから、数年後には販売員が必要なくなる未来も見えてくるでしょう。
将来なくならない仕事の特徴
では反対に、AIが台頭してきたとしてもなくならない仕事に共通する特徴は、以下の通りです。
- 機械そのものを開発する
- クリエイティブな創作活動が必要なもの
- 人同士のかかわりが必要なもの
- 機械が取れない責任が生じる
以下で一つずつ解説していきます。
機械そのものを開発する
AIは自分で学習してどんどん活動の幅を広げていけますが、自分で機械そのものを開発するまではできません。
またAIがAIを新たに開発することもできませんから、人間が機械を開発してあげないとうまく活用できないのです。
以下ではAIに変わられない、機械そのものを開発する仕事を紹介していきます。
需要増大!AIエンジニア
AIへの注目が集まる昨今、AIの開発に携わるAIエンジニアへのニーズは高まるばかりです。日本はAIの研究・開発が他国と比較して遅れていると言われており、今後さらに需要は拡大していくでしょう。
ちなみにAIエンジニアがどんな仕事をするかというと、大きく2つに分けられます。1つはプログラミング系で、もう1つはアナリティクス系(データサイエンティスト)です。
プログラマー
プログラマーは、機械学習と呼ばれる分野の業務を担当します。その名の通り、AIの開発業務に携わるようなイメージです。
一般的なシステム開発とは少し業務内容が違い、AIの概念を理解した上で、さらに高度な専門知識を学んでいく必要があります。
データサイエンティスト
データサイエンティストと呼ばれるアナリティクス系の職種は、AIが学習した膨大なデータを解析し、マーケティングや商品開発などに転用したり、プログラムの改善などを行っていきます。
このデータサイエンティストがいるからこそAIが蓄積したものが活きるため、AIの発展においては非常に重要な役割を果たしています。
クリエイティブな創作活動が必要なもの
クリエイティブな発想や創造性が求められる仕事も、人間ならではでしょう。
少し前にAIが広告コピーを書いたり、小説を書いたりとクリエイティブな分野に進出したというニュースが話題になりました。
もしかすると、文章においてはAIが今後台頭してくるかもしれません。
しかしAIがアイドルや歌手になったり、俳優になって舞台で活躍するのは難しいですし、それをみても人間が感動するとは考えにくいです。
またデザインをAIに任せることもできるでしょうが、学習したパターンが同一だと同じようなデザインばかりになってしまう可能性もあります。
人間の独自の感情から生み出されるものを作る職業は、今後もとってかわられることはないでしょう。
芸能人
芸能人は一人一人が個性を売り出して人気を獲得していくものです。
人間がそれぞれ違う感情を持っているのと同じように、能力や個性は異なります。
AIがどれだけ学習しても人気を集めるアイドルにはなり切れませんし、生身の人間になり替わることもできません。
モデルや俳優、アーティストなど、人間ならではの表現をするのは、今後も一生続いていく職業になります。
デザイナー
デザインの分野も、AIが進出しにくいといえます。デザインはアートではなく、あくまで顧客の要望を叶えるものです。
顧客が持っている微妙なニュアンスをカタチにするのは、やはり人間にしかできません。
グラフィックデザイナーやイラストレーター、アパレルデザイナー、インテリアデザイナーなど、デザインの仕事も多岐にわたります。
個人のセンスに左右されるデザイナーも、今後ずっと需要のある職業になる可能性が高いです。
その他例
- グラフィックデザイナー
- コピーライター
- スタイリスト
- 声楽家
- ソムリエ
- アロマセラピスト
- メイクアップアーティスト
人同士の関わりが必要な仕事
人と人とのコミュニケーションが必要な仕事も、AIが進出しづらい分野です。
機械には『気持ち』や『雰囲気』などは汲み取りにくく、やはり人間が介在しなければならない仕事もたくさんあります。
相手がどんな気持ちでいるか、能力を上げるのには何が必要かをきちんと読み取れるのは、同じ経験をしている人間同士でなければ実現しません。
教師
教師は、AIには出来ない仕事です。
勉強を教えるだけなら、ビデオ学習やタブレット学習などもあるので、可能かもしれません。
しかし教師という仕事は、勉強を教えるだけでなく、人間関係や道徳、生活していく上で大切な様々なことを生徒に教えます。
学習指導ではなく人間としての指導は人間にしかできない分野です。
勉強の傾向指導などは今後AIを導入する可能性もありますが、教師の職業は今後一生なくなることは考えづらいといえます。
塾講師
塾講師は、AIに出来る分野とそうではない分野があります。例えばPCを活用したビデオ学習やWebでの学習であれば、AIが指導することはできるでしょう。
しかし学生が「この設問の、何が分からないか分からない」と相談してきたとき、それぞれの学生に対して分かりやすく適切な指導方法を考えられるのは、人間ならではです。
また塾講師は親と話す機会もありますから、AIに普段の子どもの様子や今後の進路相談を任せることはできません。
営業
お客様に商品やサービスを提案する営業の仕事も、おそらくなくならないでしょう。
営業という仕事は、ただ顧客の課題や要望を伺い、商材を提案し、価格を案内し、契約書を差し出せばよいわけではありません。
顧客と人間関係を築き、仕事以外の世間話をし、日々足を運んで信頼関係を築く地道なコミュニケーションが、成果へとつながっていくこともあります。
AIには伝えられない熱意が人間にはありますから、時代は変わっても営業職は会社の中で重要なポジションになるのです。
保険外交員
保険外交員とは、保険商品をお客様に案内する職種。いわゆる保険の営業です。
「保険の営業って、最近はネット保険も増えているし、AIでもいいのでは?」と思われるかもしれませんが、ネット保険・通販型保険のシェアはわずか5%以下とも言われています。ほとんどの方は保険外交員や保険ショップで保険を契約しているのが実情です。
なぜ人間を介する必要があるのか。それは、保険という商品の難しさも関係しています。
保険は単純な商品ではなく、その人の健康状態や資産、将来への不安、希望する補償などを踏まえて、膨大な量の保険商品の中から適切なものを選んでいく必要があります。
これは少し保険を勉強した程度の方に出来ることではなく、保険の専門家である保険外交員と一緒に考えていくのがベストです。
保険は決して安い商材ではありません。
長期にわたって数十万円、数百万円を支払っていくこともある商品なので、信頼できる保険外交員にアドバイスをもらいながら契約していきたくなるのは人として当然でしょう。
その他例
- ツアーコンダクター
- スポーツインストラクター
- 産業カウンセラー
- レストラン支配人
- 評論家
機械が取れない責任が生じる
AIはあくまで学習した事実に基づいて皆さんに正解を与えているため、皆さんがとった行動結果に対しては責任を取ることができません。
責任はあくまで人間が取るものですから、重大な責任が生じる行為に関しては、人間がきちんと介在する必要があります。
医者
何よりも大切な『人命』を預かるのが、医者という仕事です。
医療分野へのAIの進出は目覚ましく、人間の目では見つけられないような小さな病変を発見したり、AIが手術を行ったりというニュースもよく目にします。
しかし、もし誤診や手術ミスがあったとき。場合によっては人命に関わることもあるかもしれません。そんなとき、たとえ診断や手術をしたのがAIだからといって、AIに責任を取らせることなど許されないでしょう。
人間に出来ない部分をAIが補うという使い方をしたとしても、人間の医者がいなくなるということはあり得ません。
万が一AIが行った施術で人が亡くなったとしても、仕方ないの一言では済ませられません。
介護職員・看護師
介護職員や看護師も、医師と同じように『責任』という観点からなくなることはないでしょう。
介護・看護の現場でもAIが活躍できる余地は多々あります。今後は人手不足などの問題を受けてロボットの導入なども進んでいくでしょう。
たとえそうなったとしても、医師と同じ理由で人間は必要です。現場で事故や異変が起こったとき、機械には責任は取れません。
また、介護や看護は単に診察や治療をして終わりではありません。要介護者や患者と触れ合う中で、身体的なケアだけでなく精神的なケアも行っています。ちょっとした雑談や気遣い、触れ合いなどが相手の心を温かくさせ、安心させることができるのです。
こうしたコミュニケーションが求められるからこそ、人間が必要な仕事です。
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弁護士
実は弁護士をはじめとした士業の中には、AIの台頭によってなくなっていく仕事もあると言われています。
たとえば税理士や行政書士、社労士などは、その仕事のほとんどをAIによって代用できると言われています。そうなれば廃業せざるを得ません。
しかし、実は弁護士においては業務のほぼ全てをAIで代行することができません。その理由は、コミュニケーションが重要な仕事だからです。
たとえば行政書士や税理士は、契約している顧客と日常的にコミュニケーションを取らずとも仕事を進められます。
しかし訴訟などを担当する弁護士はそうもいきません。
依頼者の声に何度も耳を傾け、証人を含む関係者に話を聞き、法廷で弁護を行い…と業務の随所でコミュニケーションが発生します。だからこそ、AIではなく人間が必要な仕事なのです。
その他例
- 理学療法士
- 心理学者
- 保育士
- 幼稚園教員
- 犬訓練士
- 医療ソーシャルワーカー
AIが普及してもなくならない仕事に就くためのポイント
AIは人間のできないことまで段々と活動領域を増やすだけではなく、これまで人間がかかわってきたことにまでかかわるようになってきました。
「万が一自分がいまついている職業が将来なくなってしまったらどうしよう」と不安に感じるのであれば、AIが普及してもなくならない仕事に就くための以下のポイントを把握しておきましょう。
AIができない分野の専門性を付ける
上述した通り、AIはデータに基づく分析や行動が得意です。
現在人間が手動で行っているものがどんどん自動化されていきますが、感情や人間の命がかかわってくる職業は、AIにはできない仕事です。
AIができない分野の医療や教育、クリエイティブな仕事を身に着ける勉強を始めて、専門性を身に着けていきましょう。
新しく勉強し始めてもかまいません。
実際に30代40代になってから看護師を目指す人もいるくらいですから、臆せずに飛び込んでいくことが大切です。
AIを開発する側に回る
AIは解決法を開発することはできますが、自分たちを新たに開発することは現状できません。
また自分たちにエラーが生じた場合には、修理ができませんから最終的には人の手に頼ることになります。
AIを開発する側になれば、AIが台頭した世界になっても十分に食っていけます。
若いうちになくならない仕事に転職を検討する
将来シニア層になってからAIに仕事を取られてしまっては、生活ができなくなってしまいますし、再就職もできなくなってしまいます。
今のうちからなくならない職業への転職を検討してみてください。
若いうちであれば未経験でも転職できる職業はありますし、採用される可能性も十分にあります。
今のうちから転職活動を検討して、万が一のことがあっても対応できるようにしておきましょう。
機械の出来ない仕事に就いて将来安泰に!
今回はAIについてをメインに取り上げましたが、人間の仕事を代行していくのはAIだけではありません。
AI、ロボット、システム…便利になる反面、人間側も『人間にしかできない仕事』で価値を見出していかなければ、仕事を失ってしまいます。
機械に出来ない仕事とは、『コミュニケーション』や『発想力』、『想像力』などを必要とする仕事。ご自身の今の仕事はどうでしょうか?
もし将来、自分の仕事がAIをはじめとした機械に取って変わられそうなのであれば、そうならないために何をすべきかを考えていかなければなりません。