社会人として働いていると、「やりがい搾取」という言葉を耳にする機会があると思います。
やりがい搾取とは2007年前後から広く認知され始めた言葉なのですが、「やりがい搾取ってどんな意味?」と疑問に感じている方は多いのではないでしょうか?
この記事ではやりがい搾取について詳しく解説します。
搾取されやすい業界や危険な徴候などもご紹介しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
やりがい搾取とは?
やりがい搾取とは、会社が支払うべき給与の代わりに「やりがい」を強く意識されることで、本来支払うべき給与の支払いを免れることを指します。
ただしやりがいを強く意識されることで、労働者自身で搾取されていることに気付かないことが多いです。
そしてやりがい搾取は「ブラック企業」と密接な関係があるとされています。
やりがい搾取という言葉は、東京大学教授の「本田由紀」により造られた言葉で、2007年前後に本田氏が出版した本で使われたことで、広く認知されるようになりました。
本来仕事は労働力の対価としてお金を受け取るものですが、本質を見誤って「仕事=やる気を見せるもの」とすり替わっている状態が多く該当します。
昭和的な働き方の考え方に基づいているケースが多く、根性論とともに現場で用いられることが多いです。
やりがい搾取が与える3つの悪影響
やりがい搾取は一般的にマイナスなイメージを与える言葉なのですが、具体的に何が悪いのか理解できていない方が多いと思います。
やりがい搾取が良くない理由は大きく2つあります。
以下で紹介していきます。
給与の未払い
1つ目が「給与の未払い」です。やりがい搾取をしている企業の全てが給与を未払いしているわけではありませんが、少なからず低い給与で働いていると思います。
もし本来受け取るはずの給与が未払いになっていると、生活が苦しくなったり常に何かを我慢しなければならない状態になります。
本来受け取るはずの給与が支払われていないことは、立派な犯罪です。
また給与の未払いとまでも行かず、給与が平均よりも大きく下回っている状態もやりがい搾取ではよく行われます。
「働いてやりがいを感じているんだからお金が少なくても幸せだよね?」と少ない給与でも満足させて来ようとするのです。
企業は労働の対価として皆さんに給与を支払っているのですから、パフォーマンスに対してあまりにも時間当たりの給与が低い場合は要注意です。
心身ともに不健康になる
2つ目の理由が「心身ともに不健康になる」ということです。
やりがい搾取している企業では、労働時間や拘束時間が長く、休養や睡眠が十分に取れないことがあると思います。
そのような状況では、心身ともに健康な状態では居られないでしょう。
場合によっては、一生背負うことになるけがや病気になることも考えられます。
また給与が少ないことで常に生活に制限がかかってしまい、仕事をするうえでのモチベーションも維持できなくなってしまいます。
実際に厚生労働省が令和2年に実施した、労働安全衛生調査によれば仕事に対して感じるストレスのうち、仕事に関連する項目が多くなっています。
(参考:厚生労働省令和2年労働安全衛生調査)
労働環境が悪くなるにつれて、段々とストレス値が高くなっていき、精神面に影響を及ぼすことが増えていきます。
我慢し続けると知らないうちに心の病気になってしまうこともあります。
やりがい搾取されやすい業界
やりがい搾取にはされやすい業界とされにくい業界があります。
この記事ではやりがい搾取されやすい業界を4つご紹介します。
ただし「されやすい業界」になるので、全ての企業がやりがい搾取しているわけでないので、注意してください。
アパレル業界
アパレル業界は、やりがい搾取されやすいです。
アパレル業界は低賃金で長時間労働になるケースが多く、接客中は基本的に立っています。
さらに販売のノルマが決められている企業もあり、自社の製品を購入しなくてはいけないケースもあります。
アパレル業界は「夢」を持った人が入社しやすい傾向があるため、やりがい搾取されていても気付かないことが多いです。
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サービス・接客業界
サービス・接客業界は、やりがい搾取されやすいです。
サービス・接客業界はアルバイトを雇用していることが多いのですが、休日や深夜などは正社員でシフトを補うことがほとんどです。
また飲食店などは朝方まで営業することもあるため、労働時間は長く、肉体的な辛さもあると思います。
しかし低賃金なことが多く、やりがい搾取されやすい業界になります。
アニメ業界
アニメ業界は、やりがい搾取されやすいです。
アニメ業界は「夢」を追い求める若者が各制作会社などへ入社するため、簡単にやりがいを意識されることができます。
貰える給与は低いにも関わらず、納期に追われることが多く深夜までの残業になることが多いです。
「アニメに携われる仕事ができているのだから文句は言えない」と考えている人が多く、やりがい搾取されやすい業界です。
介護・看護業界
介護・看護業界は、やりがい搾取されやすいです。
誰かのためになる仕事なため、本当にやりがいを感じている方は多いと思います。
しかし労働に見合った給与が支払われていないのが現状です。
また介護・看護業界は人手不足が大きな問題になっているため、1人に対する仕事量は多く残業する日々が続きます。
直接的にやりがいを感じられる仕事になるため、搾取されやすい業界になります。
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やりがい搾取されそうな危険な徴候
入社していきなり、やりがい搾取されることは考えにくいです。
徐々に搾取され始めるため、やりがい搾取されそうな危険な徴候を把握しておくことが大切になります。
危険な徴候を2つご紹介します。
みなし残業を定めている
1つ目が「みなし残業を定めている」ということです。
みなし残業とは「固定残業代」と言われることもあり、残業代があらかじめ固定給に含まれている労働契約のことを指します。
このみなし残業を定めている企業は、やりがい搾取する場合が多いです。
みなし残業を定めていることで、本来支払うべき給与の支払いを免れやすくなります。
給与が上がらない
2つ目が「給与が上がらない」ということです。
1つの企業に長く勤めているにも関わらず給与が上がらない場合は、やりがい搾取される可能性が高いです。
一般的には勤続年数が増えれば給与も上がるため、一向に上がらないということは危険な徴候だと考えられます。
企業の給与形態にもよりますが、給与の上がらない企業は危険です。
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夢や目標をちらつかせられる
仕事の目標を設定するときに夢や目標をちらつかせられる場合も注意が必要です。
将来の目標や成功している人の事例を紹介されて、「やりがい」をアピールされるのです。
実際に成功している人の情報を聞いてしまうと、「自分もそうなれるのではないか」という気持ちが働き、洗脳されていきます。
もちろん仕事をするにあたって目標は重要ですが、あまりにも抽象的な夢をちらつかせられる場合は、社員の判断力を奪おうとしている可能性もあります。
上司や先輩の美談を聞いてモチベーションを上げることも重要ですが、信用しきってしまって自分を見誤ることのないようにしましょう。
人件費削減が頻繁に行われる
職場で人件費削減と称した改革が頻繁に行われる場合も、注意が必要です。
会社では常にコストを削減してベストパフォーマンスを取れるようにするのが一番の目標です。
しかし実際に働いている社員の意見も取り入れずに、頻繁に人件費削減が実施される場合、やりがい搾取につながることもあります。
労働者の給与を削減して、人件費を減らしていくと、段々と労力に見合わない給与になっていきます。
しかし企業側としては、人件費を削減することを正直に伝えにくいですから、美談などで装飾して社員を納得させようとしてくるのです。
段々と給料と労働力が見合わなくなっていき、やりがいだけで仕事をするように求められていくことにもなりかねません。
やりがい搾取されやすい人の特徴
やりがい搾取されやすい業界があったように、やりがい搾取されやすい人もいます。
搾取されやすい人がダメということではないのですが、特にやりがい搾取に対する意識を強める必要があります。
やりがい搾取されやすい人の特徴は下記の通りです。
- 社会経験の浅い若者
- ブランクを経て再就職した女性
- 未経験の職種にチャレンジした人
- 自己犠牲精神が強い人
- 仕事に対して真面目な人
- 将来的な目標が明確になっていない人
- 夢を追いかけている人
上記の特徴の中でも「若者」はターゲットにされることが多いです。
その理由は社会経験が浅いため、やりがい搾取されていることにも気付きにくいからです。
学生時代はアルバイトである程度労働に慣れているとはいえ、まだ責任のある仕事を任せてもらえている段階にあるとはいえません。
社会に出ると段々と責任のある仕事を任せられるようになっていき、仕事とは何たるかを学んでいきます。
社会人になりたての若者は、自分が社会に出て働く上での基盤がまだ揺らいでいる状況です。
就職した会社の風潮に合わせて成長していくので、「まぁ他の会社もこうだろう」と自分で納得して無理やりにでも会社の風土に合わせていこうとするのです。
会社側としても、自社の風潮に合わせやすい人材を求めていますから、やりがいを重視して運営している企業は若手を積極的に採用して自社の色に染め上げようとしてくるのです。
やりがい搾取の対処法
やりがい搾取についてお伝えしましたが、「やりがい搾取されているかも…」と感じられた方はいると思います。
また今後、やりがい搾取される可能性は誰にでもあります。
そこでやりがい搾取されていることに気付いたときの対処法をご紹介します。
自分の健康を守る
やりがい搾取されていることに気付いたら、まずは自分の健康を守ってください。
そのまま放置してしまうと、一生背負うことになるけがや病気になることがあります。
自分に対する自信がない方は「働けるだけマシ」と考えるかもしれませんが、労働力を安売りする必要はないです。
しっかりと働いているのであれば、他の人と同じように給与を支払われる権利があることを自覚しましょう。
社員の健康を維持することも会社側には求められるので、社員の健康を二の次に考えている企業には早めに見切りをつけることをおすすめします。
専門機関に相談する
やりがい搾取されていることに気付くと、専門機関に相談してください。
労働に見合った給与が支払われていない場合は、「労働基準監督署」に相談すると対応してくれます。
「専門機関に相談するのは…」と思うかもしれませんが、相談することで客観的かつ法的にアドバイスをしてくれます。
またやりがい搾取されているかも判断してくれます。
アルバイトのケースですが、給与や残業代が支払われないことを労基に相談したところ、実際に行政が動いてくれて支払われることになったこともあります。
行政は住民が自発的に動かないと対処できませんから、積極的に自分から相談する姿勢が重要です。
ただし相談の場合は匿名で対応してくれますが、労基に実際に動いてもらうにはきちんと実名で申告する必要があります。
会社側に申告したことがバレてしまいますので、今後もずっと同じ職場で働きたいと考えている人にとっては代償の大きいアクションでもあります。
会社を辞めて転職する
専門機関に相談してやりがい搾取されていることが確定すると、会社を辞めて転職することをおすすめします。
そのまま会社に残り労働条件や給与を交渉することは可能なのですが、すぐに改善されることは考えにくいです。
そのため会社を辞めて転職することが最適な手段です。
そして転職することでキャリアアップすることも可能ですし、心機一転して仕事に対するモチベーションも変わると思います。
ただしやりがい搾取している企業へ転職してしまうことには、十分注意してください。
転職を成功させるポイント
やりがい搾取されている場合は、転職することをおすすめしました。
しかし希望通りに転職することは簡単なことではありません。
そこで転職を成功させるポイントを3つご紹介します。
時間をかけて転職する
1つ目のポイントが「時間をかけて転職する」ということです。
転職すると決めて転職活動をスタートされると、「1日でも早く採用してもらいたい」という気持ちが出てきます。
その気持ちは大切なのですが、焦る気持ちは良くありません。
もし焦って転職先を決めてしまうと、やりがい搾取している企業に転職してしまう可能性が高まります。
そのため焦る気持ちを抑えて、転職活動を進めるようにしてください。
業界に特化した資格を取得する
2つ目のポイントが「業界に特化した資格を取得する」ということです。
転職を成功させるためには面接でアピールすることが大切なのですが、経験や実績を伝えても魅力的なアピールにならないことがあります。
しかし取得している資格をアピールすると、今の知識とスキルを証明できて、どんな人事からでも平等な評価を受けられます。
そして業界に特化している資格の方が高い評価を受けられるため、転職したい業界を決めてから資格を取得してください。
転職エージェントを活用する
3つ目のポイントが「転職エージェントを活用する」ということです。
転職エージェントとは、転職に関することを幅広くサポートしてくれるサービスです。
求人紹介から面接対策、キャリアに関する相談にも乗ってくれます。
また転職サイトには公開されていない「非公開求人」も紹介してもらえるため、待遇や条件の良い求人に転職できる可能性が高まります。
そして転職をサポートしてくれるキャリアアドバイザーに「やりがい搾取されていた」ということを伝えると、搾取されにくい業界の求人を中心に紹介してくれます。
転職エージェントは併用しても問題ないため、気になるものがあれば登録してみてください。
業界によってはやりがい搾取が横行している
この記事ではやりがい搾取についてお伝えしましたが、いかがだったでしょうか?
やりがい搾取とは悪質な企業が用いる手法で、場合によっては法律違反になります。
しかしやりがい搾取されていることに気付かない人が多いため、上記でお伝えした業界に勤めている方は一度確認してみてください。
そしてやりがい搾取されていることに気付いたときは、会社を辞めて転職することをおすすめします。